徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2021年(令和3年)9月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1306 一面
徳洲会グループ全体のICT(情報通信技術)を統括・推進する徳洲会インフォメーションシステム(TIS)は、医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)に組合員として加入した。同組合は、厚生労働相と経済産業相の認可の下、4月に発足した非営利共益法人。医療AI(人工知能)サービス提供、医療AIシステム開発支援の2事業を柱とし、医療現場や研究機関にとって“医療AIの総合窓口的な役割”を果たすとともに、日本で医療AIが普及・発展するための土台づくりを目指す。
「患者さんのために貢献したい」とTIS社員(左から6人目が尾﨑社長)
HAIPはHealthcare AI Platform Collaborative Innovation Partnershipの略称。2021年4月に日本ユニシス、日立製作所、日本アイ・ビー・エム、ソフトバンク、三井物産の5社で発足した。“業界共通の基盤技術”の研究・開発を行い、医療AIサービスの普及と発展に貢献することを目標に掲げている。
活動のベースは国家プロジェクトの「内閣府戦略的イノベーション創造プログラム」。近年、医療分野でもAI技術の活用が進んでいるが、業界共通の基盤技術については次世代を見据えた接続手順や高度なセキュリティー、国際標準化といった個々の企業だけでは対応困難な課題が残っていた。こうしたなか、課題解決に向け同プログラムでは、20年度から医療AIプラットフォームの社会実装化を検討、5社で構成するチームが日本医師会(日医)AIホスピタル推進センターと連携しながら進めてきた。
その後、5社は医療AIプラットフォームを実現するには多くの企業などが参画できるオープンな環境が重要と考え、運営母体としてHAIPを今年4月に立ち上げた。HAIPは、技術研究組合法に基づき主務相の認可によって設立した非営利共益法人だ。
事業は、ゲノム(全遺伝情報)診断補助や画像診断補助、治療方針補助など“AIを活用したサービスに関する基盤づくり”と“医療分野でのAIシステム開発支援”の二本柱。日医や医療機関などと連携し集めたデータをもとにサービスやシステムを構築し、医療機関や開発ベンダー(企業)、研究者(学生含む)などに提供する(図)。
データは「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(通称:次世代医療基盤法)」に基づき、特定の個人が識別されないよう加工したうえで利活用者に提供する。
TISは6月下旬に加入。経緯について尾﨑勝彦社長は「5社が取り組んでいた課題のワーキンググループに当社も参加し、昨年、新型コロナ重症例のCT画像と臨床データを提供しました。その実績が認められ、声をかけていただいたのです」と説明する。
参加にあたり、尾﨑社長は徳洲会のビッグデータで貢献することを示唆。「AIの開発が進まない要因のひとつは、きちんとしたデータがないこと」と指摘。
導入管理部の福田秀樹・部長代理も「いわゆる“使えるレベル”のデータが必要。一般的に、医療機関からデータを集めてもコードも形もバラバラで、そのままでは研究などに利用することは難しい。しかし、徳洲会にはコードを統一し精査したビッグデータがあるので、そこが一番期待されていると思います」と強調する。
現在は週1回のマネジメントボードに尾﨑社長、プロジェクト推進会議に福田・部長代理、また開発ワーキンググループ(WG)に開発部の藤村義明部長と植松直哉システムエンジニア(SE)が参加。多様な協議を行っており、今後、同社が協力できる、より具体的な方法などを検討していくという。
「当社でもAIを開発していますが、データを提供することで、もっと良いものができる可能性がある。膨大なデータを、より広く、より多く利活用していただくことは、日本のため、患者さんのためになり、徳洲会の理念にも合致します」と尾﨑社長は抱負を語る。