2017年(平成29年)9月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1101 三面
徳洲会消化器内視鏡部会
実演披露などで知識共有
第8回ENDO CLUB開催
札徳洲会消化器内視鏡部会は8月19日、岸和田徳洲会病院(大阪府)で第8回ENDO CLUB学術集会を開催した。2010年から始まった同集会は、内視鏡(エンドスコープ)に関する知識や経験を徳洲会グループ病院で共有するのが目的。60人近い参加者は講演とデモンストレーションを真剣に見学し、活発に議論を交わした。
約60人が参加し知識と技能を共有
同集会は岸和田病院の東上震一院長の挨拶で開会した。今回は一般演題に加え、ランチョンセミナー、特別講演、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術)ライブデモンストレーションと、盛りだくさんの内容。一般演題は8病院から17演題の発表があった。
電気メスの実験を披露する中繁アドバイザー(右)
ランチョンセミナーでは岸和田病院の中繁忠夫・内視鏡センターアドバイザーが「電気メスのお話」と題し口演した。電気メスは本体から発生する高周波電流を利用し、切開、止血などを行う医療機器。人体を流れることで分散した高周波電流を、対極板で安全に回収し本体へ返すことで、人体には余分な電流が残らない仕組みとなっている。
中繁アドバイザーは手術領域と対極板との距離を最小限にすることで、負荷抵抗が減少することを説明し、デモンストレーションを実施。また、対極板を貼るのに不適切な場所としてインプラントの上、皮下脂肪を多く含む層の上、傷や潰瘍の上などを挙げた。
さらに、切れ方の設定の目安を知ることが大切と強調。考慮する要因として臓器別、組織構造(粘膜、瘢痕(はんこん)、線維化など)、血管網の粗密、組織の電気抵抗などを列挙し、血管や脂肪は切れにくいことを指摘した。そのうえで、電気メスを上手に扱うためには、「電極の接触面積、切開スピード、出力持続時間の調整はすべて術者の腕にかかっています」と参加者に研鑽(けんさん)を促した。
多施設共同研究の参加を呼びかける冨田部長
特別講演では同院の冨田雅史・外科部長が「閉塞性大腸がん治療の今までとこれから~大腸ステント最前線~」をテーマに講演。
はじめに「閉塞性大腸がんは救急患者さんをよく診る徳洲会だからこそ頻繁に遭遇する疾患です」と強調した。
これまで同疾患への治療は1990年代に経肛門イレウス管が開発され、人工肛門造設の回避を目的に使用されてきた。しかし、腸管に対する減圧効果が低く、手術前の患者さんのQOL(生活の質)は低かった。これに代わるものとして、2012年に日本で保険適用されたのが大腸ステント(網目状の金属製の筒)。「これにより手術前に十分な減圧を図ることが可能になり、また緩和ケアとしても適応されました」と冨田部長。
さらに冨田部長は大腸ステント安全手技研究会による「COBRAトライアル」への参加も提案。これは、閉塞性大腸がんに対する術前腸管減圧目的の大腸ステント留置術は、緊急手術と比較して有益か否かを調べる共同研究。「徳洲会グループの横のつながりをもって、多施設共同研究に参加しましょう」と参加者に呼びかけた。
最後に、同院の井上太郎・消化器内科主任部長と馬場慎一・同科医長がESDライブデモンストレーションを実施。会場と内視鏡室をビデオでつなげ、井上・主任部長が食道、馬場医長が胃のESDを行う様子を生中継した。全身麻酔下で行い、麻酔科標榜(ひょうぼう)医でもある吉原友篤・同科医師が麻酔を担当。
内視鏡室での治療の様子を生中継して解説するライブデモンストレーション
井上・主任部長は使用している内視鏡や電気メスの種類を紹介しながら治療を進行。
出血があったため、止血の方法や患部が濡れた場合の電気メスの設定なども解説した。粘膜切開のポイントについて井上・主任部長は「なるべく浅めの切開を繰り返し、早く剥離したい気持ちを抑えて、しっかりトリミングをすると、あとが非常に楽になります」と、参加者にアドバイスを送った。
同時進行で馬場医長も胃の治療を開始。短い線を重ねて円形に粘膜を切開していくが、馬場医長は「つねに同じテンションで電気メスを当てることで、切れ幅や白色変化が一定になります。これが、きれいに切れている目安です」と解説。その細かく丁寧な作業に、会場からため息がもれた。
閉会は内視鏡室から井上・主任部長が挨拶。「これからもグループ病院が一丸となって消化器診療を高めていきたいと思いますので、よろしくお願いします」と、引き続き強い連携を誓った。