徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

消化器内科の病気:痔瘻

肛門内側の腸粘膜と皮膚が貫通した状態


図 痔瘻の構造
「クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第2版(難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班))から引用」
お尻の出口を肛門といい、皮膚と腸粘膜の境界があります。その周囲には排便を調節するための筋肉(括約筋)があり通常は締まっています。稀に肛門の腸粘膜の境界に傷ができて(一次孔)周囲に炎症が生じ(肛門周囲膿瘍)、たまった膿が肛門皮膚側で切れて出口(二次孔)ができて排出されます(排膿)。このように、肛門の内側の腸粘膜と皮膚に通路ができた状態を痔瘻と呼びます。クローン病など炎症性腸疾患では、出口があちこちにできる多発痔瘻になる場合もあります。
一方、肛門の周囲の血管が集合して瘤(こぶ)になると痔核、またはイボ痔ともよばれます。また血管ではなく肛門の皮膚だけが飛び出たものを肛門皮垂(こうもんひすい)と呼びます。

クローン病の合併症だと厄介

痔瘻は肛門周囲膿瘍からできることが一般的です。1歳までの乳幼児にできることもありますが、小児期にはあまり起きません。男性の場合には生年期から成人にかけて起き、女性は大人になってから起きる場合があります。
一般的な痔瘻は適切な治療をすることで予後がよいことが多いのですが、クローン病に合併する痔瘻は若年者から起き難治性のことがあります。特に20歳以下の女性ではクローン病の可能性が高いといわれています。その他、稀ですが結核や梅毒などの感染症、HIVや強皮症などで起こることがあります。

二次孔があれば視診だけで診断

肛門周囲膿瘍の症状は、一般的に肛門周囲における突然の痛みを伴う腫脹と発赤です。痔瘻になると持続的な膿の排出がみられ、時に出血も伴います。
診断のためにまず、肛門の診察(指診と肛門指診)で発赤と腫大を確認します。痔瘻の二次孔があると診るだけで診断できます。一般的にCT検査やMRI検査で炎症や膿の広がりを確認します。施設によっては経肛門的超音波検査や肛門内圧測定を行うこともあります。

痔瘻の程度と広がりに応じた治療法を選択

肛門周囲膿瘍の治療の原則は切開排膿とドレナージです。広い範囲に化膿性炎症である蜂窩織炎を起こしている場合や、ドレナージでよくならない場合には抗生剤の投与を行う場合もあります。
痔瘻の場合には程度と広がりによって、さまざまな治療を選択します。基本的には長期にわたると肛門周囲膿瘍を繰り返してしまうため膿瘍の再燃防止のため外科的治療が行われます。ただし、クローン病などの炎症性腸疾患によって生じた痔瘻は、外科的な根治手術により傷口が治らなくなる場合もありますので、腸管の精査や全身的な治療が優先されます。炎症性腸疾患に伴う痔瘻や肛門周囲膿瘍の場合には、持続的にドレナージするためにシートン法というヒモを通して留置する治療を行います。

肛門括約筋に及んだ痔瘻は便失禁に注意

痔瘻の程度や広がりによって治療の期間や再発率は変わりますが、適切な外科的な治療を行うと再発率は10%前後といわれています。痔瘻の発症した部位が肛門括約筋に広がる場合には便失禁が起こりやすくなり注意が必要です。

規則正しい排便習慣と清潔さを保つ

排便習慣と肛門部の清潔が大切です。排便を我慢したり便秘になったり力んだりすることを避け、規則正しい排便習慣をつけることが予防につながります。また肛門周囲に残便があることで炎症が起きやすくなるため、流水で洗うなどこまめな清潔に心がけましょう。

参考資料
肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014年度版 日本大腸肛門病学会編 南江堂 2014年
実地医家に役立つ肛門疾患の知識 宇都宮錠二ら編集 永井書店 1999年

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