徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)6月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1087 一・二面

湘南鎌倉総合病院
鎌倉市歯科医師会と協定
周術期の口腔ケアで連携

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は5月25日、鎌倉市歯科医師会と「協力医療機関に関する協定書」を締結した。これは、同院に入院または通院する患者さんの口腔(こうくう)ケアに、同会所属の歯科医院が協力するというもの。周術期やがん治療中に適切な口腔ケアを施すことで、感染予防や在院日数の短縮を図るのが目的だ。医療機関とこうした協定を結ぶのは同会初。

感染予防・在院日数短縮にひと役

サインを終えた協定書を手にする塩野院長(当時、左から2 番目)と鶴岡会長(その右) サインを終えた協定書を手にする塩野院長(当時、左から2 番目)と鶴岡会長(その右)

協定は、湘南鎌倉病院で外科手術などを予定する患者さんに、鎌倉市歯科医師会に所属する歯科医院が口腔ケアの分野で協力するというもの。

口腔ケアの対象は、悪性腫瘍手術、心臓などの全身麻酔手術、造血幹細胞移植、抗がん剤治療、放射線治療、臓器移植、心臓血管手術などが挙げられる。

湘南鎌倉病院は患者さんが入院する前に、同会に所属する歯科医院に紹介状を書き、患者さんはそこで歯石の除去、クリーニング、虫歯や歯周病の治療など口腔ケアを受ける。

入院中は手術前後の口腔ケアを歯科医院が訪問診療で対応し、退院後は湘南鎌倉病院への通院治療とあわせて、歯科医院にも通い継続して口腔ケアを行うというのが、協定締結後のイメージだ(図1)。

湘南鎌倉病院と同会は、こうした連携をスムーズに行うための協力体制の構築について約1年前から協議を開始。5月25日、協定締結に至った。同会所属の歯科医院は118施設あるが、この協定に賛同したのは63施設で、このうち訪問診療対応可能が17施設。協定の期間は6月1日から来年12月31日までの1年7カ月で、以降は2年更新となる。

協定には情報提供や個人情報保護、問題発生時の対応などの内容も盛り込まれた。

この協定締結の目的を同院の塩野正喜院長(当時、現・社会福祉法人湘南愛心会理事長)は、「口腔内の衛生状態が悪いまま外科手術を行うと、術後、口腔内の細菌により感染症や誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすリスクが高まります。高度な医療を提供する病院として、全身管理のひとつに口腔ケアは必要不可欠です」と説明する。

「高度な医療を提供する病院として口腔ケアは必要不可欠」と塩野院長(当時) 「高度な医療を提供する病院として口腔ケアは必要不可欠」と塩野院長(当時)

口腔内の状態が良い患者さんは、在院日数がほぼ10%以上短縮するというデータもある(図2)。これは口腔に近い領域に限らず侵襲が大きな治療の際には口腔ケアが重要であることを示している。

同協定について同会の鶴岡明会長は、「湘南鎌倉病院で手術をして良かったと思っていただけるように、私たちは口腔の専門職としてサポートしていきます」と意気込みを見せる。

同会では、周術期の口腔ケアを担う歯科医師や歯科衛生士のために勉強会などを開き、技術の習得を推進している。

今後は院内スタッフへの周知徹底が課題となる。これまでは口腔内の管理まで考える外科医は少なかったが、義務化していく考え。そのために、1年前から院内の勉強会を開催し、意識付けをしてきた。さらに、電子カルテ上に「口腔ケア」の項目をつくるなど、システムでもサポートしていく予定だ。

「すでに当院の血液内科では歯科との連携を始めています」と事例を挙げるのは、同協定の締結に事務的な側面でサポートしてきた弓指靖士・病診連携室主任。昨年1月から鎌倉市内のいがらし歯科医院と連携し、定期的に歯科医師と歯科衛生士が訪問して医師とカンファレンスを行い、歯科回診を実施している。これにより、合併症の予防、早期回復に効果を上げてきた。「すでに院内で実績もありますので、全診療科に広げるための支援をしていきます」(弓指主任)。

湘南鎌倉病院の院長室で調印式 湘南鎌倉病院の院長室で調印式

鶴岡会長は地域の方々への啓発の大切さも強調する。たとえば、すべての歯に深さ5㎜の歯周ポケット(深くなった歯と歯肉との隙間)ができていると、潰瘍の面積は手のひら大にもなるという。この潰瘍面に露出した血管から、歯磨きなどの刺激で菌が全身に回ると、さまざまな疾患を引き起こすことがある。「こうした情報は一般的にはまだ知られていません。病院とタッグを組むことで、口腔内の健康が身体の健康につながっていることを、もっと地域に広めていければと思います」(鶴岡会長)。

さらに、「口からものが食べられなくなると、タンパク質の摂取量が減り筋力が低下し、免疫力も落ちてしまいます。口も身体の機能の一部と自覚し、若いうちから口腔ケアをしっかり行うことが大切です」と、鶴岡会長は警鐘を鳴らす。

湘南鎌倉病院は、同協定のために院内に歯科用の治療ユニットを1台導入。歯科医師の訪問診療時、ベッドサイドだけでは、できる治療に限界があるが、専用の治療ユニットがあれば治療の幅が広がり、緊急で口腔ケアや治療が必要な場合にも対応できる。「手術を受ける患者さんの年齢は上がってきています。少しでも感染症などのリスクを減らせるように、この連携を生かし、病院として取り組んでいきます」と塩野院長(当時)は意欲的だ。

PAGE TOP

PAGE TOP