徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)12月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1316 1面

湘南鎌倉病院脳梗塞再発予防の新治療開始
カテーテル用い卵円孔開存閉鎖術

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の施設認定を取得し、9月に同術を初めて実施した。これは、心臓の右心房と左心房の間の壁(心房中隔)に空いた孔(卵円孔)から、左心系に静脈血栓が流入し血栓が脳に到達することで起こる脳梗塞に対する再発予防のための治療法だ。カテーテルを用いて行う。施設認定には高いハードルをクリアする必要があり、大学病院をはじめ全国で84病院・診療科にとどまる(2021年11月末時点)。徳洲会グループでは同院と岸和田徳洲会病院(大阪府)が認定を受けている。

ブレインハートチーム設置

循環器科、脳卒中診療科、脳神経内科の各科医師から成る湘南鎌倉病院ブレインハートチーム PFO閉鎖術に用いる治療器具(画像提供:アボットメディカルジャパン) PFO閉鎖術のイメージ図(画像提供:アボットメディカルジャパン)

潜因性脳梗塞とは、原因の特定が困難な塞栓性の脳梗塞を言う。従来は原因不明と考えられてきたが、潜因性脳梗塞に対する知見が深まったことにより、心房中隔に孔が空いた状態を指す卵円孔開存(PFO)が関与している脳梗塞があることがわかってきた。

胎児期に空いている卵円孔は通常、出生後短期間のうちに自然閉鎖するが、一定の割合で自然閉鎖せずに残ることがある。健常者の約25%にPFOがあるとされ、通常、症状はなく問題となることはほとんどないが、まれに血栓が通過し脳梗塞を発症することがある。PFOが関与する脳梗塞の既往がある患者さんへの再発予防は、これまで薬剤投与による抗血栓療法に限られていた。

一方、経皮的PFO閉鎖術は、PFOを塞ぐことで再発を予防する新しい治療法だ。同術を行うには日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会が合同で策定した治療実施施設基準をクリアする必要がある。

脳梗塞の十分な原因検索を行い、安全に治療器具の留置を行う必要があることから、3学会の専門医または認定医が複数在籍し、これらの医師から成る“ブレインハートチーム”で情報を共有することなどを求めている。また、一定以上の症例数など診療実績の要件もある。湘南鎌倉病院は7月に施設認定を取得した。

同院の田中穣・循環器科部長は「3月に当院の循環器科、脳卒中診療科、脳神経内科でブレインハートチームを立ち上げました。毎月、この3診療科の医師で定例の合同カンファレンス(症例検討会)を開催しているほか、疑わしい症例があれば日頃から活発にコンサルテーション(相談)を行い情報共有するなど、患者さんのために尽力しています」とアピール。

続けて「PFO自体は4人に1人に見られるものですので、各種検査によって脳梗塞の発症につながるハイリスクのPFOをしっかりと見極め、チーム医療で適応を判断しています。脳梗塞の再発予防を通じ地域医療に貢献していきたい」と意気込みを語る。

同術はカテーテルによって、AMPLATZER(アンプラッツァー) PFO Occluder(オクルーダー)という専用の治療器具を使いPFOを閉鎖する。同器具は、形状記憶合金のワイヤーで編み込んだ2枚のディスクで構成。具体的には、太ももの付け根付近の静脈からカテーテルを挿入、心腔(しんくう)内に到達後、まず左心房側でディスクを広げ、次に右心房側でもうひとつのディスクを広げて心房中隔をはさむような形でPFOを閉鎖する。

X線透視や経食道心エコーなどで位置を確認しながら施行。一度留置すれば半永久的に機能する。

薬物療法群と比べ 再発リスク45%減

19年12月に国内で保険適用となった新しい医療器具で、米国とカナダで実施された臨床試験では非致死性脳卒中(主要評価項目)の再発リスクが、薬物療法群と比べ45%低下という結果が出た。

脳卒中診療科の宮﨑雄一部長は「潜因性脳梗塞に対するPFO閉鎖術は、施設認定を得るためのハードルが高いため、現実的には多くの施設で実施するのは難しい治療です。そのため当院は、立地する湘南地域にある医療機関の先生方に向け情報発信し、PFO閉鎖術を必要とする患者さんに治療機会を提供するための地域連携を強化しています」と説明。

脳神経内科の山本大介部長は「『脳卒中治療ガイドライン2021』(日本脳卒中学会)では、PFOの関与が疑われる潜因性脳梗塞に対し、一定の条件を満たした場合は同閉鎖術の施行が妥当であるとする記載が新たに加わりました」と指摘。また「同閉鎖術の開始とともに、密接な関連がある心臓と脳に関する各診療科の相互理解が深まり、全体として当院の診療レベルの向上が期待できます」と展望している。

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