2018年(平成30年)12月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1163 一・二面
NPO法人TMAT
ロヒンギャ難民に医療支援
言葉の壁あるも尽力
TMAT隊員の河内副院長(右から2人目)と鈴木医長(その左)
NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は11月23日から1週間、ミャンマーの少数派イスラム教徒であるロヒンギャ難民に医療支援を行うため、バングラデシュの難民キャンプにTMAT隊員の医師2人を派遣した。
ロヒンギャはミャンマー西部のラカイン州を根拠地としていたが、同国の多数派である仏教徒から歴史的な背景などにより迫害を受け、隣国のバングラデシュに流入。同国南部のコックスバザールにある難民キャンプで、約100万人が生活。
今回は現地で医療支援活動を行っているNPO法人AMDA(岡山県)バングラデシュ支部に協力する形で支援、同支部が仮設診療所を開設しているクトゥパロンというエリアで活動した。隊員は湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の河内順・副院長兼主任外科部長と福岡徳洲会病院の鈴木裕之・救急科医長。
2日間の移動を経て、25日から医療支援をスタートした。診療は午前10時から午後2時までで、1日の患者数は120人ほど。TMATとAMDAの医師が協力して診療にあたった。
日本から持参したポータブルエコーで腹部診察
患者さんの多くは女性と子どもで、外傷はほとんどなく、感冒症状や発熱、消化器症状、皮膚症状がメイン。なかには結核や赤痢など感染症もあった。多くの難民が狭い地域で密集して暮らしているという、感染が広まりやすい環境も要因のひとつだ。
診療には〝言葉の壁〟が立ちふさがった。TMAT隊員の英語を現地スタッフがベンガル語に通訳、それをさらにロヒンギャ難民のボランティアがロヒンギャの言葉に通訳する段階を踏まなくてはならず、手間や時間を要するため、ジェスチャーなどを駆使してコミュニケーションを取る必要があった。
医薬品は外国からの持ち込みが厳しく規制され、原則、バングラデシュ国内の医薬品のみを使用。このためTMAT隊員は現地の医薬品の商品名や用量などを事前に学習したり、現地スタッフに聞いたりしながら診療にあたった。
日本からは聴診器、体温計、血圧計など持参、ほかにポータブルエコーも用意し、腹部診察などに役立てた。
現地で4日間の医療支援を終え、29日にコックスバザールを出発、12月1日早朝に帰国した。鈴木医長は「TMATとして、初めての難民への医療支援でした。TMATはこれまで災害時の支援を行ってきて、医療と同時に避難所の環境整備などにも尽力してきました。今回は短期間の派遣だったので、そこまでできませんでしたが、先の見えない事態に対し、どこまで支援ができるか課題だと思います」と振り返っていた。