2017年(平成29年)6月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1087 三面
札幌東徳洲会病院
初期研修医が救急車に同乗
札幌東徳洲会病院は初期研修医の救急科研修の一環として、地元消防署の救急車に同乗し救急隊と24時間行動をともにする“救急車同乗実習”を実施している。初期研修医と救急隊が互いの役割などについて相互理解を深めたり、連携強化を図ったりするのが狙いだ。
救急隊と相互理解・連携強化
札幌東病院への搬送に同行する大久保・初期研修医
初期研修医は2年間の研修期間中、1~2カ月ごとに各科をローテーションし、さまざまな症例を経験しながら医師としての幅広いスキルを身に付けていく。札幌東病院では初期研修1年目に1カ月間の救急科研修を行い、このうち1日(午前9時から翌朝9時までの24時間)を使って救急車同乗実習を実施している。
同乗実習を開始したのは2014年4月。同院の研修委員長である松田知倫・救急科部長は「研修医は第一線で救急医療に携わり、救急搬送の受け入れも行っています。しかし病院到着前の救急現場を体験する機会がなく、実際の状況を知らないがゆえに、現場では入手が難しい情報を救急隊に求めたりすることがありました。そこで、相互理解を深める第一歩として同乗実習を始めることにしました」と経緯を話す。
「急患が発生した“普通の家”に入るのは貴重な経験」と松田部長
札幌市消防局の協力を得て同院に近い東消防署で実施。研修医は救急隊とともに署内に待機し、消防指令管制センターから出動指令があると救急車に同乗して現場に向かう。現場対応から医療機関への救急搬送、患者さんの引き渡しまで、同行しながら一連の活動を見学する。同院と東消防署の取り組みとして始まったが、同院が先鞭(せんべん)を付けたことで、現在は札幌市内のほかの2病院にも取り組みが広がっている。
「急病の患者さんの自宅、つまり“普通の家”に入っていく経験は貴重です。制約された状況のなか、救急隊は限られた時間で情報を集めて病院に電話をかけてきます。その様子を間近に見ることで、その後、自分が救急隊からの電話を受けた時に、相手の立場を理解しながら対応できるようになります」と松田部長は意義を強調する。
「救急を断らず受け入れることの大切さを再認識」と白須・初期研修医
取材で訪れた日は、大久保諒・初期研修医(1年次)がちょうど同乗実習を実施。夕刻に偶然、札幌東病院の近くで救急事案が発生、同院に患者さんを搬送するひと幕があった。
4月18日から19日にかけて同乗実習した白須大樹・初期研修医(1年次)は「指令センターから出動指令が入ると、待機する詰所にブザーが鳴り響きます。私の実習中は11件の出動があり、すべて病院に搬送しました。高齢者が自宅のトイレなどで転倒する事案が複数ありました」と振り返る。続けて「救急隊の苦労がよくわかりました。実習中、搬送先がなかなか決まらないのが最もつらいことでした。救急を断らず受け入れることの大切さを再認識する機会にもなりました」。
「搬送後、どのような処置が行われたか気になりました」と小川・初期研修医
小川拓也・初期研修医(2年次)は昨年6月に10件の救急出動に同行。発熱と痙攣(けいれん)で搬送・処置後に帰宅したものの、再度、痙攣を起こし、より大きな病院に搬送された小児患者さんの事案が印象に残ったという。このほか、高齢者の路上転倒や腹痛などの事案があった。
「屋外で意識障害がある場合などは、家族への連絡も付きにくく情報収集が難航して救急隊の苦労も多いと思います。家族がパニック状態のこともあるため、家族への対応も現場では重要だと感じました。患者さんを引き渡したあとは、次の出動に備えるため撤収するのですが、搬送後、どのような処置が行われたか、やはり気になりました」と話している。