2017年(平成29年)8月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1094 一面
17年間で延べ1260人修了
呼吸療法セミナーin湘南
ファイナルレクチャー
「呼吸療法セミナーin湘南2017」が7月15日から2日間、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)で行われた。徳洲会グループ内外から医師をはじめ呼吸療法認定士の資格をもつ看護師や理学療法士、臨床工学技士ら多職種が参加し、最新の呼吸療法について学んだ。01年から年1回開催してきた同セミナーは今年で最後。今回も61人が出席し、活発な議論を展開するなど有終の美を飾った。17回の開催で修了者数は延べ1260人。
セミナーを支えたスタッフと一緒に記念撮影を行う渡部大会長(前列中央)とアシュワース教授(前列右から2人目)
呼吸療法セミナーin湘南は呼吸療法(肺の機能回復をサポートする運動や治療)に関する基礎から最新までの知識習得を目的に、2001年から年に1回開催。日本医工学治療学会呼吸器分科会の主催で、東京西徳洲会病院の渡部和巨院長が大会長、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)呼吸療法部が事務局、米国ボイジー州立大学のロニー・アシュワース呼吸療法学科教授がメインの講師を務めてきた。
2日間を通じて人工呼吸器の基本的な設定を学べるプログラムで構成。座学だけでなく、ワークショップなど体験を重視した講義、さらには学習到達度を確認するために随時テストを実施したり、臨床場面と結び付けられるよう事例を用いたシミュレーションを行ったりするのが特徴だ。
“ファイナルレクチャー”となった今回も、渡部大会長による開会挨拶の後、アシュワース教授が人工呼吸器の初期設定について説明。モードや吸入酸素濃度、最大流量などの設定、換気レベルなどの調整、ガス交換などのモニタリングについて、それぞれポイントを解説した。
済生会横浜市東部病院の山田紀昭・臨床工学技士はNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の基本について講義。NPPVはマスク装着だけで気管挿管や気管切開を行わないため、より患者さんの身体的負担が少ない療法だ。NPPVの基本的適応と禁忌、成功のポイントなどを提示。講義のなかでアシュワース教授、山田・臨床工学技士ともに多職種連携の大切さを何度も強調した。
ワークショップは参加者が実際に人工呼吸器に触れる体験型重視の内容(左がIPPV、右がNPPV の導入)
初日の後半はワークショップを実施。6~8人ずつのグループに分かれ、「IPPV(気管挿管や気管切開を必要とする侵襲的陽圧換気療法)」と「NPPV」をテーマに、徳洲会グループ内外の呼吸療法に関するスペシャリストがインストラクターを務め、実際に使用する器具を用いながら解説した。IPPVでは、アシュワース教授が各グループを回りながら「つねに患者さんが楽な設定が大切」と繰り返しアドバイスした。
NPPVでも専用機の特徴やモード選択、圧設定の目的などをふまえ、初期設定について説明したり、グループの一人がNPPVで用いるマスクを体験装着したりした。
終了後、会場を移して懇親会を開催。そこで初めて渡部大会長が、セミナーを今回で最後とする意向を表明した。「当セミナー開始時に比べ、世の中がずいぶん変わりました。情報が早く出回るようになり、同じようなセミナーも全国で130以上行われています。学べる環境が充実し、良い方向で標準化に向かっていると思う。当セミナーの役目は果たしました」と明かすと、「今回参加して本当に良かった」と漏らす参加者もいた。
最終回も60人以上が参加
2日目はアシュワース教授による講義でスタート。人工呼吸器を装着した患者さんの呼吸状態をグラフィックモニターに映し、そこから患者さんの肺の状況を読み取るポイントなどを解説した。最後に臨床シミュレーションを行い、さまざまな症例から確認・質問すべき項目や酸素治療の選択などに関しクイズ形式で提示した。
2日間を通じて随時、テストを実施。成績上位3人を表彰した。閉会の挨拶で渡部大会長はあらためて同セミナーの17年間の歴史に幕を下ろすことを表明。アシュワース教授が毎年来日したことをたたえるとともに、「日本全体の呼吸療法のレベルが上がっていくことを期待します」と願いを込めた。アシュワース教授は「皆さんはリーダー。講習会で学んだことを職場にもち帰り職員に教えるのが役目」と挨拶すると、会場から大きな拍手が湧いた。
受講した東京西病院の菅原隆広・看護主任は「毎日、人工呼吸器に携わっており、最新の知識を得たいと2年ぶりに参加しました。内容がレベルアップしており、とても良かった」と満足げ。渡部大会長に対し「17年間、セミナーを続けていただき参加者は本当に勉強になったと思います。ありがとうございました」と謝意を示した。
控室で事務局スタッフから記念品を受け取った渡部大会長は「この17年間いろいろあった」と振り返り、「とくに湘南鎌倉病院、湘南藤沢病院のスタッフ、また国内の指導的な立場の方々が快く協力してくださいました。望外の喜びです」と感謝の意を示し、笑顔で会場を後にした。