徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)10月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1208 四面

台風19号深い爪痕
避難所生活をより快適に
TMATが各地の被災地支援

国内外で災害医療活動に取り組むNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は、大型の台風19号により、甚大な被害を受けた地域で支援活動を行った。秋山川が決壊した栃木県、千曲川が決壊した長野県、阿武隈川が決壊した宮城県、福島県にそれぞれ隊員を派遣、調査活動を実施。長野県と宮城県には本隊も派遣し、長野県では100人超が避難している北部スポーツ・レクリエーションパーク(北スポ)を拠点に10月27日まで、宮城県では50人超が避難している丸森小学校を拠点に23日まで、それぞれ活動を行った。

感染症対策で衛生活動にも力

MATによる台風19号支援活動 台風19号の浸水被害で木が倒れ、家は泥まみれに(長野県)
台風19 号の浸水被害で木が倒れ、家は泥まみれに(長野県) TMATによる台風19号支援活動

10月12日夕方から台風19号が日本列島に上陸、各地で猛威を振るった。国土交通省は20日、河川堤防が決壊したのは7県71河川で135カ所と発表。警察庁は24日、死者は13都道府県で76人と発表した。徳洲会グループの病院や介護施設では、一部で停電があったものの機能維持に影響は出なかった。

TMATは13日朝から情報収集を開始。TMATの福島安義理事長(一般社団法人徳洲会副理事長)は、先遣隊の派遣を視野に検討を進めるよう指示を出した。まずは先遣隊として栃木県に5人、長野県に3人の派遣を決定した。

栃木県に出動したTMATは同日夕方、県庁での医療調整ミーティングに参加。翌朝、獨協医科大学内の対策本部でミーティング後、他団体と合同で避難所の調査を実施した。栃木市内では避難所が集約され始めており、開設している避難所も市職員や保健師が連携し対応可能であることを確認。佐野市・足利市でも自宅などに帰宅できる人が増え、避難者の管理もできていると評価。夕方、獨協医大で調査結果を報告し、栃木県内での活動を終了した。

長野県に出動したTMATは13日夜、県庁や長野赤十字病院で情報収集。翌朝、同院内の対策本部でミーティングに参加した。現状では患者搬送ニーズが高く、避難所の支援には手が回っていない状況のため、先遣隊は長野市保健所と協議し、他団体と合同で5チームをつくり、長野市内の避難所17カ所を調査。夕方、保健所内でのミーティング結果を受け、TMATは本隊派遣を決定した。

避難所内を巡回し避難者に対し健康相談(中央が鈴木医長、長野県) 避難所内を巡回し避難者に対し健康相談(中央が鈴木医長、長野県)

同日夜に先遣隊第2陣3人が長野県に到着、合流し、避難所である北スポでの当直を開始。翌日から北スポでの保健衛生活動や健康相談などを本格的に始めた。まずは避難所内の衛生環境を整備。避難所内を土足禁止にするため、畳で区切って靴脱ぎ場を作成。トイレ後の手洗いを徹底させるため、ハンドソープや紙タオル、消毒液を仮設トイレの前に配置し、自然な流れで手洗いができるように工夫した。

環境整備や巡回に注力

安倍首相が避難所を視察に訪れTMAT を激励(長野県) 安倍首相が避難所を視察に訪れTMATを激励(長野県)

先遣隊第2陣として現地入りした福岡徳洲会病院の鈴木裕之・救急科医長は「本来、行政主導で避難所の環境整備を行うべきだと思いますが、経験がないとアイデアも生まれません。TMATには全国の被災地を支援することで蓄積したノウハウがあるので、避難所に入った瞬間、何をしなければいけないか頭に浮かびます。環境整備を怠ると、避難所生活を快適に送れないだけでなく、感染症が広まる原因にもなり得ます」と強調。

さらに、避難所内の巡回にも注力。避難所生活が長引くと、自分では気付かないまま体調を崩していることもあるため、潜在的な患者さんを見つけ出すことが重要だ。今回は災害処方箋が発行できなかったため、応急処置をしたり地域の医療機関につなげたりして、避難者の健康を守った。

