2017年(平成29年)9月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1101 四面
日本高気圧環境・潜水医学会近畿地方会が学術集会
高気圧酸素療法の認知度向上
宇治徳洲会病院で第2回を開催
第2回日本高気圧環境・潜水医学会近畿地方会学術集会が宇治徳洲会病院(京都府)で行われ、徳洲会グループが計4題を発表した。同地方会は、近畿圏での高気圧酸素療法の認知度向上などを目的に昨年創設。2回目の学術集会は同院が会場に選出され、医師、臨床工学技士、看護師、事務職員を中心に実行委員を編成し、病院をあげて準備に取り組んだ。今回のテーマは「ここに効く!ここで使う!高気圧酸素治療」。90人が出席し、活発に意見を交わした。
酸素加圧と空気加圧との比較をテーマに発表する太田技士長
徳洲会グループの発表は技術的なテーマを中心とした「一般演題」、症例報告などを中心とした「要望演題」、看護師からの視点で設けられた「ティータイムセミナー」で行われた。
一般演題では、宇治病院臨床工学救急管理室の太田雅文技士長(臨床工学技士)が
「経皮モニター装置を用いた第一種高気圧酸素治療装置における酸素加圧と空気加圧の比較」をテーマに発表。2015年の新築移転時に酸素加圧と空気加圧が切り替えられるようになり、疾患別や状況に応じて酸素加圧・空気加圧を切り替えて対応している。
太田技士長は経皮モニター装置を使用しボランティアの健常者5人に左鎖骨下部位と左足甲部位で酸素加圧と空気加圧時を測定。酸素加圧の左鎖骨下部位でtcpO2(経皮酸素分圧測定)値が最も高いことが判明した。
向畑副主任は臨床工学部と国際医療支援室の連携を強調
2気圧下で治療を行う場合、基本的に酸素加圧を行うが、人手が少ない夜間緊急時などの場合、安全面から空気加圧を選択する有用性を示唆するとともに、酸素加圧での治療がより有効となる疾患の可能性を指摘。酸素加圧・空気加圧の各特性を生かしたマニュアルを作成する意欲も見せた。
南部徳洲会病院(沖縄県)臨床工学部の向畑恭子副主任(臨床工学技士)は
「JCI取得後の外国人患者増加に伴う再圧治療体制の見直し~臨床工学部と国際医療支援室の業務連携強化~」と題し発表。JCI(国際的な医療機能評価)やJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)の認証取得などにより、自院に外国籍の減圧症患者さんが増加。国際医療支援室の設置など、外国人患者さんへの対応を図っているものの、一般の外国人レジャーダイバーの減圧症は日中の潜水後に発症するケースが多く、日勤帯終了後の対応に苦慮している状況を紹介した。
赤嶺室長は夜間帯でも質の高い高気圧酸素治療を実施
言語サポートツールやマニュアルなどを活用しながらも意思疎通が困難なため、今後は医療通訳の休日・夜間の呼び出し対応、クリニカルパス(診療計画表)の作成などを検討するとともに、国際医療支援室が定期的に開催している英会話教室に臨床工学部の各オペレーターが参加するなど、個人の英会話能力の向上に努める必要性も示した。
要望演題では、南部病院臨床工学部の赤嶺史郎室長(臨床工学技士)が
「潜水後の動脈ガス塞栓症に対するFull Extension Table-6 により軽快退院となった症例」をテーマに報告。CTにて下肢静脈・IVC・腸間膜静脈・門脈に大量のガス像が確認され、他院から挿管人工呼吸器管理下救急搬送された60歳代の患者さんに、日本高気圧環境・潜水医学会専門医入室下でFull Extension Table-6(米国海軍治療表、第6の最大延長型:8時間14分)を開始したところ症状が改善し、経過観察のため1日入院した後、軽快退院となった。
中村看護師の発表では宇治病院の松橋晴子・看護師長と江夏有紗看護師による寸劇も
症状が改善した背景に、迅速かつ安心・安全な治療を24時間体制で提供できる点を指摘。同専門医が救急診療科部長を兼任し、臨床工学技士が宿直体制を敷いているため、救急診療科との連携が円滑で、夜間帯でもすぐに長時間の高気圧酸素治療が実施できる。今後も続けるために部署内で研鑽(けんさん)に励む意欲を見せた。
受け付けなどでは宇治病院の看護師が浴衣でおもてなし
ティータイムセミナーでは、宇治病院の中村美穂子・看護師が
「8階東病棟での高気圧酸素療法の現状」と題し発表。自分が所属する病棟看護師を対象にアンケート調査を実施したところ、高気圧酸素療法に疑問や不安を抱いている状況が把握できたため、解決方法として院内での統一マニュアルの作成、看護師への勉強会開催などを示した。
ほか、特別講演や同地方会総会などが行われた。終了後には施設見学会も設け、希望者が宇治病院の放射線治療科や高気圧酸素治療室を訪れた。