徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)08月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1504 1面

第2回Tokushukai Robotic Seminar
多診療科ロボット支援手術の知見を結集
「つなぐ技術、ひらく未来」テーマに開催

一般社団法人徳洲会(社徳)は7月12日から2日間、東京国際フォーラムで第2回Tokushukai Robotic Seminar(TROS)を開催した。第1回に続き武蔵野徳洲会病院(東京都)の桶川隆嗣院長が会長を務めた。同セミナーはロボット支援手術に特化した学術集会で、大学病院をはじめ第一線で活躍する徳洲会グループ内外のエキスパートらが特別講演や演題発表を行った。「つなぐ技術、ひらく未来」をテーマに掲げ、泌尿器科、心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科、婦人科の各領域の演題でプログラムを構成し、領域横断的な企画も実施。会場とWEB(ライブ配信)のハイブリッド開催で、前回の361人を大幅に上回る延べ658人の参加者が、知見を共有するなど研鑽を積んだ。

会場&ライブ配信で延べ658人が参加

「世界の最先端を目指してほしい」と東上理事長

「来年もさらに充実した会を」と大橋・副理事長

会長講演を行う桶川院長

企画委員長や座長を務めた乘富院長

ロボット支援下腎移植をテーマに特別講演を行う田邉センター長

演者の発表を受けて活発な討論を実施したシンポジウム日本では7月に発売開始された最新鋭のダヴィンチ5

医療法人徳洲会(医徳)の大橋壯樹・副理事長(名古屋徳洲会総合病院総長)が実行委員長、乘富智明・常務理事(福岡徳洲会病院院長)が企画委員長を務めた。

また、泌尿器科部門は桶川院長、心臓血管外科部門は中村喜次・千葉西総合病院副院長兼心臓血管外科主任部長、消化器外科部門は内間恭武・中部徳洲会病院(沖縄県)消化器外科部長、呼吸器外科部門は深井隆太・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)呼吸器外科主任部長、婦人科部門は松浦拓人・東京西徳洲会病院婦人科部長の5人が企画委員を務め、プログラムを立案した。

第2回セミナーでは会長講演、特別講演1~5、シンポジウム1~6、ディベートセッション、ポスターセッション(17演題)を企画し、会場内に手術支援ロボット(ダヴィンチ、hinotori、サロア)の展示も行った。

初日の冒頭、東上震一理事長が主催者挨拶で「昨年の第1回セミナーは、国内で先行してロボット支援手術が行われてきた泌尿器科を中心に開催しました。第2回では、広くロボット手術を行う各診療科の先生方にお集まりいただき、相互に得るところのあるディスカッションができればうれしいです。ぜひ、皆さんで力を合わせて、ロボット手術という新しい方法を用い、世界の最先端を目指してほしいと思います」と呼びかけた。

続いて桶川院長が登壇し、「医療法人徳洲会におけるロボット手術の現状と今後」と題して会長講演。手術支援ロボットはダヴィンチを皮切りに多様化が進んでおり、現在ではhinotori、サロア、ヒューゴなど複数の機種が登場。保険適用も年々拡大し、手術件数は増加傾向だ。

患者さんにできるだけ負担が少なく、精度の高い医療を提供するため、徳洲会グループは手術支援ロボットをはじめ先進的な医療技術・機器を積極的に導入してきた。手術支援ロボットの導入施設は7月末時点で27病院・計34台に上り、ロボット手術件数は2024年実績で年間2,507件に達する。

手術支援ロボットを巡る国内の変遷や徳洲会のロボット手術の実績など紹介したうえで、桶川院長は「ロボット手術は低侵襲で視認性・操作性も良く、教育的にも有用である一方、過信が生む弊害など影の部分についても考慮に入れる必要があります」と注意喚起。

安全性と有効性の両立のため、「耐術能評価に基づく適切な患者選択」、「標準化された評価体制整備」、「継続的な術者のトレーニングによる技術向上」、「患者中心のアプローチ」の重要性を強調した。

徳洲会の学術研究・論文発表の実績にも言及し、ロボット手術をテーマにした医学ジャーナル『JTROS(Journal of Tokushukai Robotic Surgery)』の発刊を構想。最後に「皆さんの臨床現場のお役に立てるセミナーになることを願っています」と締めくくった。

いきなりロボット手術 若手の“直ロボ”論点に

特別講演1は東京女子医科大学呼吸器外科学講座の神崎正人教授が「ロボット手術による呼吸器外科医の育成」をテーマに発表した。保険適用の呼吸器外科ロボット手術や術者要件、同大学の手術実績などを紹介したうえで、ロボット肺切除やリンパ節郭清の手術動画を供覧。

また、肺区域切除術に対して3D画像解析システムを用いることで、肺の3D画像を容易に作成することができ、術前シミュレーションや術中ナビゲーションとして有用。さらに、若手医師・学生の教育にも活用していることなどを紹介した。非接触式タッチパネルや複合現実(Mixed Reality)の活用状況、コンソール医師(手術支援ロボットを操作する執刀医)育成の取り組みなども紹介した。

特別講演2は、弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座の畠山真吾教授が「泌尿器科ロボット手術の光と闇」をテーマに講演。闇のひとつとして挙げたのが、いわゆる“直ロボ”だ。これは、若手医師が従来のように開腹手術→腹腔鏡手術→ロボット手術という修練のプロセスをたどるのではなく、いきなりロボット手術からスタートし、その後に開腹手術・腹腔鏡手術を学ぶことを指す。

泌尿器科で多くのロボット手術が保険収載され、スタンダードとなった今日だからこそ起こり得た現象だ。直感的な操作性で早く効率良く習熟できることや、即時フィードバックが可能で教育しやすいなど、直ロボにもメリットがあるが、触覚による臓器の感覚を習得しづらい、汎用外科力の低下による安全性の懸念などデメリットがあることも指摘した。

