2018年(平成30年)4月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1130 四面
徳洲会病理部門
3センター運用で診断の質を確保
「九州・沖縄」「大阪」に続き「東日本」へ
徳洲会病理部門は「徳洲会病理3センター構想」を策定、2016年12月の九州・沖縄病理診断研究センター(T―KOP)開設に続き、今年2月には大阪病理診断研究センター開設、さらに東日本病理診断研究センターの準備委員会を立ち上げた。これは地域ごとに徳洲会グループ病院の病理診断を集約し、診断の質を確保するのが狙い。今後は画像転送システムを用いた術中迅速病理診断やCPC(臨床病理検討会)の定期的な実施も視野に入れている。
「病理3センター構想は徳洲会のスケールメリットがあるからこそ」と青笹・最高顧問
病理医は患者さんの体から採取した組織や細胞を調べ、がんなどの病気の有無や進行度などを判断するのが主な業務。多くの場合、「病理診断」を最終診断として治療方針を決定するため、とくにがん医療を実施している病院に病理医は必要だ。しかし、病理医は慢性的に不足しており、徳洲会でも全国70病院中、病理診断科の常勤医がいるのは19病院にとどまる。
こうしたマンパワー不足を解消するため、徳洲会病理部門が策定したのが「徳洲会病理3センター構想」だ。
青笹克之・病理部門最高顧問(医療法人徳洲会顧問)は「病理診断はがんの最終診断に用いられるため、間違いは許されません。診断の質を上げるためにはダブルチェックが必要不可欠ですが、小・中規模病院で病理医が2人以上いる病院は少ないと思います」と現状を分析。
「地域ごとにグループ病院の病理診断をセンターに集約することで、効率よく質を確保することができます。また、病理医のオーバーワークも解消できます」と、センター開設の狙いを説明する。これは徳洲会のスケールメリットがあるからこそ実現可能だ。
ゆくゆくは離島・へき地病院の術中迅速病理診断にも対応
まず、九州・沖縄病理診断研究センター(T―KOP)を16年12月に開設。福岡徳洲会病院を拠点として11病院が参加、徳洲会の離島病院の病理診断も担っている。昨年の病理組織診断件数は1万件を超え、開設早々に黒字運営となった。
青笹・最高顧問は「前例のないことを実施したため、開設に至るまで試行錯誤の連続でした」と述懐。
同センターの運営に関しては、昨年11月に開催した第4回徳洲会病理部会学術集会でも報告。業務の流れや、インシデント(事故などの発生の恐れがある事態)につながる注意喚起などをグループの医師、細胞検査士、臨床検査技師などが共有した。
続いて今年2月に大阪病理診断断研究センターを開設。八尾徳洲会総合病院(大阪府)を拠点として、松原徳洲会病院(同)と生駒市立病院(奈良県)が参加している。すでに八尾病院では15年7月から生駒病院の病理組織診断を受託、昨年7月からは細胞診も受託していた。これに松原病院も加わりセンター化。病理組織診断件数は1年で7500件を超える見込みだ。今後、参加病院が増える見とおし。
2月に開設した大阪センターは八尾病院が拠点
3つ目のセンターとして、このほど東日本病理診断研究センターの準備委員会を立ち上げた。成田富里徳洲会病院(千葉県)を拠点として、四街道徳洲会病院(同)と古河総合病院(茨城県)が参加する予定。九州・沖縄センターと大阪センターのノウハウを生かし、早期に開設を目指す。
今後の課題としては、センターでどのように術中迅速病理診断を運用していくかが挙がっている。同診断では手術中の限られた時間内に、摘出した腫瘍が良性か悪性か確認したり、転移や取り残しがないかなどを調べたりする。
この診断結果により手術範囲や術式が決定するため、迅速性と正確性が求められる。病院から離れたセンターへの依頼では、どうしても時間的な制約が出てしまう。
青笹・最高顧問はこの問題を解決するため、現在、遠隔病理診断検討委員会を立ち上げ検討を開始している。
これにより離島・へき地病院の術中迅速病理診断にもセンターで対応できるようになり、「離島・へき地でも都市部の病院と同等の病理診断を提供できるようになります」と強調する。
また、CPCの定期的な実施も課題のひとつだ。これは病理医の作成した病理解剖学的診断書をもとに、臨床医や医療関係者が一堂に会して医療行為を振り返る勉強会。病理医のマンパワーが限られているため、病院ごとに開催するのが難しくても、センターを基幹にすれば開催可能だ。臨床レベル向上のためにも定期開催できる体制を整備していく。
こうした勉強会に加え、グループ内の膨大な病理診断や病理解剖の結果をもとに学術研究にも取り組んでいく計画。研究テーマは徳洲会の医療活動に根差したものであるべきとし、徳洲会オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトと連携、準備を進めている。
青笹・最高顧問は「今後は自院に病理診断科のある病院ともうまく連携を取りセンターを中心にして、地域ごとに病理診断や勉強会を運用していきたいと思います。徳洲会のスケールメリットを活用して、何ができるか、何が必要かを考えていきます」と展望している。