ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2018年(平成30年)12月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1163 一面
札幌東徳洲会病院医学研究所の水上裕輔がん研究部部門長(旭川医科大学内科学講座消化器・.液腫瘍制御内科学分野准教授)が統括する多施設共同の膵(すい)がん研究チームは、遺伝子変異の解析技術を活用し、膵臓にできた腫瘍性嚢胞(のうほう)が、がんに変化する新たな経路を発見した。発がん過程に応じた遺伝子変異などの特徴もわかり、膵がんを早期発見するスクリーニング(選別)検査技術への応用など、がんゲノム(全遺伝情報)医療の進展が期待できる。研究成果をまとめた論文は米国消化器病学会の『Gastroenterology』誌(2019年2月号)に掲載される。
「IPMNと膵がんの関係を詳細に解析しました」と水上部門長
研究チームに参加しているのは同院のほか、手稲渓仁会病院、北海道大学、東北大学、東京医科大学、慶應義塾大学、Genomedia社。「医学の進歩や発展のため今後も研究に取り組みます」と小野部門長
IPMNに関連する膵がんは従来、IPMNが直接がん化するIPMN由来がん(Sequential)と、IPMNとは別の場所の病変が、がん化する併存がん(De novo)の2種類が知られていた。膵がんにかかわる遺伝子変異は、これまでにKRAS遺伝子やGNAS遺伝子の変異など多数発見されてきた。しかし遺伝子変異がどう蓄積し前駆病変ががん化するかは未解明で、膵臓にある複数の前駆病変ごとに、遺伝子変異のパターンにどのようなばらつきがあるかもわかっていなかった。
充実した設備を有する札幌東病院医学研究所
遺伝子解析の大半を担ったのが札幌東病院医学研究所。同研究所は11年に発足、12年に文部科学省から科研費助成事業指定研究機関として認可を受け、15年には本格的な実験施設が完成。次世代シーケンサーやデジタルPCR(超低頻度の遺伝子変異の検出が可能な遺伝子増幅手法)など先進的な装置を有する。今年8月には新型の次世代シーケンサーを導入した。8月に導入した新型の次世代シーケンサー
発がん経路により遺伝子異常のパターンが異なるため、血液や膵液、十二指腸液から高精度で検出できれば、早期診断や治療効果の予測などに応用できる可能性がある。実際に同院をはじめ研究チームは、膵液と十二指腸液から遺伝子変異を調べ、膵がんのリスク評価を行う臨床研究に取り組んでおり、早期発見技術の実用化が期待される。