徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)5月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1286 一面

湘南鎌倉病院 岸和田病院
狭窄病変の再治療頻度を低減
血液透析患者さん用薬剤コーティングバルーン開始

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と岸和田徳洲会病院(大阪府)は、血液透析患者さん向け薬剤コーティングバルーンによる血管内治療を開始した。これはシャント(血液透析に十分な血流量を得るため動脈と吻合(ふんごう)した静脈)に発生した狭窄(きょうさく)病変の治療に用いるバルーン(風船状にふくらむ医療器具)で、表面に薬剤を塗布。再狭窄を抑制し再治療の頻度を低減することが期待されている。2020年9月に薬事承認、21年2月に保険適用となった国内初の新しい医療器具で、全国でも限られた施設でのみ実施。保険適用後、先駆けて湘南鎌倉病院が3月1日に国内1例目、岸和田病院が同3日に国内2例目の治療を行った。

徳洲会が国内1例目と2例目施行

「再治療までの期間を延ばせるのは朗報」と磯貝部長 「同じシャントを長く使い続けることが大切」と藤原部長

湘南鎌倉病院と岸和田病院は薬剤コーティングバルーンの治験段階から参画。国際共同治験として実施、国内では6施設が参加した。

血液透析を続けていると、シャントが狭窄するトラブルが発生することも珍しくない。シャントの狭窄は血流不足を招き、透析不足の原因になり得る。狭窄が発生した場合、一般的に行う治療はPTA(経皮的血管形成術)だ。これは、血管内にバルーンカテーテルを挿入して、狭窄した部位をバルーンの圧力で内側から拡張し、血管を広げる治療法。

だが、一度狭窄すると再狭窄が起こりやすくなり、繰り返しPTA治療を受けるケースが少なくない。透析患者さんの身体的負担をできるだけ軽減するには、シャントを再建(新たにシャントを作成)するのではなく、できる限り長期間、同じシャントを使い続けることが重要だ。そのため、再狭窄までの期間を延ばすことができるデバイスが待ち望まれていた。

薬剤コーティングバルーンには、パクリタキセルという薬剤を塗布している。新生内膜の増殖を抑える効果があり、これにより再狭窄の発生を抑制する。長さ100㎜までの狭窄病変が治療対象だ。これまで冠動脈や下肢動脈の再狭窄を抑制する薬剤コーティングバルーンはあったが、シャントを対象とした製品は国内初。

薬剤を塗布したバルーンを狭窄部位で拡張(画像提供:日本メドトロニック)

手技自体は通常のPTAと同様に、X線透視下でカテーテルによりバルーンを病変部位に送り込む。バルーンを3分間拡張し、薬剤を病変部位に移行、その後バルーンを抜去する。

国際共同治験の結果、標準的なPTAの治療を受けた患者さんと比べ、薬剤コーティングバルーンの治療を受けた患者さんは、その後のシャント開存率が高く、再治療の回数が少なくすむというエビデンス(科学的根拠)を得た。

一次開存率82%超と高率

透視画像を見ながら狙った部位でバルーンを拡張(写真は湘南鎌倉病院)

治療後6カ月までの標的病変の一次開存率は、通常のPTAが59・5%だったのに対し、薬剤コーティングバルーンは82・2%と高率を保った。

湘南鎌倉病院の磯貝尚子・外科部長兼シャントケアセンター長は「狭窄部位を広げるために定期的にPTA治療を受けている患者さんは多く、1~2カ月と短期間で再び狭窄が発生してしまう患者さんもおられます。QOL(生活の質)に大きくかかわりますので、そのような患者さんにとって再治療までの期間を延ばせる薬剤コーティングバルーンは朗報です」とアピール。

1例目の症例は日頃、かかりつけの透析クリニックに通院する50代の男性患者さん。昨年7月の透析導入から3カ月後の10月に狭窄が生じ、PTAを行っていた。「PTAの回数を減らし、今、使っているシャントを長持ちさせたい」という患者さんの希望をふまえて薬剤コーティングバルーンによる治療を実施した。

岸和田病院の藤原昌彦・循環器内科部長は「薬剤コーティングバルーンを用いることによって、明らかに再治療までの期間は延びています。狭窄は、よくあるシャントトラブルのひとつで、3カ月おきにPTAを受ける患者さんも少なくありません。治療の間隔を半年、1年と延ばすことができれば、そのぶん患者さんの負担軽減になります」と期待を寄せる。

「日本は腎移植を受ける機会が少ないため、同じシャントをできるだけ長く使い続けていくことが大切です。それだけに血液透析患者さん向けの薬剤コーティングバルーンが登場した意義は大きい」と強調する。

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