徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)6月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1187 一面

札幌東病院
整形外科外傷センター開設
土田・湘南鎌倉病院副院長が兼任

札幌東徳洲会病院は4月、整形外科外傷センターを開設した。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の土田芳彦・副院長兼外傷センター長が、札幌東病院のセンター長を兼任。救急医療の強化に加え、将来的には若手医師の教育の場にもする考えだ。札幌市には土田センター長が立ち上げた札幌徳洲会病院外傷センターがあり、一時期、札幌東病院と協力して外傷専門医療を提供していたが、札幌病院の新築移転を機に統合。それから約7年の月日を経て、新たに札幌東病院に外傷センターを開設した。今後、両院は切磋琢磨(せっさたくま)し合い、地域の方々の重度外傷に対応していく。

整形・形成 一貫治療を推進

「地域の方々と未来の外傷医療に貢献したい」と土田センター長 「地域の方々と未来の外傷医療に貢献したい」と土田センター長

重度外傷は救命が最優先だが、とくに四肢外傷は救命し得た後、いかに迅速に機能再建術を実施するかが、患者さんのQOL(生活の質)に大きく影響する。日本では長い間、機能再建術の重要性が認知されず、熟達した手技をもつ専門医が圧倒的に不足しているため、医療機関によって治療成績に大きな差が出ていた。

重度四肢外傷の治療成績はFix&Flap(骨接合と同時期に皮弁形成術を行う手技)の概念が導入されて以降、飛躍的に進歩した。しかし、いまだ現場に浸透していないのが現状。土田センター長は「Fix&Flapを整形外科医と形成外科医のコラボチームで行う施設もありますが、外傷再建整形外科医が皮弁形成の技術を磨いて、単独で行わなければ質を確保できません」と警鐘を鳴らす。

さらに「重度四肢外傷の治療には〝マニュアル的治療〟よりも〝オーダーメイド治療〟が必要です」と強調。このため一貫治療(整形外科・形成外科・血管外科)を行える外傷再建整形外科医と、治療の場として重度四肢外傷再建センターの必要性を説いているが、国内ではいまだ不足していると指摘する。

外傷治療は皮弁形成もできる外傷再建整形外科医による一貫治療が必要 外傷治療は皮弁形成もできる外傷再建整形外科医による一貫治療が必要

これは同時に、若手医師に対する教育の場の不足にも直結。「教育をするには、成熟した施設でないといけません。日本中に重度四肢外傷再建センターのネットワークを構築し、治療と教育を推進することが急務です」と土田センター長は展望する。

こうした思いを抱く土田センター長と、救急医療の強化を熱望していた札幌東病院がタッグを組み、外傷センター開設に至った。現在、湘南鎌倉病院と湘南厚木病院(神奈川県)の外傷センター長を務める土田センター長が、札幌東病院のセンター長も兼任。湘南鎌倉病院と札幌病院からの医師派遣を得て、常勤医6人体制を組んだ。

土田センター長は複数の病院を行き来しているが、「外傷センター運営のノウハウは確立しているから問題ない」と胸を張る。2007年4月に札幌病院外傷センターを開設、翌4月に札幌東病院にも外傷センターを開設し、2センター体制で外傷専門医療を提供してきたが、12年7月の札幌病院の新築移転を機に両センターを統合。その後、土田センター長は活動の場を札幌から神奈川に移した。こうしたなかで外傷センター運営のノウハウを確立、札幌東病院のポテンシャルの高さも熟知しているからこそ、「問題ない」という自信につながっている。

専用手術室の確保が重要

札幌東病院での開設にあたり、土田センター長がこだわったのが専用手術室の確保。重度四肢外傷は命にかかわらないケースが多く、手術の優先順位が低くなることも少なくない。しかし、患者さんの四肢機能の維持・回復には迅速な機能再建術が不可欠。このため手術室の確保は必須だ。

機能再建術はマイクロサージャリー(顕微鏡と特殊な手術器具を用い血管や神経の剝離(はくり)・縫合を行う手術)が基本で、これに関連するインフラを整備。さらに重要なのが人員の配置で、麻酔科医や手術室看護師などを緊急手術時に確保できる体制をつくった。土田センター長は「こうした体制整備には、病院側の理解と覚悟が必要です。札幌東病院から全面的な協力を得ました」と説明する。

今後は地域の認知度アップが重要課題。救急隊への訪問・講演活動はもちろん、同院の医師一人ひとりの専門や強みを地域の医師に知ってもらう必要があることから、学会などを通じアピールしていく考えだ。土田センター長は地域に浸透するには1年はかかると予測している。

その後、同院で若手医師の教育にも着手する予定。「私のもとに若手教育のオファーがたくさん来ていますが、教育の場がないために断ってしまうのは、未来の外傷医療の損失につながります」と土田センター長は危惧。「この1年で安定した患者数の確保、高度な医療を提供できる体制をつくり、地域の方々へはもちろん、未来の外傷医療にも貢献していきたい」と意気軒高だ。

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