徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)08月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1504 4面

札幌東病院
「バスキュラーナース」育成
院内認定資格を創設し看護の質向上へ

札幌東徳洲会病院は院内認定資格「バスキュラーナース養成コース」を創設した。血管確保が困難な患者さんに対し、エコー下で静脈穿刺する手技を修得するのが目的。桝田佳枝看護師(診療看護師=NP)が中心となりコースを考案。初回は院内から4人が受講し、全4回の研修で、講義や模擬演習、さらに実習を行ったうえで、試験を経て全員が合格した。合格者には、修了書とオリジナルバッジが贈呈された。

講義では科学的根拠に基づいた学習内容を提供

院内認定資格「バスキュラーナース養成コース」は、血管確保が困難な患者さんに対し、エコー下で確実かつ安全に静脈穿刺を行うための技術を修得することを目的とした院内研修だ。第1期は4人の看護師が受講し、全員が認定試験に合格した。

コンニャクとストローを活用して模擬演習

静脈穿刺は、看護業務のなかでも日常的かつ重要な手技のひとつ。看護師の9割以上が輸液や採血などの目的で行っているが、その成功率は平均して70%以下とされ、3割以上の患者さんが複数回の穿刺を受けている現状がある。とくに高齢の患者さんは血管の脆弱化や狭小化が著しく、初回穿刺の成功率が26~37%にとどまるとの報告もある。

受講生同士が被験者となり静脈穿刺の最終試験

桝田看護師はこうした現状に対し、「何度も針を刺されることは、患者さんにとって身体的にも精神的にも大きな負担。治療意欲の低下や治療拒否にもつながりかねない」と問題提起、同コースを立ち上げるに至った。

第1期生の(前列左から)伊藤希看護師、那須翼看護師、瀬崎陽介・看護主任、金子峻祐看護師、後列右が桝田看護師

現在の静脈穿刺は、ほとんどが皮膚の表面観察や触診、つまり経験と勘に頼って行われる。しかし、こうした感覚的なアプローチによって失敗が重なることで、患者さんのみならず看護師自身にも大きなストレスがかかる。

一方、エコーを用いることで、血管の位置・深さ・径を可視化し、穿刺針の進入をモニタリングしながら操作できるため、成功率が大きく向上する。同院では、2016年からNPによるエコー下PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)留置を開始、現在では年間500件以上の依頼が寄せられるまでになっている。

全4回のカリキュラムで構成 実習では10症例以上を経験

同コースは、2カ月にわたり全4回のカリキュラムで構成。講義では、解剖生理の基礎からスタートし、穿刺の痛みが血管の攣縮を引き起こす仕組みなど、科学的根拠に基づいた学習内容を提供。桝田看護師は「静脈穿刺は当たり前に行っていますが、なぜ駆血をするのか、なぜ痛みで穿刺が難しくなるのか、そういった『なぜ』に根拠をもって答えられる看護師が増えてほしいと考えています」と強調する。

第3回の模擬演習では、コンニャクにストローで穴を開けて模擬血管とし、エコー下で針を挿入する練習を実施。エコーを片手に操作しながら、もう一方の手で針を刺すという従来と異なる動作に苦戦する受講生の姿があった。

最終回では実習を行い、各受講生が10症例以上の穿刺を経験。実習期間は当初2週間の予定だったが、受講生の勤務状況に配慮し1カ月間に延長した。桝田看護師は「回数をこなしてから修了したほうが、確実に技術が身に付きます」と、質を優先した判断であったことを説明する。

初開催となる第1期には、院内から12人の応募があったが、機材や指導体制の都合から最終的に4人を選抜。循環器内科や救急外来など、静脈確保の需要が高い部署からの推薦と面接により選んだ。受講生全員が筆記試験で85点以上を獲得、実技試験でも全員が一発で穿刺成功という高水準の成果を収めた。

受講生からは「知識の根拠が明確になりました」、「穿刺に自信がもてるようになりました」といった声が寄せられた。桝田看護師も「本人たちが自立していってくれているのを感じます。基礎からの教育は応用力につながります」と、その成長を喜んでいる。

今後に向けた課題として、「スケジュール調整」がある。現場の多忙な勤務体制のなかで、受講時間を確保することは容易ではない。そのため各病棟の看護師長との連携を強化し、業務のなかに組み込む形で実施していく必要がある。

また、指導者の育成も課題だ。桝田看護師は「今後は受講生のなかから次世代の指導者を育てていきたいです」と意欲的。さらに、研修を広く展開するにはエコー機器の増台が不可欠であり、病院側との調整も視野に入れている。

さらに、「将来的には、各病棟に少なくとも1人はバスキュラーナースがいる状態にしたいです」と、病院全体への展開を想定。また、今回の取り組みが他院への波及効果をもたらし、全国の看護師の技術向上にもつながることにも期待を寄せる。

同コースは、皮膚・排泄ケア認定看護師が行う「おむつマイスター」制度からヒントを得て生まれた。桝田看護師は「現場から発信される研修があっていい。むしろ、もっと増えていくべきだと考えます」と語気を強め、「“もうちょっとこうなったらいいな”という思いをもつ看護師たちの声を、形にする場をつくっていけたらいいと思います」と抱負を語る。

今後は年2回程度の開催を目標にしており、第2期を10月頃に実施予定。桝田看護師は教育担当として、特定行為の研修と並行しながら、バスキュラーナースの育成にも注力していく構えだ。

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