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徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)9月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1306 四面

榛原総合病院 大動脈ステントグラフト内挿術をスタート
胸部と腹部の指導医資格もつ植木医長が入職

榛原総合病院(静岡県)は胸部と腹部のステントグラフト内挿術を開始した。血管内にステントグラフト(金属製の骨格がついた人工血管)を留置する治療で、大動脈瘤と大動脈解離が対象。胸部ステントグラフト、腹部ステントグラフト両方の指導医資格をもつ植木力・心臓病センター医長が4月に着任したことによるもので、これまで22例を実施した。

「安心して治療を受けていただけるよう努めます」と植木医長

大動脈は最も太い血管で、心臓から末梢(まっしょう)血管に血液を送る重要な役割を担っている。心臓に直結する部分から、左右の下肢に分岐する部分(臍部付近)までを指し、横隔膜より上部を胸部大動脈、下部を腹部大動脈と言う。

大動脈瘤は、この大動脈の一部がこぶ(瘤)のようにふくらむ病気。瘤の形状や形態、位置によってタイプが分かれるが、いずれも血管の弾力が失われる「動脈硬化」が原因と考えられている。瘤が破裂すると大出血を起こし、突然死するケースが少なくない。

ステントグラフト治療を行う植木医長(右)

一方、大動脈解離は、大動脈が裂ける病気。血管は内膜、中膜、外膜と3層構造になっており、血液に最も近い内膜に亀裂が入ると血液が内膜の外側にも流れ、強い血流のため中膜を剝離(はくり)していく。さらに進行して外膜も破れると「大動脈破裂」となり、大出血で死に至る可能性もある。大動脈解離は起こる場所によってA型とB型に分けられ、A型は心臓に近い場所、B型はそれ以外となる。A型は48時間以内に死亡するリスクが高く、緊急治療を要するのに対し、B型は合併症などで生命を脅かすケースがあるものの、比較的危険性が低いことから薬物療法など保存療法を用いる。

このうち大動脈瘤は、ほとんど自覚症状はなくCT(コンピュータ断層撮影)など検査によって発見されることが多い。突然死の原因となるため、破裂が起こる前に治療することが重要だ。

かつて、これらの治療は手術で人工血管に置き換える方法やB型大動脈解離では薬物療法が標準的だったが、ステントグラフトを用いた治療が2007年に大動脈瘤、15年に大動脈解離で保険適用となった。緊急手術が必要なA型大動脈解離を除き、大動脈の破裂を予防する方法として、治療の新たな選択肢となっている。

ステントグラフト内挿術は、一般的に太ももの付け根の傷(2〜3㎝)からステントグラフトを送り患部に留置する。瘤に血液が流れるのを防いだり、内膜の亀裂をふさいだりする。「人工血管置換術も大動脈瘤の破裂を予防する有効な治療ですが、患者さんの身体的負担が大きく、また高齢など患者さんによっては行えないといった課題がありました。ステント治療であれば侵襲が少なく、手術翌日から歩行や食事が行えるなど早期の社会復帰も期待でき、今までの課題がクリアできます」(植木医長)。

ただし、同治療は実施施設に認定されなければ行えず、治療を提供できる施設は限られている。とくに大動脈解離については「安全に治療を行うには経験が必要」(植木医長)と言う。

これまで1時間以上かけ静岡市内などに行き治療

同院は植木医長の着任後、血管造影装置を導入したり実施施設の認定を取得したりするなど環境を整備。6月下旬に1例目のステントグラフト治療を行い、9月22日時点で大動脈瘤と大動脈解離を合わせて22例行った。

関正之事務長は「医療資源が少ない当地域でステントグラフト治療が行えるのは夢のようです。今まで同治療を希望する患者さんは、1時間以上かけて静岡市内の病院に行かなければなりませんでした」と振り返り、「植木先生は胸部と腹部の両方でステントグラフト指導医の資格をもち、これまで500例以上のステントグラフト治療を手がけています。先生の力が発揮できるようサポートし、地域に貢献していきたいです」と強調。

植木医長も「すでにB型大動脈解離では30人ほどの患者さんが治療を待ってくださっています。近隣の医療機関と連携を図り、地域全体で患者さんにとって良い治療を提供していきたいです」。

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