2017年(平成29年)8月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1094 二面
モーニングレクチャー
院長らが知識共有
認知症やウイルス性肝炎
7月度の徳洲会医療経営戦略セミナー2日目(30日)の朝、毎回恒例となったモーニングレクチャーを開催した。徳洲会病院の院長や徳洲会幹部ら40人以上が参加し、内科の知識を共有した。今回は岸和田徳洲会病院(大阪府)の出田淳副院長(神経内科)が認知症、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の岩渕省吾・肝胆膵(すい)・消化器病センター長がウイルス肝炎をテーマにそれぞれ講演した。
「認知症患者さんの運転を放置してはいけない」と出田副院長
出田副院長は「認知症について――運転免許からBPSD(周辺症状)まで」と題し講演した。
認知症と運転免許では、3月12日に施行された改正道路交通法で、75歳以上の高齢者の運転に関する内容が大幅に変更された。一定の違反行為をした時や、運転免許を更新する時に「認知症のおそれ」と判断された場合は、臨時適正検査または診断書提出命令があることを説明した。医師が認知症患者さんの運転を放置した場合は法律違反になることにも言及。
さらに認知症のBPSDについて解説した。認知症の中核症状は記憶障害をはじめとする認知機能障害。一方、心理症状や行動異常はBPSDと呼ばれる。この治療には抗精神病薬を使うが、これは統合失調症に使う薬剤であり、本来BPSDには適用外。このため患者さんの家族にしっかりインフォームドコンセント(説明と同意)を行うことが必要と説いた。また、近年はパーソン・センタード・ケアという患者さんを一人の〝人〟として尊重し、その人を理解してケアを行う非薬物的介入もトレンドであることを紹介した。
ウイルス肝炎の最新情報や注意を解説する岩渕センター長
岩渕センター長は「最新のウイルス肝炎情報」と題し講演。C型肝炎はこれまでインターフェロン投与を中心に治療していたが、近年、新しい経口薬を併用して9割以上治ることがわかってきた。ただし、急激にウイルスが体内から排除されると肝細胞の再生が活性化し、そこにがん細胞が残っていると、同時に活性化される可能性を示唆。ウイルスが消えても検査を継続する必要性を指摘した。
B型肝炎はHBVと呼ばれるウイルスに感染して発症するが、これは一度感染すると治癒しても遺伝子情報は残り、感染が完全終息したとはいえない。こうした患者さんに抗がん剤や生物学的製剤を使用することで、HBVが再活性化することが報告されている。HBV潜在感染の肝炎は高頻度で劇症化し死亡率も高いことを説明。これを見逃してはいけないことを強調した。
これまでは母親がキャリア(ウイルス保有者)の場合、生まれた赤ちゃんにワクチンを打っていたが、本来なら全員に打つことが望ましいと指摘。一度もHBVに感染しない状況をつくり上げることが必要であるとし、4月に全員接種(ユニバーサルワクチン化)の道が開かれたことを報告した。