2019年(平成31年)3月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1176 四面
脳死下臓器提供の体制整備
札幌東病院
有識者を招き勉強会など実施
札幌東徳洲会病院は院内の倫理委員会を経て、脳死下臓器提供の体制整備を進めている。昨年1月から多職種による臓器移植ワーキンググループを開始、これをベースに同年10月、瀧健治・救急センター長を委員長に臓器提供委員会が発足した。院内の勉強会にも積極的で、今年1月11日に有識者を招き臓器提供講演会を実施、3月7日に外部講師による脳死判定シミュレーションを行うなど準備に余念がない。脳死下臓器提供施設は徳洲会で5施設目。
徳洲会グループの脳死下臓器提供施設
| 湘南鎌倉総合病院(神奈川県) |
| 岸和田徳洲会病院(大阪府) |
| 福岡徳洲会病院 |
| 中部徳洲会病院(沖縄県) |
| 札幌東徳洲会病院 |
脳死で臓器提供できる施設の条件は、①臓器摘出の場を提供するなどのために必要な体制が確保されており、当該施設全体について、脳死した者の身体からの臓器摘出を行うことに関して合意が得られている。なお、その際、施設内の倫理委員会などの委員会で臓器提供に関し承認が行われている、②適正な脳死判定を行う体制がある、③救急医療などの関連分野で、高度医療を行う施設(大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の基幹施設または連携施設、救命救急センターとして認定された施設、日本小児総合医療施設協議会の会員施設)である。
「患者さんの要望に応える体制整備を」と三澤部長
札幌東病院では昨年1月から臓器移植ワーキンググループを開始。多職種が参加し、書類の整備や手順書の確認、院外での勉強会・講習会への参加などを行ってきた。これをベースに同年10月、臓器提供委員会が発足。太田智之院長からの指名を受け、委員長に瀧センター長、副委員長に三澤学・麻酔科部長が就任した。同院の場合、施設条件の「日本脳神経外科学会の基幹施設または連携施設」となるため、小児(18歳未満)の患者さんは対象外となる。
「臓器提供の難しさや必要性を感じた」と太田院長
同院が脳死下臓器提供の体制整備を始めた理由について、瀧センター長は「脳死に至るまでに、しっかりとした医療を提供できることが大前提。そのうえで、もし患者さんやご家族が臓器提供を望んでいるなら、それに応えるのが医療者の義務だと考えます」と説明する。
太田院長も「患者さんの思いに応えるため」とし、「世の中のためになることなので、院内のチームがうまく機能するようにバックアップしていきたい」と意欲的。さらに「院内アンケートで、臓器提供の意思表示をしている職員が3分の1ほどしかいないことがわかり、院内の啓発も必要だと感じました」と課題も提示した。
「4つの権利」を考える
臓器提供委員会は1カ月に1回程度開催
同院は1月11日、札幌市内で臓器提供講演会を開催した。これは院内の体制整備の一環で、有識者から脳死下臓器提供に関する知識を学ぶのが目的。冒頭の挨拶で三澤部長は「当院の柱である救急医療では、さまざまな患者さんやご家族の要望に応じ医療を提供します。終末期医療も重要で、脳死下臓器提供も選択肢のひとつとして、患者さんの要望があれば応えていかなければなりません」と語気を強めた。
まず、北海道大学病院先進急性期医療センター救急科の早川峰司講師は「脳死下の臓器提供は選択肢のひとつでしかない」をテーマに講演した。患者さんの家族には考える時間を与える必要があるが、切り出すタイミングが難しいなど注意喚起。そのうえで、脳死下の臓器提供は特別なことではなく、選択肢のひとつでしかないと強調した。
次に同大学病院臓器移植医療部の嶋村剛部長・診療教授は「北海道における臓器移植医療の現状」と題し講演した。肝臓、腎臓、心臓に関し臓器移植の現状や課題など説明。日本は諸外国に比べ臓器提供件数が少なく、とくに腎臓は平均15年待ちの状態であることなど指摘した。
外部講師を招き脳死判定シミュレーション
日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野の横田裕行教授は「救急・脳外科施設からみた脳死下臓器提供の課題と取り組み」をテーマに講演した。臓器提供には①提供する権利、②提供しない権利、③受ける権利、④受けない権利――があると説明。提供したい人数と受けたい人数に乖離(かいり)があるのが現状だ。
講演では行政の対応、院内の体制整備などについて解説。このなかで今後、入院時重症患者対応メディエーター(医療対話推進者)が重要になると強調。これは患者さんや家族が治療方針や内容を十分に理解し、治療を選択する際の意思決定を支援するのが役割。「脳死になった際、選択肢のひとつとして臓器提供に関する意思決定過程への支援が可能になります」とアドバイスした。
最後に太田院長は「臓器提供の難しさを知りましたが、同時に必要性も感じました。今後、職員全員が同じ方向を向き、しっかりと体制整備をしていきます」とまとめた。