同時に避難者リストも作成。避難者が、どのような持病を抱えているか、常備薬は手元にあるかなど巡回による面談で把握し、長期的に対応していくのが目的だ。鈴木医長は「これも本来は地域の保健師が主導すべきですが、今回の初動では、医療チームと保健チームが別々に動き、うまく連携できていない印象でした。そのため保健所内で毎朝行う医療調整ミーティングで、毎日両チームの情報を共有し、各避難所に固定の保健師を配置することを提案しました」と振り返った。

ダンボールベッドが整然と並ぶ避難所(宮城県) ダンボールベッドが整然と並ぶ避難所(宮城県)

また、鈴木医長は「今回の台風19号は被害が大きく、活動地域が分かれ、期間も長期にわたったため、TMAT内でも経験者がばらけました。長野県での活動も、本隊隊員は未経験者が多かったため、なるべく避難所の〝完成形〟を見せて、工夫したポイントを指導したり、これから行うべきことを引き継いだりしました。将来のTMATの活動に備え、経験者を増やすことも課題だと思います」と展望。

20日には安倍晋三首相と内閣府大臣政務官の今井絵理子・参議院議員が避難所である北スポを訪問。TMATに対し激励の言葉を送った。長野県では15日間、合計23人の隊員が活動。27日にすべての活動を終えた。

断水した避難所で活動

避難所内で診療活動も(左から2人目が浦部医師、宮城県) 避難所内で診療活動も(左から2人目が浦部医師、宮城県)

宮城県では15日から先遣隊3人が活動を開始。県庁と仙南保健所で情報収集、ミーティングに参加した。翌日、TMATは同時期に活動を開始したNPO法人AMDA(岡山県)と協働し、丸森町の主要避難所である丸森小学校を担当することに決定。丸森小に到着後、すぐに避難所アセスメントを始めた。

避難者が生活する体育館は土足のままの状態、トイレもパーテーションで区切られた介助者用がひとつのみだったため、迅速な環境整備が必要だった。また、電気は復旧したものの、上下水ともに断水しており、復旧までに1カ月を要する状況だった。同日、ダンボールベッドを設置予定だったが、避難所内の清掃、ゾーニングなどを避難者に説明したうえで実施すべきと関係者に助言し、翌日にもち越し。夜、避難者に説明を行った。

17日の作業内容は事前にタイムスケジュールを作成し、行政や自衛隊、DMAT(国の災害派遣医療チーム)と共有。当日はTMATが中心となり、100人近いスタッフが体育館の清掃、ダンボールベッドの設置などを行った。午後3時頃には、すべての作業を終え、別室に荷物とともに移動していた避難者を体育館に誘導。土足禁止エリアを明確にし、出入り口をひとつにして靴箱を設置するなど環境整備した。

18日から災害処方箋の発行が認められ、丸森町役場に臨時救護所とモバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)が設置された。丸森小でも緊急患者さんへの対応や処方切れ患者さんに対する処方を開始。

TMATの福島理事長(後列右から3人目)が視察に(宮城県) TMATの福島理事長(後列右から3人目)が視察に(宮城県)

TMATは①診療や避難所アセスメントを行う医療チーム、②保健師と一緒に避難者リストを作成する保健チーム、③避難所内の感染対策や生活改善を行う環境整備チーム――に分かれ活動した。また同日、宮城県から福島県に先遣隊2人を派遣、現地調査を行ったが、医療ニーズはなく活動を終了した。

先遣隊として現地入りした湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)小児科の浦部優子・非常勤医師は「一度出来上がった生活スペースを崩し、ダンボールベッドを設置する作業は大変でしたが、生活環境は良くなり衛生的にも改善されたと思います。23日に小学校が再開し、TMATの活動も同日に終了することが決まったので、後はそれに向け動くだけです」と語っていた。

重要なのは保健チームの作業。避難者の状態を把握し、「リハビリテーションが必要」、「お風呂の介助が必要」など保健師が保健所に要望を上げ、個別に対応していくためだ。TMATはこれまでの情報を地域の保健師に引き継ぎ、撤収後もスムーズに避難所運営ができるよう最後まで尽力した。

環境整備チームも断水が続くなか、仮設トイレの前に手洗い場を設置したり、ダンボールベッドの配置を変えて談話スペースをつくったりし、避難所生活の改善に努めた。医療チームは延べ20人の患者さんを診療。宮城県では11日間で合計12人の隊員が活動、また仙台徳洲会病院から応援をもらい、同院から8人のスタッフが現地入りし、23日にすべての活動を終えた。

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