2019年(平成31年)4月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1182 一・二面
名古屋病院が全面支援
大垣病院 心臓血管外科を再開
地域の医療水準向上に一層貢献
大垣徳洲会病院(岐阜県)は4月、心臓血管外科診療を本格的に再開した。名古屋徳洲会総合病院を中心とする「名古屋徳洲会心臓血管外科グループ」の支援により実現した。大垣病院は2008年4月の開設後、約2年間で200例以上の心臓血管外科手術を実施するなど診療に尽力したものの、マンパワーの面で制約があり一時休止。その後、名古屋病院の循環器内科と同グループの体制充実にともない、人的支援が可能になったことから、10年ぶりに大垣病院の心臓血管外科を再開できた。同院は今後一層、地域の医療水準の向上に貢献していく考えだ。
東海地方を代表するハートチームへ
「地域の医療水準向上に貢献していきたい」と大橋総長
大垣病院心臓血管外科の再開に合わせて、名古屋病院の大城規和・心臓血管外科医長が異動し、大垣病院心臓血管外科部長に就任した。大城部長は沖縄県立中部病院で初期研修を終え、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)に入職、18年4月からは名古屋病院で診療に従事。昨年11月から非常勤医として大垣病院で外来診療を行ってきた。
12月には本格再開に向け、名古屋病院と大垣病院のスタッフが集まり、キックオフミーティングを開催。資機材の整備やマニュアル作成に加え、大垣病院の看護師や臨床工学技士(ME)が名古屋病院で研修を行うなど準備を進めてきた。
「東海地方を代表するハートチームへの成長が目標」と大城部長
心臓手術では術中、心臓の動きを止め、代わりに人工心肺装置を用い全身に血液を送り出す特殊な技術が必要。名古屋病院での研修を通じ、MEはこうした手術に関連する機器の操作を習熟、手術室看護師や術後の集中管理を行う看護師もスキルアップを図った。また、大垣病院は8年前に休止した集中治療室(ICU)があった2階病棟を今年4月に再開。名古屋病院のICUナースの応援や協力を経て、今後、ICUの再開も目指す。
名古屋病院の心臓血管外科は今年21年目を迎え(病院開設からは33年経過)、通算8700例以上の心臓血管外科手術を実施。18年は大動脈瘤(りゅう)緊急手術、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、経皮的ステントグラフト手術、末梢(まっしょう)血管手術などが増加し、年間920例と過去最多の手術総数を達成した。
また、植え込み型補助人工心臓治療、右肋間(ろっかん)小開胸による内視鏡下MICS(低侵襲)弁膜症手術、手術支援ロボットによる左肋間小開胸バイパス手術、同心臓手術、カテーテル型左心補助装置(インペラ)治療など、最新治療を東海地区で先駆的に取り組んできた。
MICS冠動脈バイパス手術の様子(写真は名古屋病院)
名古屋徳洲会心臓血管外科グループを統括する大橋壯樹・名古屋病院総長は「より多くの患者さんの治療に貢献するとともに、心臓血管外科の若手医師の育成を強化する一環で、01年に松原徳洲会病院(大阪府)で心臓手術を開始したのを皮切りに、野崎徳洲会病院(同)、宇治徳洲会病院(京都府)、東京西徳洲会病院、葉山ハートセンター(神奈川県)でも同様に人的支援を行いながら、手術を実施する体制を構築してきました」と説明する。続けて「そこで育った医師たちは、これら病院の心臓血管外科で責任者を務めています。同グループ全体で現在20人の心臓血管外科医を擁するまでになりました」とアピール。
大橋総長は複数病院で緊密に連携を取り合うグループを組織するメリットを強調する。ひとりの医師が責任をもって診療を担っていたとしても、何らかの事情で不在となった場合、とたんに立ち行かなくなってしまう。しかし、緊密なグループを組むことによって迅速な対応が可能になり、医師の応援診療などを通じ人員不足を補ったり、学会発表などによる一時的な不在時にも代診を行ったりすることができる。
さらに複数病院で症例を集めることができるため、若手医師が成長する機会に恵まれるという利点もある。
昨年12月に名古屋病院と大垣病院のスタッフが集まりキックオフミーティング
大垣病院では冠動脈疾患や心臓弁膜症、大動脈疾患のほか、末梢血管疾患、透析用シャント造設、PTA(経皮的血管形成術)など幅広い疾患の治療を推進。さらに今後はステントグラフト治療などの実施に必要な各種施設認定を取得し、より高度な治療を行う体制を整備していく方針だ。
大橋総長は「大垣病院が立地する西濃地区の医療水準向上に貢献していきたいと考えています。また、名古屋病院と大垣病院は直線で約40㎞の位置関係にあります。東海地方にある徳洲会病院として連携を深めながら認知度を高めていきたい」と意欲的だ。
大城部長は準備段階から地域の病院・診療所に挨拶まわりを行うなど、積極的に地域連携を推進。「24時間緊急手術を断らず、患者さんを大切にし、地域の医療機関と協力しながら地域完結の医療を目指したい。また、救急医療にも尽力し、地域の中核病院として役割を果たし、東海地方を代表するハートチームに成長していくことが目標です」と大城部長は抱負を語っている。