2018年(平成30年)12月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1163 四面
回顧この1年 ②
徳洲会グループ “在宅を支える”
サービス充実化
地域包括ケア病棟 超強化型老健など
在宅医療・介護を国が推し進めるなか、徳洲会グループは患者さんや介護施設利用者さんが住み慣れた地域で、できる限り安心して自分らしい生活を送れるように、さまざまなかたちで支援に努めている。今年も医療・介護それぞれで在宅生活をバックアップするサービスを強化。複数の病院が地域包括ケア病棟(床)を開設したり、介護老人保健施設(老健)が新たな施設類型の下、“超強化型”になったりした。訪問看護ステーションやグループホームの開設など訪問系サービス、居住系サービスの充実化も目立った。
地域の看護・介護事業所と退院前カンファレンス(名瀬病院)
地域包括ケア病棟(床)は2014年の診療報酬改定で新設された「在宅医療を支える」ためのスペース。医学的管理や看護、リハビリテーションなど多職種連携の下、急性期医療を終えた患者さんの円滑な在宅復帰を促したり、自宅で療養中の患者さんが急変した時に受け入れたりする。
家族など患者さんの在宅生活を支える介護者の負担軽減を目的とした短期入院も可能。200床未満の医療機関は病床単位、200床以上の医療機関は病棟単位でなければならない。
徳洲会グループは今年、新たに名瀬徳洲会病院(鹿児島県)、神戸徳洲会病院、庄内余目病院(山形県)が同病棟、沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)と茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川県)が同病床を開設した。このうち名瀬病院は6月に従来の障がい者病棟(42床)を転換し、在宅復帰率は9割超に上る。専従で退院調整などを行う上谷由美子・看護部長は「当病棟を設置して在宅復帰の患者さんが増えました。退院するまでに排泄(はいせつ)や食事など生活動作のフォローまで行うことが、ご家族から喜ばれています」。
職員にもプラスに
沖永良部病院は9月に9床を開設。患者さんや家族へのメリットはもちろん、地域包括ケア病床の取り組みはスタッフの満足度向上にもつながった。たとえば、以前は退院調整を、各患者さんを担当する看護師がそれぞれ行っていたが、同病床の設置にともない退院支援室を設け一元化、「スムーズに患者さんが退院できるようになった」と好評だ。
茅ヶ崎病院は一般病床132床のうち8床を地域包括ケア病床として運用。多職種が連携し在宅復帰を支援している。庄内余目病院は1月に医療療養病棟45床を転換。同院でもカンファレンス(症例検討会)などを通じて多職種が患者さんの身体状態のみならず退院後の生活も見据えた情報共有や方針検討を行っている。「地域のニーズにきめ細かく応える受け皿として役立っています」と寺田康院長。
在宅復帰に向けリハビリを行う西口優花・理学療法士(沖永良部病院)
病院と自宅の中間施設として原則、リハビリを中心に在宅復帰を促す老健。4月の介護報酬改定により、施設のタイプが3類型から5類型に再編され(図)、より機能の明確化を図るとともに、評価体系もきめ細かくなった。
施設のタイプは、ポイント制の「在宅復帰・在宅療養支援等指標」と、ほかの4項目(退所時指導等、リハビリテーションマネジメントなど)の要件に応じて決まる(表)。最上位は「超強化型」だ。
たとえば、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」で、①在宅復帰率50%超、②ベッド回転率5%以上、③入所前後訪問指導割合30%以上、④退所前後訪問指導割合30%以上、⑤居宅サービスの実施数2、⑥リハ専門職の配置割合5以上、⑦支援相談員の配置割合2以上、⑧要介護4または5の割合35%以上、⑨喀痰吸引の実施割合5%以上、⑩経管栄養の実施割合5%以上――の場合、各項目の該当するポイントは合計70。これに「退所時指導等」など、ほかの4項目の要件をすべて満たせば「超強化型」になり、ポイントが60以上70未満だと「在宅強化型」、ポイントが高くても要件を満たしていない項目があれば加算型、基本型になる仕組みだ。これらに当てはまらない場合は「その他」となる。
