病気の治療
medical treatment
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梅毒とは1500年から1900年初め頃まで世界中で大流行し、死の病と恐れられた性感染症の1種です。トロポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)という細菌により感染します。胎児が胎盤を通して感染する先天性のものと、感染部位と粘膜や皮膚の直接接触などで感染する後天性のものとあります。1928年にペニシリンが発見されてからは治療できる病気となりましたが、2010年以降再び増加に転じており、注意が必要です。
感染した後、経過した期間によって異なる症状が出現します。第Ⅰ期(感染後3週間)には感染部位のしこりや、リンパ節の腫脹がみられます。症状に乏しいため、治療をしなくても症状は自然に軽快することが多いです。第Ⅱ期(感染後数カ月)まで治療をしないと、病原体が血液により全身に広がり、バラ疹とよばれる赤い発疹が手掌、足底、体全身にみられることがあります。
治療をしなくても、この発疹は数週間以内に消失することがあります。晩期顕性梅毒(感染後数年)にまで及ぶと、ゴム腫と呼ばれる腫瘤が皮膚や筋肉に発生し、また心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じることもあり、死に至ることもあります。現在は抗生剤内服による早期治療法が確立されているため、晩期までに及ぶことはほとんどありません。感染を予防するためには、妊娠初期のスクリーニングやコンドームの使用、パートナーの治療などが重要となっています。
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型、2型を病原体とする性感染症の1種です。初感染後に感覚神経節に潜伏感染し、免疫低下などによってふたたび活性化し再発を繰り返します。初感染の症状としては外陰部の水泡や潰瘍性病変などによる、外陰部の激しい疼痛や時に発熱を認めます。診断は抗原診断法によるHSV抗原の証明によって行います(患部を擦過細し検体を採取します)。バラシクロビルやアシクロビルの内服によって治療を行いますが、症状が強い際は入院加療が必要となることもあります。妊娠によって再発が誘発されることも多く、産道感染により新生児ヘルペスを引き起こすため、既往歴のある妊婦さんは注意が必要です。
コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)を病原体とする性感染症の1つです。HPVは皮膚や粘膜の上皮に感染するウイルスであり、子宮頸がんの原因となるハイリスクのものも含め100種類以上のタイプが発見されています。コンジローマはそのうち、6・11型のローリスクのものにより発症します。性交渉などによる接触感染であり、3週から8カ月程度で発症します。
症状としては、外陰部、会陰部、肛門周囲にカリフラワー状の疣贅(いぼ)を認め、掻痒感を伴うこともあります。基本的には肉眼診断が可能であり、組織診により確定診断を行います。子宮頸がんのリスクを伴うこともあるので、子宮頸がん検査も同時に行うことが望ましいです。なお子宮頸がんの発症に関与するHPVのタイプはハイリスク(発がん性)HPVといわれ、尖圭コンジローマに関与するものとは異なります。
治療としては、イミキモドクリームの外用や、冷凍療法、電気焼却法などが挙げられます。なお、新生児に産道感染すると口頭乳頭腫を発症するおそれがあるため、分娩方法の検討には注意が必要となります。