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直言

Chokugen

末吉 敦(すえよしあつし)(宇治徳洲会病院院長(京都府))

直言 生命いのちだけは平等だ~

末吉 敦(すえよしあつし)

宇治徳洲会病院院長(京都府)

2018年(平成30年)4月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1130

市民と医療機関に圧倒的に支持される
真の基幹病院を目指すことがビジョン
職員が幸せでないと良い医療提供できず

「散歩の途中に富士山に登った人はいない」という言葉があります。富士山に登ろうとしている人は歩いています。散歩をしている人も歩いています。頑張っている人は多いですが、登る目標を定め、それに向かって歩く人だけが富士山に登ることができるのです。

2017年より年頭に全職員を集めて、自院の目指すビジョン、それに至る行動計画を発表しています。前述したくだりは17年の年頭所感で引用したもの。地域医療構想の下に、今まで自院完結型の医療だったのが超急性期から回復期、慢性期までの役割を各病院が分担する地域完結型の医療に変化しています。

これは大きな変化です。高齢の方に多い大腿骨(だいたいこつ)頚部骨折の患者さんは、手術からリハビリテーションを行い退院まで、ひとつの病院で治療が完結していました。現在は、状態が落ち着けば速やかに回復期リハビリテーションの病院に転院し、経過が長引けば、さらに慢性期の病院に転院が必要となっています。

医療の質を高めて患者さんと紹介医の満足度を上げる方針

激動のなかで地域の超急性期を担う病院として生き延びていくためには、病院の進むべきビジョン、行動計画を提示し、これらを当院の約1200人の全職員が共有して同じベクトルの下に努力する必要があります。私の提示している病院のビジョンは、市民と医療機関に圧倒的に支持される真の基幹病院を目指すことです。

病院は〝船〟です。大きな船でもエンジンはなく、手漕ぎ船です。漕ぎ手は職員。あるべき方向に向けて全員で同じ方向に漕いで行かないと、漂流し沈没してしまう可能性があります。

真の基幹病院を目指す基本は、医療の質を高め、患者さんの満足度と紹介医の満足度を上げることであり、これは不変です。行動方針としては①医療内容を詳細に臨床指標としてまとめ、振り返り公表、②多職種連携のチーム医療を推進、③地域医療連携を深化、④医療講演を推進、⑤プロの医療人として成長――など14項目を整備、それぞれ具体的な方略を提示しています。厚生労働省が目指すところを十分理解し、積極的に推進する必要があります。

これまで当院は地域での公的役割として、重症救急の最後の砦(とりで)となる救命救急センター、災害拠点病院、妊婦さんと新生児の治療拠点となる地域周産期母子医療センターの指定を受けて成長、地域の基幹病院になっています。4月から急性期医療の重症患者治療や、高難易度手術の実績を評価され、DPC(診断群分類別包括評価)特定病院(旧Ⅱ群病院)に指定されました。当院を含め京都府で4病院、全国で155病院が大学病院本院に準じた高い診療機能を有すると認められています。

山城北医療圏では病床が不足 大幅な増床や分院建設も視野

今年は地域医療構想の中心となる地域医療支援病院、がん診療の拠点となる地域がん診療連携拠点病院の指定を受ける予定。また、地域で欠如している京都府初の精神科身体合併症病棟の開設、総合入院体制加算1の体制構築に向けて動いています。

さらに、当院のある山城北(やましろきた)医療圏では、まだ病床が不足しているため、詳細な計画を添え、行政と大幅な増床の交渉をしています。実際、当院は1月から4月の間、ほぼ毎日、超満床状態。当院の増床とともに急性期の機能を円滑にするため、敷地内に、当院内に併設している介護老人保健施設の移設と、急性期後の治療を受けもつ第2病院建設が必要と思っています。

今年の年頭所感の最後に、平櫛田中(ひらくしでんちゅう)さんの言葉を紹介しました。有名な彫刻家ですが、「六十、七十は鼻たれ小僧……」など多くの名言を揮毫(きごう)しています。

「実践、実践、また実践。挑戦、挑戦、また挑戦。修練、修練、また修練。やってやれないことはない。やらずにできるわけがない。今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」

当院の丸山立憲(まるやまりっけん)総長からは「徳田虎雄・前徳洲会理事長のような人が他にもいるものだ」とのコメントをいただきました。そして、直属の部下の三木健児・救急総合診療科医長からは「院長、僕は思いっきり引きました」。

三木先生、わかっていますよ。職員が幸せでなければ、良い医療は提供できません。働き方改革のなかの「三方よし」――患者さんに満足いただけ、職員にも満足いただけ、地域に貢献できる病院を目指しましょう。

皆で頑張りましょう。

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