徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(平成31年)3月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1176 一面

「疼痛治療科」を開設
各院の求めに応じ移動診療
中部徳洲会病院

中部徳洲会病院(沖縄県)は3月1日、がんの痛みを軽減する「疼痛(とうつう)治療科」を開設した。神経ブロック療法など痛みの治療技術を駆使し、眠気のない除痛を追求、がん患者さんのQOL(生活の質)向上を目指す。また、徳洲会グループ病院の求めに応じ、同科の医師が移動して疼痛治療にあたる「モバイル・エキスパート」を実践すると同時に、グループ内の医療従事者に疼痛治療の知識・技術を啓発していく考えだ。

モバイル・エキスパート構想

「がん患者さんのQOL向上に貢献したい」と服部・統括部長 「がん患者さんのQOL向上に貢献したい」と服部・統括部長

中部徳洲会病院が全国的にも少ない疼痛治療科を開設できたのは、がん研有明病院で長らく疼痛治療にあたってきた服部政治医師が入職したからだ。服部医師は同科の統括部長に就任、がん性疼痛治療のエキスパートとして、増え続けるがん患者さんの痛みの軽減に尽力していく。4月以降、神経ブロック療法の技術をもつ2人の医師が加わり体制を強化、診療を本格化する。

がんの痛みには、がんそのものがもたらす痛み、がんが転移した部位の痛み、がん治療にともなう痛みなど、さまざまな種類がある。このような痛みを放置すると、日常生活に支障を来すだけでなく、体力を消耗し、がん治療そのものにも影響を及ぼしかねない。

服部・統括部長は「痛みが続くと、交感神経が興奮し、末梢(まっしょう)循環が悪くなり、食欲が低下、抑うつ状態になっていきます。その結果、回復力や免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり腫瘍免疫や体力が低下したりし、容易に死が近づいてきます」と警鐘を鳴らす。

国立がん研究センターが2016年に実施したがん患者さんの遺族4812人に対する調査では、「亡くなるまでの1カ月間、身体の苦痛が少なく過ごせたか」という問いに約41%が否定的な回答。また、大学病院やホスピス(終末期医療を行う施設)などで苦痛が軽減できていない割合は約40%という調査結果もある。

がん性疼痛の治療には、一般的な鎮痛薬やオピオイド(麻薬性)鎮痛薬の投与、注射薬での調節がある。これらで十分に痛みを軽減できない場合は、痛みを感じている神経をブロックする神経ブロック療法を行う。同療法の適用により、鎮痛薬の量を大幅に減らすことができ、眠気など副作用を低減できるのが特徴だ。

同療法には内臓の痛みに適応となる腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)ブロック、上腸間膜動脈神経叢ブロック、下腸間膜動脈神経叢ブロック、上下副神経叢ブロックや、肛門の痛みに適応となるフェノールサドルブロック、肋骨(ろっこつ)部の痛みに適応となる肋間(ろっかん)神経ブロックや胸部脊髄(せきずい)くも膜下フェノールブロックなど、さまざまな種類がある(図)。

服部・統括部長は「がん性疼痛患者さんのうち、約80%は鎮痛薬の適正使用で痛みをコントロールできますが、約10~20%はオピオイド鎮痛薬を用いても効かない激しい痛みがあります」と説明。こうした患者さんに対し、神経ブロック療法を用い、痛みを軽減する。

また、脊髄の近くにカテーテル(医療用の管)を入れ、直接的に鎮痛薬を投与する脊髄鎮痛法もある。内服に必要な鎮痛薬量の数十分の一の量で、より高い鎮痛効果を発揮できるのが強みだ。内服薬や貼付薬で痛みが軽減できない場合や、神経ブロック療法が適応にならないケースに選択する。疼痛治療科ではカテーテルが抜けたり、感染したりしないように体内に埋め込む手術も行う。

知識・技術を啓発・普及

服部・統括部長らは神経ブロック療法や脊髄鎮痛法といったインターベンション療法(カテーテルを用いた治療法)の教育にも注力する。「ここ20年来、疼痛治療でインターベンションができる医師が育ってきていませんでした。増え続けるがん患者さんの痛みに効果的に対処するために、まず徳洲会グループ内で、さまざまな疼痛治療法を普及していきたいです」(服部・統括部長)と意気込みを見せる。

服部・統括部長らは全国の徳洲会病院の求めに応じ、その病院に移動して治療にあたる「モバイル・エキスパート」構想を打ち出している。これにより、身動きの取れないがん性疼痛患者さんの治療にあたると同時に、疼痛治療にかかわる医師や看護師に知識・技術を啓発していく考えだ。「たとえば看護師さんには、患者さんが痛みを感じた時、自身で鎮痛薬の投与ができる精密ポンプの使用方法などを紹介していきたい」(同)と説く。

服部・統括部長は「各病院で、あらゆる疼痛治療法が実践でき、がん患者さんのQOL向上に貢献できるようになることが理想です」と展望している。

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