闇の論点として合併症やコストなども挙げて説明。光としてはビッグデータの誕生、低侵襲治療、遠隔医療への応用などを挙げた。

国内初となるロボット用いた 腎移植の特定臨床研究を発表

特別講演3の演者は東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの原田香奈子教授で、テーマは「未来の手術支援ロボットにむけた医工連携」。手術支援ロボットの隆盛は、まさに医工連携の賜物だ。

AI×ロボットの影響や、東京大学が複数の大学・企業・病院との共同研究により開発した微細手術に適用可能な手術支援ロボット「スマートアーム」などを紹介したうえで、医工連携を加速させるには「工のわかる医」、「医のわかる工」の育成が重要だと強調した。

特別講演4は、神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学分野の山口雷藏・客員教授が登壇し、「ロボット支援手術の将来(通信やAIと共に)」をテーマに発表。山口・客員教授は泌尿器科のロボット手術のエキスパートで、商用5Gネットワークを活用した遠隔ロボット手術の実用化に向けた技術開発に注力。

遠隔ロボット手術を成立させるための技術的な側面など概要を紹介し、今後を展望するうえで重要な技術として、IOWN(次世代の通信インフラ)、NTN(非地上系ネットワーク)、Local 5G(企業や自治体などが独自に構築・運用する5Gネットワーク)を挙げた。

特別講演5は湘南鎌倉病院腎移植・ロボット手術センターの田邉一成センター長が「ロボット支援下同種生体腎移植術の現状」をテーマに発表。国内ではロボット支援下の多くの泌尿器科手術が保険収載されてきたが、今も認められていないのがドナー(臓器提供者)腎採取術と腎移植術だ。

ロボット支援下の腎移植術が行われている海外の論文を参照し、ロボット支援腎移植術はSSI(手術部位感染)の低減や手術時間短縮、入院期間短縮などにつながり、とくに肥満の患者さんに対して有用な手術法であるという報告例などを紹介。

また田邉センター長は、湘南鎌倉病院で特定臨床研究としてロボット支援下腎移植術を行う計画を明かした(『徳洲新聞』1499号で既報)。同研究では、田邉センター長が研究責任者を務め、日本の医療環境に適応したロボット支援下腎移植の安全性と有効性を検討し、将来的な標準治療への位置付けと保険適用を目指す。8月中にも臨床研究開始予定だ。

臨床・教育や領域横断企画と 幅広いテーマでシンポジウム

国産初の手術支援ロボットhinotori術者に“力覚”をフィードバックするのが特徴のサロア

診療科別に企画したシンポジウムでは、それぞれ4~6人の各分野のロボット手術のエキスパートが登壇。手術動画など供覧しながら、各施設の取り組みや実績、臨床的な知見など多岐にわたる内容で発表を行った。

シンポジウム1は心臓血管外科で「ロボット心臓手術の現状、変化、進歩」がテーマ。コンソール術者が異動した経験や、ロボットMVP(僧帽弁形成術)、TEER(経皮的僧帽弁接合不全修復術)とロボット手術、内視鏡手術からロボットへの移行、ロボット支援下僧帽弁置換術について演題発表を行った。

シンポジウム2は婦人科部門が担当したセッションで、「ロボット骨盤リンパ節郭清~診療科間・機種間の違い~」をテーマに、婦人科や泌尿器科、消化器外科といったそれぞれの立場から、ロボットを用いた骨盤内のリンパ節郭清について術式や手技、特徴などを紹介。

シンポジウム3は消化器外科で「消化器外科領域(大腸癌)のロボット手術の新機種を含めた現況と展望」をテーマに実施。次世代のロボット外科医育成・輩出の取り組みや、ダヴィンチSPを用いた単孔式大腸がん手術、ダヴィンチSP/Xiの使用経験、hinotoriとヒューゴを使いこなすポイント、大腸がんに対するhinotori導入と進行直腸がん・肥満症例に対する工夫、サロアの使用経験など、多様な機種のロボットが俎上に上った。

シンポジウム4と同6は呼吸器外科のセッションで、前縦隔腫瘍と肺がんに分けて企画した。シンポジウム4は「前縦隔腫瘍に対するロボット支援下手術~アプローチと手技~」がテーマ。安全性向上のためのポート配置、剣状突起下アプローチ、手術に用いるデバイス(医療器具)の選択など、より良い手術を行うため知見の共有を図った。シンポジウム6は「ロボット支援下肺癌手術~肺門処理の手順とリンパ節郭清~」がテーマだった。

領域横断企画のシンポジウム5は「医療の効率化と医療安全」をテーマに実施。「医師の働き方改革」や医療DX(デジタル変革)、ロボット手術と医療訴訟、特定行為研修と幅広い内容について各演者が発表した。

ディベートセッションでは「泌尿器科手術における新規手術支援ロボットの活用」をテーマに、ダヴィンチやhinotori、サロアといったさまざまな手術支援ロボットの特徴や手術手技の紹介などを行った。

すべてのプログラムを終え、閉会挨拶で大橋・副理事長は「会場参加とライブ配信を合わせて600人超の方々にご参加いただきました」と述べ、参加者や演者・座長に謝意を表明。運営スタッフにもねぎらいの言葉をかけた。「来年もさらに充実した会を開けたらと考えています」と期待を寄せて閉幕した。

終了後、桶川院長は「外部から多くの演者・参加者を募り、加えて今回は多診療科・領域横断的なプログラムを盛り込むことができました。多様な意見を参考に、ぜひロボット手術の質の向上につなげていただければと考えています」と2日間のセミナーを振り返った。

PAGE TOP

PAGE TOP