徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

山形徳洲会病院 院長
笹川 五十次(ささがわいそじ)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

笹川 五十次(ささがわいそじ)

山形徳洲会病院 院長

2021年(令和3年)12月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1316

コロナ禍の外出抑制によりADL低下し
通院困難となった透析患者さんの紹介増
通常施設で対応難しい方をひとりでも多く助ける

山形県での新型コロナ感染者数の累計は現在まで約3600人です。日本全体の感染者数は約172万人であり、県の人口が全国の約1%であることを考えると、きわめて少ないことがわかります。過疎のため密になる環境が少ないこともありますが、慎重で忍耐強い県民性により、手洗いやマスク着用が順守され、感染拡大を防いでいるのではないかと推測できます。しかし当院では4月初旬、院内クラスターを経験しました。家庭内感染した通所リハビリテーション(通リハ)利用者さんがもち込んだものでした。他県のクラスターと比べ小規模でしたが、連日メディアに取り上げられ職員は肩身の狭い思いをしました。通リハ利用者さん、および関連部署の職員にPCR検査を行い、利用者さん10人、職員2人が陽性判定でした。感染者の通リハでの行動パターンを検討した結果、11人が入浴介助時の感染と考えられました。複数同時の入浴介助と浴室での不十分な換気が原因と推測され、その後、他所の通リハでも同様の事例が続き、山形市保健所から市内の通リハでの入浴サービスの一時利用中止が通知されました。

当院では幸いにも通リハと外来患者さんの出入り口が別々で、外来・入院患者さんへの感染は認めませんでした。しかし、通リハ職員と病院職員の更衣室が共通だったため、大規模PCR検査の実施や外来診療の停止を要請されました。感染対策としては利用者数の制限、ひとりずつの入浴介助、浴室換気の整備、担当職員更衣室の新設を行いました。通リハの再開まで1カ月以上要し、利用者さんにご迷惑をおかけしましたが、その後は感染者が出ておりません。院内クラスターにより、職員全員が感染予防に対する意識を高めることになりました。

新型コロナで病院の経営状態も変わりました。不要不急の受診抑制から外来・入院患者数が減少していますが、コロナ以前の状況に戻ることはないと考えられます。当院でコロナ禍のなか唯一増加したのは末期腎不全で、透析登録患者数は250人に迫っています。コロナ以前から医療依存度が高く、介護施設や家庭で受け入れてもらえない維持透析患者さんに積極的に対応していましたが、コロナ禍での外出抑制によりADL(日常生活動作)が低下し、通院困難となった患者さんの紹介が増えたことによります。透析患者さんの高齢化は今後も進み、認知症など他疾患との合併も多くなることから、通常の透析施設では受け入れ困難な症例の増加が予想されます。このような患者さんをひとりでも多く助けることが当院の使命と考えています。

整形外科領域の再生医療提供 自然治癒システムを積極活用

当院の整形外科では自然治癒システムを活用した再生医療を積極的に行っています。2018年に腱(けん)や靱帯(じんたい)の損傷・炎症に対するPRP(多血小板血漿(けっしょう))療法、19年に変形性膝関節症など関節炎に対するAPS(自己タンパク質溶液)療法を実施。今年7月からはPFC-FD(血小板由来因子濃縮物―フリーズドライ化)療法も開始しました。適応範囲は膝以外の肩・ひじ・股関節や靱帯損傷など広く、長期保存も可能です。調整過程で白血球を除去するため、従来の再生医療よりも注射後の疼痛抑制が期待されています。

医師の就労環境改善に大きな役割を担う診療看護師が活躍

今年3月、当院看護師が診療看護師(NP)の資格を取得しました。NPは5年以上の看護経験を経て、日本NP教育大学院協議会が認定した大学院修士課程を修了し、同協議会の認定試験に合格すれば取得できます。

大学院では2年間、臨床医から医学教育を受け、21区分・38特定行為の研修もすべて修了します。フィジカルアセスメント、臨床薬理、病態疾病論に関する教育を基盤とし、的確な臨床推論に基づく医療的介入ができる技能を修得できます。当院では全部署の看護師が医師に直接聞けなかったことを、NPを介し、すぐに教えてもらえ、医師に要件を伝える際にも間に入ってもらうようになり、その結果、患者さんへの迅速な対応が可能となりました。医師もNPの視点が医師に近いため、治療方針や病態について議論するようになりました。当院のように慢性的に医師不足の現場では、NPの存在が職場環境改善に大きな役割を担うと考えています。

冬には新型コロナ第6波の到来が予想されます。備えを万全にし、皆で頑張りましょう。

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