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Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)10月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1257 一面

「鼠径ヘルニア」と「大腸肛門病」
神戸病院が新たに2専門外来

神戸徳洲会病院は鼠径(そけい)ヘルニア外来と大腸肛門病外来を開設した。両専門外来の診療を担当する冨田雅史院長は、初期研修を含め約20年間、岸和田徳洲会病院(大阪府)で外科や救急、消化器内視鏡領域の診療に従事、4月に神戸病院に院長として着任した。急性腹症などの緊急手術や大腸がんの内視鏡治療・腹腔鏡(ふくくうきょう)手術、鼠径ヘルニアの手術といった得意分野を生かし、両専門外来を8月にスタート。同院は2025年をめどに新築移転を計画、また今年度中には産科の再開や内視鏡センターの開設など、診療機能の充実を図る方針だ。

今後も診療機能拡充 新築移転に弾み

「救急・急性期病院として飛躍を」と冨田院長「救急・急性期病院として飛躍を」と冨田院長

鼠径ヘルニアは一般的に「脱腸」と言われ、「体内の臓器が本来あるべき部位からはみ出る病態」を指す。腹壁は、表面から皮膚、皮下脂肪、筋膜、腹膜前脂肪、腹膜の順番で構成()。加齢などにより腹筋が衰えてくると、腹壁で一番弱い鼠径部(足の付け根のあたり)の筋膜に負担がかかり、腹膜が押し出されて腸が飛び出すことがある。これが鼠径ヘルニアで、手術が唯一の根治療法だ。

立ち上がったり重い物を持ち上げたりと、腹部に力がかかった弾みで飛び出すことが多い。手で押したり身体を横にしたりすることで大抵は元に戻る。他方、臓器が飛び出し、隙間に嵌(はま)ったまま戻らなくなる「嵌頓(かんとん)ヘルニア」になることもまれにあり、激しい痛みを引き起こす腸閉塞や、重症例では敗血症などを引き起こし、緊急手術を要することがある。

小児の鼠径ヘルニアは成人とは異なるメカニズムで発症する。胎児期に形成される腹膜鞘状(しょうじょう)突起と呼ばれる腹膜の一部が、通常は出産前に自然に閉鎖するが、何らかの原因で閉鎖しないと、そこに臓器が入り込み鼠径ヘルニアの病態を呈する。

冨田院長は岸和田病院時代から鼠径ヘルニア診療に注力し、これまでに手がけた鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術数が500件を超えるエキスパートだ。また、大腸がんをはじめとする消化管がんの内視鏡治療や腹腔鏡手術、急性腹症の緊急手術などにも積極的に取り組んできた。日本内視鏡外科学会技術認定医(ヘルニア)の資格ももつ。

「これまでに培ってきた得意分野を生かしながら、安定して高い治療成績を出すことができ満足度が高い手術を、地域の患者さんに提供していきたいと考え鼠径ヘルニア外来を開設しました。当院に赴任後、手術を含め治療に取り組んできましたが、認知度を高めるため看板を掲げる意味で新たに外来を開設しました」(冨田院長)

同院では鼠径ヘルニアに対し鼠径部切開法手術と腹腔鏡手術の2とおりの手術を行っている。鼠径部切開法手術は、突出部位の上のあたりを4~5㎝ほど皮膚切開し、腹膜を縫合するとともに、筋膜の上にメッシュ(シート状の人工補強材)を置いて孔をふさぐという方法。腹腔鏡手術では、臍部(さいぶ)とその両脇の3カ所に小さな孔を開け、腹腔鏡と鉗子(かんし)2本を挿入し、腹膜を切開・剝離(はくり)したうえで、筋膜の下にメッシュを置いて孔をふさぐ。

「元気な患者さんには、術後の違和感が少なく、創部が小さく早期の社会復帰が可能な腹腔鏡手術を選択します。一方、前立腺がんや直腸がんなど下腹部の手術の既往がある患者さんや、心肺機能が低下した高齢の患者さんに対しては、麻酔リスクが低い局所麻酔での施行が可能な鼠径部切開法を選ぶことが多いです」と患者さんに合わせ、ふたつの手術法を使い分けている。状態の良い患者さんであれば日帰りや1泊入院手術が可能だ。

同院は25年をめどに、現地点から南に約1㎞の地点に移転する計画。JR山陽本線・垂水駅から約500mの好立地だ。

「移転は5年後と先なので、その前に現在の病院を一部リニューアルし、今年度内に産科の再開と産科病棟の開設、岸和田病院と連携し内視鏡センターを開設する予定です。新築移転に向けた重要なステップと位置付けています。〝患者さんに選ばれる病院〟を目指し、救急・急性期病院として飛躍していきたい」と冨田院長は力を込める。日本外科学会の外科専門医を育成できる修練施設となることも掲げ、教育施設としても存在感を高める考えだ。

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