表 評価項目(厚生労働省の資料を一部編集)
評価項目 |
|
|
|
|
その他型 (左記以外) |
超強化型 |
在宅強化型 |
加算型 |
基本型 |
在宅復帰・在宅療養支援等指標(最高値:90) |
70以上 |
60以上 |
40以上 |
20以上 |
左記の要件を満たさない |
退所時指導等 |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
リハビリテーションマネジメント |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
地域貢献活動 |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件なし |
充実したリハビリ |
要件あり |
要件あり |
要件なし |
要件なし |
- 在宅復帰・在宅療養支援等指標:下記評価項目(①〜⑩)について、項目に応じた値を足し合わせた値(最高値:90)
- ①在宅復帰率
- 50%超20
- 30%超10
- 30%以下0
- ②ベッド回転率
- 10%以上20
- 5%以上10
- 5%未満0
- ③入所前後訪問指導割合
- 30%以上10
- 10%以上5
- 10%未満0
- ④退所前後訪問指導割合
- 30%以上10
- 10%以上5
- 10%未満0
- ⑤居宅サービスの実施数
- 3 サービス5
- 2 サービス3
- 1 サービス2
- 0 サービス0
- ⑥リハ専門職の配置割合
- 5 以上5
- 3 以上3
- 3 未満0
- ⑦支援相談員の配置割合
- 3 以上5
- 2 以上3
- 2 未満0
- ⑧要介護4または5の割合
- 50%以上5
- 35%以上3
- 35%未満0
- ⑨喀痰吸引の実施割合
- 10%以上5
- 5%以上3
- 5%未満0
- ⑩経管栄養の実施割合
- 10%以上5
- 5%以上3
- 5%未満0
- 退所時指導等
-
a: 退所時指導
入所者の退所時に、当該入所者及およびその家族等に対して、退所後の療養上の指導を行っていること。
b: 退所後の状況確認
入所者の退所後30日※ 以内に、その居宅を訪問し、または指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、在宅における生活が1カ月※以上継続する見込みであることを確認し、記録していること。
- リハビリテーションマネジメント
-
入所者の心身の諸機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるため、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを計画的に行い、適宜その評価を行っていること。
- 地域貢献活動
-
地域に貢献する活動を行っていること。
- 充実したリハビリ
-
少なくとも週3 回程度以上のリハビリテーションを実施していること。
※ 要介護4、要介護5 については2 週間
介護の質向上にも
利用者さん宅の状況を確認するため入所前に訪問(老健おきなわ徳洲苑)
徳洲会グループの老健では、おきなわ徳洲苑(沖縄県)、あいの郷(埼玉県)、八尾徳洲苑(大阪府)が超強化型を取得した。いずれも入所前後の訪問に最注力し、退所後の生活をサポートするため、利用者さん本人や家族の意向をふまえながら生活機能の具体的な改善目標などを確認する。
リハビリセラピストの増員も図り、おきなわ徳洲苑では、日曜日も個別リハビリを行うなど手厚い体制を整えた。
このほか要介護4、要介護5の方など「重度者の受け入れ」、地元の公共施設で転倒予防教室の開催といった「地域貢献活動」など、各施設が要件を満たすために活動。これらの取り組みを通じ、自ずと介護の質の向上にもつながったという。
11月に開設した東京西くじら訪問看護ステーション
また、各施設からは「具体的な目標に基づいて動けるので良かった」(渡具知充・おきなわ徳洲苑支援相談員主任)など、「利用者さんだけでなく、スタッフにとっても大切な活動」といった声が聞かれた。
他の在宅生活を支えるサービスとしては、訪問看護ステーションや認知症の方を対象にした居住系サービスのグループホームも複数開設された。