2020年(令和2年)11月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1261 四面
読み解く・読み得“紙上医療講演”㊵
インフルエンザ予防!
この冬は新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に流行する可能性があり、インフルエンザワクチン接種希望者の増加が予想されます。厚生労働省は10月前半から、65歳以上の高齢者から優先的に接種を開始する方針を提示。10月後半からは、医療従事者や重症化リスクの高い基礎疾患をもつ方、妊婦さん、子どもなどの接種も始まります。インフルエンザワクチンについて帯広徳洲会病院(北海道)の目黒勇次薬局長が解説します。
目黒勇次薬局長
帯広徳洲会病院(北海道)
インフルエンザウイルスは主にA型とB型があり、手指や服に付いたウイルスが目や鼻から侵入したり、空気中のウイルスを吸い込んだりすることで感染します。予防は新型コロナウイルスと重なる点が多いですが、手洗いをする、人混みを避ける、外出時にマスクをする、さらにバランスの良い食事や睡眠、部屋の湿度を50~60%に保つことが大切です。
ワクチン接種も忘れてはいけません。インフルエンザワクチンは、以前は3価(A型2株+B型1株)でしたが、現在は4価(A型2株+B型2株)になっています。これにより流行するインフルエンザのタイプをほぼ網羅することができるようになりました。
ワクチンは接種した直後から効果が期待できるわけではないので、流行の1カ月ほど前の接種が目安となります。接種後は腕をもまなくて大丈夫です。接種当日は激しい運動を控え、風呂には入らずシャワーを浴びるだけにしましょう。
インフルエンザウイルスは毎年のように変異しながら流行するので、ワクチンは毎年そのシーズンの流行を予測して製造されます。現在のワクチンの予防効果は、接種後2週間から5カ月ほどと言われています。したがって、前年と同じ株であったとしても、次の年のワクチン接種は必要になります。
副作用として発熱、発疹、発赤、腫れ、痛みなど軽度の局所反応が挙げられますが、重篤なものはあまりなく、安心して受けることができます。また、ワクチンを接種したからインフルエンザにかからなくなるわけではなく、一番の目的は、重症化を防ぎ、死亡リスクを減らすことにあります。ワクチンを接種したケースでは、していないケースに比べ、死亡リスクが5分の1に減少することを示した研究報告もあります。
かつてインフルエンザワクチンは、成人では年2回接種することもありましたが、現在は年1回の接種が推奨されています。13歳未満の子どもの場合は、年2回接種することになっており、2回目は1~4週間空けてからの接種となります。とくに接種が推奨されるのは65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦、さらに呼吸器系や循環器系の慢性疾患、糖尿病などの慢性代謝性疾患、慢性腎不全などの腎臓疾患といった基礎疾患をもつ方です。
基礎疾患をもつ方は、インフルエンザ罹患(りかん)後に重症化して入院するケースがあります。その場合、インフルエンザから肺炎を発症することもあるので、予防のためにも肺炎球菌ワクチンを合わせて接種することをお勧めします。
インフルエンザワクチンは集団免疫の問題も指摘されています。若年者(18~64歳)の接種率が高くなるほど、高齢者(65歳以上)のインフルエンザ発症率は低くなると言われています。とくに両親や祖父母と暮らしている若年者は、周囲に感染させると重篤化させる恐れがあることを考えなくてはいけません。新型コロナウイルス同様、インフルエンザも周囲への影響が小さくないことをあらためて認識しましょう。