2019年(平成31年)1月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1169 四面
鹿児島病院
リハビリに力を注ぐ
急性期から在宅まで一貫
鹿児島徳洲会病院はリハビリテーションに注力している。50人を超えるリハビリ専門職による急性期から回復期、維持期、在宅までの一貫したリハビリサービスの提供が強みだ。回復期リハビリテーション病棟も有する。同院リハビリテーションセンターの吉﨑智洋副室長(作業療法士=OT)は「リハビリスタッフ全員でスキルアップと切磋琢磨(せっさたくま)を重ね、サービスの質の向上に努めていきたい」と意気込みを見せている。
リハビリ専門職50人超で対応
患者さんとのコミュニケーションを大切にしながらリハビリ実施
「リハビリを始めた頃は1分も立っていられませんでしたが、うまく立位を維持できるようになりましたね。今日は5分立っていられましたよ。短い距離ですが、歩くこともできるようになってきたので、もう少し歩行が安定してきたらご自宅へ戻れますよ」
鹿児島病院の2階にあるリハビリテーションセンターで、理学療法士(PT)のひとりが患者さんに優しく声をかけながらリハビリに取り組んでいた。この患者さんは70歳台男性で、急性硬膜下血腫を発症、2カ月前に救急搬送されてきた。以前、軽度の脳梗塞に罹患(りかん)したこともある。搬送後、急性期治療を終え、この時は同院の回復期リハビリ病棟に入院しながらリハビリを行っていた。
この患者さんのほか、同じ時間帯に、拘縮(こうしゅく)(関節が硬くなり可動域が小さくなる)が起こった神経難病の患者さんに、関節可動域の維持・拡大を目的としたリハビリや、大腿骨頚(けい)部骨折など整形外科疾患の急性期治療を終えた患者さんの可動域訓練や歩行訓練を行っている患者さんらがいた。
吉﨑副室長(右)と土山・看護師長
同院は許可病床310床のケアミックス病院。急性期病床が130床(うち10床はHCU=高度治療室)、回復期リハビリ病棟が40床、医療療養病床が20床、障害者病棟が120床だ。リハビリ専門職はPTが26人、OTが21人、言語聴覚士(ST)が4人の計51人。日々多数の患者さんにリハビリを実施。脳卒中など脳血管障害や骨折など整形外科疾患を中心に、呼吸器や心臓疾患など、幅広いリハビリニーズに対応している。
同院2階にあるリハビリセンターでは回復期リハビリ病棟を含む入院患者さんに対するリハビリを実施。1階にもリハビリセンターがあり、入院患者さんへのリハビリや、外来リハビリに取り組んでいる。同じく1階には通所リハビリセンター(定員40人)がある。
「当院では急性期から在宅まで一貫したリハビリサービスを提供できるのが強みだと自負しています。転院することなく患者さんの状態に合ったリハビリが可能であるため、とても喜んでいただいています」(吉﨑副室長)
同院は主治医のオーダーに基づき、手術当日からベッドサイドでの急性期リハビリを実施。早期介入することで、離床や機能回復を早めることが期待できる。また、回復期リハビリ病棟には20人のリハビリ専門職を専従職員として配置するなど力を入れる。
高齢者人口が増加する一方、平均在院日数は短縮傾向にある。状態が安定した患者さんは、できるだけ在宅復帰というのが国の考え方だ。こうしたなかで訪問リハビリのニーズも高まっている。同院の訪問リハビリはPTとOTが担当し、登録患者さんは常時40~50人と安定したニーズがある。訪問エリアは鹿児島市内(一部を除く)。
9割「自宅に帰りたい」
患者さん一人ひとりに合わせたリハビリを提供
吉﨑副室長は「退院後の療養の場所として、この地域では在宅志向が圧倒的に強いのが特徴です。9割の患者さんは施設ではなく『自宅に帰りたい』とおっしゃいます。リハビリに対する患者さんのモチベーションは高いですね。退院調整部門や通所リハビリ、訪問看護・介護などと連携しながら、できるだけ患者さんのご希望に沿えるよう、在宅復帰を目指して取り組んでいます」と説明する。
回復期リハビリ病棟は2008年7月に30床で開設。ニーズの高まりを受けて、その後40床に増床した。同病棟は、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折など急性期治療を終えた患者さんにリハビリを集中的に実施する病棟をいう。ADL(日常生活動作)の向上を図り在宅復帰を促進するのが目的だ。
同病棟の土山輝良・看護師長は「患者さんを中心に、看護師やリハビリ専門職、医療ソーシャルワーカー(MSW)など多職種が協働し、患者さんの生活の再構築を支援しています。今後、病棟看護師のなかから回復期リハビリテーション病棟協会の認定看護師を増やしていき、ケアの質を高め、地域から選ばれる病院になれるよう取り組みを続けていきたい」と話す。
同病棟では、患者さんの入棟時のカンファレンス以外にも、多職種が参加するカンファレンスを週に2回と頻繁に開催。カンファレンスの結果は、同院独自の回復期カンファレンスシートに記入する。これは医師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、病棟看護師、栄養士、リハビリ専門職のそれぞれの立場から、患者さんの現状や状態に対する評価を記入し、各職種間で情報共有を行うためのツール。退院やその後の在宅療養に向けての支援方法などを検討する際に欠かせない情報だ。
チーム医療にも積極参加
リハビリ専門職はさまざまな“チーム医療”に欠かせない存在だ。同院では脳神経外科のカンファレンスや整形外科の回診同行、RST(呼吸サポートチーム)の一員として回診同行、NST(栄養サポートチーム)カンファレンス参加、褥瘡(じょくそう)回診同行など積極的にかかわっている。
徳洲会グループは目下、同院の新築移転プロジェクトを推進。吉﨑副室長は「新築移転時に回復期リハビリ病棟を増床する構想があります。急性期から在宅まで、つねにリハビリ全体の質の向上や、患者さんに満足していただけるリハビリを提供していけるよう、スタッフ一同スキルアップに努めていきたい」と意気込みを語っている。