2017年(平成29年)6月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1087 一面
米国心臓病学学会
ベストポスター賞
松本・和泉市立病院医長が受賞
和泉市立病院(大阪府)の松本健嗣・循環器内科医長は米国ワシントンD.C.で開かれた第66回米国心臓病学学会(ACC2017)で、ベストポスター賞を受賞した。大阪市立大学との共同研究によるもので、テーマはMRI(磁気共鳴画像診断装置)を活用した冠動脈の画像診断。松本医長は「大変光栄なこと。いずれ当院でも実施できるように一層努力します」と目を細めた。
MRI活用の非侵襲画像診断 日本からの演題で最優秀評価
檀上で表彰され笑顔の松本医長(中央)
松本医長はACCのポスターセッションで発表。演題は「High-Intensity Culprit Plaque on Noncontrast T1-Weigted Magnetic Resonance Imaging as a Novel Determinant of Major Adverse Cardiac and Cerebrovascular Events After Percutaneous Coronary Intervention(非造影T1強調MRI画像にて責任病変における高信号の存在は経皮的冠動脈インターベンション治療後の心・脳血管イベントの予測因子である)」。
狭心症や心筋梗塞は心臓に血液を供給する冠動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞によって起こる。近年、さまざまな研究により、動脈硬化の進行にともなってプラーク(血管内膜の部分的な肥厚)が大きくなることで血管狭窄が起これば狭心症となり、さらに不安定プラークが破裂することで血栓が形成され、心筋梗塞を起こすことが明らかになりつつある。
不安定プラークの存在は冠動脈インターベンション(PCI)治療後の新たな動脈硬化の危険因子とも言われ、PCI後の心・脳血管イベントの予測にプラークの性状が重要とされている。
一般的に非侵襲的に冠動脈のプラークを評価するにはCT(コンピュータ断層撮影装置)を用いるが、最近、T1強調MRI(磁気共鳴画像診断装置)画像による冠動脈の高信号(血液は黒く、異常部分は白く映る)がプラークの存在と強く相関しているとの報告があることから、松本医長は治療を行った病変部の信号強度が光干渉断層法(OCT)ガイド下PCI施行後の心・脳血管イベントに与える影響について検討。
対象はPCI術前にMRI検査を行い、OCTガイド下でPCIを実施した狭心症患者さん103人。高信号群(45人)と非高信号群(58人)に分け、高信号群はさらに血管壁に限局している群(21人)と血管内腔(ないくう)まで認められる群(24人)に分類し検証した結果、血管内腔まで認められる群は非高信号群に比べ、心・脳血管イベントが起こらない期間が有意に短かったことなどを報告。
「OCTガイド下PCIを施行した狭心症患者さんにとって、病変部の血管内腔(ないくう)まで認められる高信号はPCI後のイベントの独立した危険因子」と示唆するとともに、OCT上の血栓との関連を認めたことも説明した。
この発表がベストポスター賞に選出され、壇上でACCとJCC(日本心臓病学会)関係者から「日本からの最も優れた演題」として賞状を授与された。松本医長は「MRIはCTと異なり被ばくすることがありません。必要であれば何度も検査を行えますし、造影剤を用いないため腎臓の悪い方やアレルギーのある方も心配ありません」とメリットを強調。
撮影に高い技術が求められることなどから、現在、国内では大学病院など一部の医療機関でしか行っていないとし、「いずれ当院でも行えるように今後も努力します」と目を輝かせた。中村泰浩・循環器内科部長も「循環器分野で世界三大学会のひとつ、ACCで評価されたのは大変素晴らしいこと」と松本医長の快挙を喜んだ。