2017年(平成29年)6月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1087 四面
親族間の修復腎移植
目標例数達成し
臨床研究を終了
徳洲会グループは修復腎移植の親族間の臨床研究を終了した。目標症例数5例に達したのが主な理由。今後は第三者間の修復腎移植の臨床研究を先行研究として進め、先進医療に適用されれば、親族間の修復腎移植についても先進医療適用に向け準備していく方針。
徳洲会グループ まず第三者間の先進医療適用へ
修復腎移植はドナー(臓器提供者)の腎臓に発生した小径(直径4㎝以下)がんを切除した後、その腎臓を修復し、透析患者さんであるレシピエント(臓器受給者)に移植、腎機能を回復させる治療技術。徳洲会グループは2009年12月から臨床研究として実施、これまで第三者間の移植を13例、親族間を含めると18例の移植を行い、良好な成績を収めている。
親族間の5例目は今年3月15日に実施。当初から計画していた目標症例数5例に到達したため、終了することとなった。現在、修復腎移植は親族間、第三者間ともに臨床研究としてのみ認められている。
徳洲会グループは今後、腎移植待機患者さんの救済のために、第三者間の修復腎移植については臨床研究を継続。第三者間は目標症例数20例を計画している。
徳洲会は、これまで修復腎移植の先進医療適用を目指して、厚生労働省の先進医療技術審査部会に、第三者間の修復腎移植について申請を行ってきたが、継続審議となっている。
徳洲会は同部会から指摘された事項をクリアし、8月開催の同部会で、先進医療への適用を実現したい考えだ。
第三者間の修復腎移植が先進医療に適用されれば、親族間についても適用に向け準備を進めていく方針。
わが国の腎移植を取り巻く環境は厳しく、現在、1万人以上が腎移植を希望しているにもかかわらず、心臓死や脳死ドナーからの献腎移植は年200例前後にとどまっている。腎移植待機期間は平均15年と長く、その間に亡くなる透析患者さんが多いため、修復腎移植はドナー不足解消の一助になり得る。小径がんを摘出した腎臓は年間2000個程度が廃棄されているとの報告がある。
透析患者さんからは修復腎移植の先進医療への適用に大きな期待が寄せられている。
なお、海外では100例を超す修復腎移植の報告があり、またWHO(世界保健機関)のガイドラインでは小径腎がんを、がんの伝播リスクが低いカテゴリーとして分類。これは徳洲会が実施した修復腎移植全例で、がんの再発がないことと合致している。海外の修復腎移植に関する研究では、透析患者さんより、腎移植患者さんのほうが8年長く生存しているという報告もあり、献腎を待つよりも修復腎移植を受け入れることで、QOL(生活の質)の向上と延命が期待できる。
徳洲会の修復腎移植臨床研究の責任者である東京西徳洲会病院の小川由英・腎臓病総合医療センター長は、「小径がんを発症した腎臓を捨てることは、もったいないと思います。循環型エコ社会の構築を目指す世界的な運動である“モッタイナイ・キャンペーン”と、修復腎移植はマッチしています」と、修復腎移植の先進医療適用を訴えている。
しかし、内視鏡下手術支援ロボットを用いた手術など治療技術の進歩により、目下、小径腎がんは部分切除し治療することが第一選択肢とされており、修復腎移植は先進医療に適用されなければ臨床研究として実施するしか手段がない。
透析患者団体の会員は「一日でも早く、修復腎移植を先進医療に適用してもらい、徳洲会のみならず、多くの病院に修復腎移植が普及することを願っています」と希求している。