徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

鈴木 隆夫(すずきたかお)(一般社団法人徳洲会理事長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

鈴木 隆夫(すずきたかお)

一般社団法人徳洲会理事長

2019年(令和元年)6月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1187

どんな難題でも眼前の命を救う手立てを
一緒に考えて突破できる集団でありたい
徳洲会グループが目指すのは“伝説の病院”づくり

「先端医療センターの地鎮祭に私は出席できない」と宣言したのは当日の5月11日朝でした。湘南鎌倉総合病院に開設する同センターは、2人にひとりが、がんにかかる現在、がんの再発や併発、がんを患いながら別の疾病の治療を受ける方、あらゆるがん治療を尽くした“がん難民”と呼ばれる方などの砦(とりで)となるセンターをつくりたいと、仲間とともに私自身が温めてきた夢です。式典に出席される鎌倉市長をはじめ、徳洲会を支援し続けてくださる方々や徳洲会の幹部など多くの関係者のことを思うと、自分の不在が非礼甚だしいと理解しつつも、地鎮祭に向かうことができませんでした。

目の前のひとりの患者さんを考えるチームであってほしい

その日の湘南鎌倉病院の「8時会」での出来事でした。「救急搬送されてきた60代女性、脳動脈瘤(りゅう)破裂によるくも膜下出血により、気管挿管しましたが、その時、脳外の手術が行われていて、当院では対応不可能だったため、患者さんを藤沢市内の医療機関に転送しました」。当直の看護師長からの淡々とした報告を聞いた瞬間、私の心のなかに異様な違和感が巻き起こりました。出席していた病院幹部やスタッフの誰ひとりとして、この発言に対し何の質問も発声もなく、粛々と受け入れていたことへの私の怒りと失望でした。

患者さんは病院に対し、安心、安全、親切な医療を期待しています。徳洲会の病院だから信頼し安心して運ばれてきたのに、別の病院へ搬送したのでは、ご家族も失望したことでしょう。

徳洲会が目指す医療は「患者さん中心の医療」であり、医療者の都合で患者さんに不都合が生じることは、決してあってはいけません。大規模組織になったとしても官僚的になってはならないのです。つねに目の前のひとりの患者さんのことを考えるチームであってほしい。

医療と産業との大きな違いは、医療は診療報酬制度で価格が決められていることです。つまり、どんな病院で、どんな医療者に、どんなレベルの治療を受けても、同じ疾患の治療法であれば、支払いに大きな差異は生じません。これは正当でしょうか。そこには患者さん目線の価値が抜けています。欧州では、高い期待を上回る医療には、相当の対価が支払われるべきという考えに基づき、近年、Pay for Value(価値に対しての支払い)が広まっています。保険会社との契約で、測定した価値に基づいて高い場合にはインセンティブが付き、低ければ減額されます。支払いに差がなければ競争原理は働きません。価値の高い医療を提供する病院を患者さんが選ぶのです。医療の高度化とともに膨張する医療費への対策として、日本でも導入されるのは必至だと思います。

患者さんの体験に焦点当て価値の向上図ることも重要

医療の価値とは、患者さんが感じる治療の成果(アウトカム)を、一連の治療にかかるコスト(経費、労力)で割り算出したものです。患者さんにとっての治療の成果は、患者さんの報告から測定します。初診時、手術時、術後30日、術後1年、術後3年など定点ごとに治療後の機能の状態はどうか、自己管理ができているか、日常の活動が行えるかなどアンケートでデータを集め、他施設や諸外国のデータと比較、分析し、改善を図ることで、その質を向上させます。

また患者さんの体験に焦点を当て、その価値を上げることも重要です。病気を抱えた患者さんは不安です。病気の治療だけでなく、不安で傷付きやすい心情にも配慮が必要なのは当然です。適切な情報を適切なタイミングで、必要であれば繰り返し伝える。選択肢があり、自身で選択できるようにする配慮は、病気で苦しむ患者さんの気持ちを楽にします。それもまた患者さんにとっての医療の価値ではないでしょうか。あなたの病院にとって、多くの患者さんのひとりかもしれませんが、その患者さんにとっては、病気に苦しみ、病院にかかわることは、人生の重大なイベントなのです。

徳洲会は、どんな難題を突き付けられても、どうやったら、この目の前の命を救えるか、一緒に考え突破できる集団でありたいと私は願っています。徳洲会が目指すのは「Fabled(フェイブルド) Hospital=伝説の病院」づくりなのです。これは、患者さんが満足できる医療の提供に努め、「生命だけは平等であってほしい」という願いを全世界に向けて発信している私たちの「烽火(のろし)」です。皆で頑張りましょう。

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