徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)9月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1101 一面

岸和田徳洲会病院
TAVI 2年で100例突破
高齢患者さんに日帰り治療も

岸和田徳洲会病院(大阪府)は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI(タビ))の治療実績が100例を超えた。2015年6月に開始して以来、2年で突破。横井良明副院長(循環器内科)は「これまで築き上げてきた〝心臓と言えば岸和田〟という地域からの信頼と、TAVIでも、その信頼に応えられるだけのスキルとチームワークがあったからこそ達成できました」と意気軒高だ。

信頼に応えるチームワーク

TAVI 100 例達成で記念撮影するスタッフたち TAVI 100 例達成で記念撮影するスタッフたち

TAVIは重症大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)の根治療法で、13年10月に保険適用された。ASは大動脈弁(心臓の左心室と大動脈の間にある弁)の動きが悪くなった状態で、重症化すると狭心症、失神など症状が現れ、突然死の危険性もある。

これまで重症ASの根治療法は大動脈弁置換術(AVR)が第一選択だった。同手術は胸部を切開し、人工心肺装置で血液の体外循環を確保したうえで、機能しなくなった大動脈弁を切除し人工弁を縫い付ける。

一方、TAVIは開胸も心肺を止める必要もなく、折りたたんだ生体弁(生体組織を利用した弁)を付けたカテーテルを挿入し、生体弁の開く力で硬化した大動脈弁を挫滅、そこに押し付ける形で留置する。

低侵襲で体の負担も少ないため、AVRを断念していた患者さんも治療適応となる。

岸和田病院はTAVI実施施設の認定を15年6月に取得、今年6月23日に100例を突破した。オペレーションを担当する東森亮博・循環器内科部長は「当時は100例なんて当分先の話だろうと思っていましたが、あっという間でした。合併症例はきわめて少なく、とても良好な成績を上げることができました」と振り返る。

この治療成績が実現した理由について横井副院長は、TAVI実施以前から同科にカテーテル治療の豊富な経験があったことを挙げる。

循環器内科の横井副院長(右)と東森部長 循環器内科の横井副院長(右)と東森部長

「当科では、経皮的冠動脈形成術(PCI、PTCA)や経皮的動脈形成術(PTA)など年間で約800例以上のカテーテル治療を行っています。少人数のチームでこれらの経験を重ねてきたので、治療中に他のスタッフが何を欲しているか自然とわかります」と自信をのぞかせる。

TAVIを実施する際には、オペレーションの東森部長に加え、必ず2人の循環器内科医がサブに就く。阿吽(あうん)の呼吸で治療を進めることができるため、もし何か不測の事態が起きた場合でもリカバリーはとても早い。このスピードと正確さには、見学に来る外部の医師からも驚かれるという。

また、チームワークの良さは循環器内科医師だけではなく、臨床工学技士(ME)や手術室の看護師などコメディカルスタッフとの強固な連携も大きな要因だ。東森部長は「小さな血管損傷はステント(金属製の網状の筒)でカバーしますが、私が何も言わなくてもMEさんが最適なステントを用意して渡してくれます。各職種のスタッフは、治療前の打ち合わせを受けてトレーニングして臨んでくれているので、あらゆる事態にも対応できるように準備してくれています」と心強い。

同様に、循環器内科と心臓血管外科の協力体制も盤石だ。TAVI治療への立ち合いはもちろんのこと、心臓血管外科で診察した患者さんがTAVIの適応だと判断した場合、スムーズに転科できるフローもできている。

TAVI 実施施設

札幌東徳洲会病院
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)
千葉西総合病院
名古屋徳洲会総合病院
岸和田徳洲会病院
こうしたチームワークの良さにより、TAVIの日帰り治療を完遂させたこともある。通常は1週間ほどの入院が必要になるが、入院による環境の変化で、認知症が進行することを懸念した患者さんの家族の要望により、日帰り治療を行うことになった。

「ペースメーカーが植え込まれており、合併症のリスクが低かったことも幸いでした。治療中に合併症が起きないようチーム一丸となって取り組んだり、退院時には事務の方にもサポートしてもらったり、このチームだからこそ実現できたと思います」と東森部長は振り返る。

集患のために、これまで協力医療施設への訪問と4回の医療講演を実施。マーケティング活動がそれほど多くないにもかかわらず、患者さんが絶えないのは、〝心臓と言えば岸和田〟という地域からの信頼があるからだ。これに丁寧に応えていくことが、最も集患につながると横井副院長も東森部長も口をそろえる。

「TAVIは、どんなに高齢であっても、ASを根治できるこれまでにない治療法です」と横井副院長は評価する。

僧帽弁のカテ治療も準備

だが同時に施設要件の厳しさも指摘。「治療に携わる職種の多さ、ハイブリッド手術室(手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室)の設置など、ひとつでも欠けたら認可されません。TAVIを行いたくてもできない病院も多いと思います。今後は設備要件も少し簡略化し、多くの患者さんがこの治療を受けやすいようにするのが良いのではないでしょうか」と訴える。

今後は、僧帽弁(心臓の左心房と左心室の間にある弁)もカテーテルで治療できるよう同院の福田圭祐・循環器内科医長を中心に準備を進めている。TAVIの恩恵を受ける患者さんはますます増えそうだ。

PAGE TOP

PAGE TOP