徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)4月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1130 三面

徳洲会小児科部会
多彩なテーマで研鑽
第9回症例発表会を開催

徳洲会小児科部会は2日にわたり岸和田徳洲会病院(大阪府)で第9回症例発表会を開催した。8演題の症例発表に加え、ゆきこどもクリニックの神原雪子院長が特別講演を行った。全国の徳洲会病院から20人ほどの小児科医や初期研修医が集まり研鑽(けんさん)を積んだ。

「日頃の診療で遭遇し得る貴重な症例発表会となりました」と新里部会長 「日頃の診療で遭遇し得る貴重な症例発表会となりました」と新里部会長

初日は岸和田病院の松元陽一副院長(小児科)の開会挨拶に続き、神原院長が「一般診療における子どもの不定愁訴のみかたと対応」をテーマに特別講演。

神原院長は八尾徳洲会総合病院(大阪府)小児科の元常勤医で、現在も同院の外来診療に携わっている。

神原院長によると、頭痛や不眠、気分が悪い、不登校などの主訴があるものの、検査をしても原因がわからない不定愁訴で受診する小児患者が増加傾向にある。

「まずは器質的な疾患がないか、各種検査を行って検索することが重要です。それでも症状の説明がつかない場合はガイドラインを参考に、心身症や発達障害、虐待など心の影響があるかどうかを考えていきます」と説明し、心身症を疑わせる所見や患者さん・家族への心の影響の伝え方、治療の進め方などを紹介した。

全国から小児科医や初期研修医が集まり研鑽 全国から小児科医や初期研修医が集まり研鑽

2日目に開催した症例検討会は、まず中部徳洲会病院(沖縄県)の安部貴之・初期研修医が「肺炎マイコプラズマ感染症とEBV感染症を合併した血球貪食性リンパ組織球症の1例」と題し発表。「血球貪食性リンパ組織球症は悪性度の高い疾患で、とくに予後不良と考えられる疾患には迅速な診断と適切な初期治療が必要です」と結んだ。

福岡徳洲会病院の池袋雄太・初期研修医は「一過性のCD4/CD8比の低下を認めた仙骨骨髄炎の1例」がテーマ。仙骨骨髄炎は骨髄炎のなかでもまれだ。「抗菌薬投与でMRI(磁気共鳴画像診断)所見は改善し、症状の再発はありませんでしたが、血液検査で原因不明のCD4/CD8比の持続低下(免疫機能の低下)を認め、正常化するまで経過をみました」と報告した。

松原徳洲会病院(大阪府)の櫻井嘉彦・小児科部長は「蕁麻疹(じんましん)様血管炎が疑われた2例」と題し発表。蕁麻疹様血管炎は個々の皮疹が24時間以上持続し、皮疹消退後に色素沈着を残す。

「ステロイド投与により、症状は改善に向かいました。皮疹には紫斑も含まれ、D-dimer(血栓の有無を調べる検査)高値と合わせて、蕁麻疹様血管炎が疑われました」と結んだ。

岸和田病院の橋本卓・小児科部長は「有痛性の発疹を認めた5歳男児の1症例」がテーマ。橋本部長は臨床所見からSweet症候群(急性熱性好中球性皮膚症)に類似する症例を経験。同群の皮膚症状や分類、原因、診断基準、治療法などを解説した。

福岡徳洲会病院の水田康平・初期研修医は「特発性右大胸筋下血腫の女児例」と題し発表。「血腫を来すような誘因は認められず、経過観察のみで自然消退しました。まれなケースですが、このような例を知っておくことは重要」とまとめた。

福岡徳洲会病院の笠伸大郎・初期研修医は「Ei -kenella corrodens(エイケネラコローデンス) によるオトガイ部膿瘍の1例」をテーマに発表。Eikenella corrodens は哺乳類の口腔(こうくう)内や消化管内に常在する菌の一種。オトガイ部は下あごのこと。「抗菌薬による治療が奏効しました。細菌の侵入経路は明らかでなく、膿瘍の形成機序が不明な症例でした」と報告した。

武蔵野徳洲会病院(東京都)の伊藤泰雄・小児外科部長のテーマは「舌小帯短縮症を伴わない哺乳障害児に対する上唇小帯切開の有用性」

「舌小帯短縮をともなわない哺乳障害児でも上唇小帯を切開すると哺乳力、母親の乳頭痛、乳腺トラブルが改善します」と発表した。

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の三宅隆太・小児科医長は「皮膚レーザー治療後にチアノーゼを呈した乳児の一例」と題し発表。広い範囲に紅斑がありレーザー治療の適応がある患児に、疼痛(とうつう)緩和目的でエムラクリームを塗布。その後、チアノーゼ(血中の酸素濃度低下で皮膚が青紫色になること)が出現した。エムラクリームの副作用としてチアノーゼなどを引き起こすメトヘモグロビン血症が知られている。

同症治療薬のメチレンブルー投与で酸素濃度は改善。「酸素投与に反応しないチアノーゼを見たら血液性チアノーゼを積極的に疑うことが大切」と呼びかけた。

終了後、新里勇二・小児科部会長(中部徳洲会病院副院長)は「初期研修医からベテランの先生まで参加していただき、幅広い内容の症例発表会を開催することができました。日頃の診療で遭遇し得る貴重な症例で、参加者にとって意義のある会になったと思います」と総括した。次回は湘南鎌倉病院で開催する予定。

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