徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)5月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1236 一面

MRガイド下集束超音波治療
「MRgFUS」50例を達成
湘南藤沢病院 本態性振戦などに低侵襲で施行

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)はMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の実績が50例に達した。内訳は、臨床研究として薬剤抵抗性の本態性振戦(自分の意思と関係なく手や首が震える疾患)10例、振戦優位型のパーキンソン病11例、ジスキネジア(不随意運動の一種)を呈するパーキンソン病3例、さらに自由診療または保険診療で薬剤抵抗性の本態性振戦26例。同院は4月21日に50例目を実施した。

治療時間の大幅短縮実現

伊藤部長(後列左から4人目)を中心に治療開始当初のスタッフ伊藤部長(後列左から4人目)を中心に治療開始当初のスタッフ

本態性振戦は薬物療法が基本だが、治療効果を得られないことも多く、こうした難治例に対し、外科手術を行うことがある。しかし、頭蓋骨に小さい孔を開けること( 穿頭(せんとう))や電極を脳に穿刺(せんし)・留置することが必要で、心理的な抵抗感や手術に関連する合併症など問題もある。

一方、MRgFUSはMRI(磁気共鳴画像診断)で標的部位の位置と温度をリアルタイムにモニタリングしながら、約900~1000本の超音波を一点に集中させ、標的部位を熱凝固する治療法で、外科的侵襲がほとんどないのがメリット。治療効果や有害事象を治療中に確認しながら進められるため、治療の確実性・安全性が高く、早期の社会復帰が可能になる。

湘南藤沢病院は同治療装置を徳洲会グループで初めて導入、将来的な保険適用をにらみ2017年3月から3種の臨床研究を開始した。このうち薬剤抵抗性の本態性振戦では、予定していた10例の臨床研究を同年8月に終了。18年6月には自由診療を開始し、さらに19年6月に保険収載され、翌月から保険診療を開始した。

同治療の50例達成にあたり、全体の指揮を執る伊藤恒・神経内科部長は「単純に多数例の治療を行ったからいいというわけでもなく、症例数にこだわる気持ちはまったくありません。一例ずつ安全に治療を行い、治療効果に満足していただくことが何より大切だと思います」と話す。

また、同治療には多職種がかかわるが、「50例を重ねるなかで、それぞれのスタッフが習熟してきたことにより、開始当初に比べ治療時間が約半分になっています」という。自由診療を始めた時は3泊4日の入院だったが、今では2泊3日で退院する患者さんも増加。

覚醒下で治療を行うため効果を随時確認できる覚醒下で治療を行うため効果を随時確認できる

治療スタッフのひとりである辻野陽子看護師は「治療を始めた当初は流れがわからず、患者さんからの訴えが出てから、あわてて対応する感じでした。今では何が起きるかを予測して、あらかじめ準備するとともに、治療中もこまめに患者さんに声をかけ『寒い』や『気持ち悪い』など訴えに対し、すぐに対応できるようになりました。患者さんが少しでも苦痛を感じないようにケアしたいと思います」と意気込む。

辻野看護師は治療に際し患者さんの気持ちへの配慮も忘れない。「手が震えるところをまわりの人に見られたくない患者さんも多く、食事中はベッドのカーテンを引いています。また、治療は髪の毛をすべてそって行うので、その姿をほかの患者さんに見られないように、病棟から治療を行うMR室まで、職員専用の通路を使うようにしています」と説明。

MRIの操作を行う山﨑愉紀・診療放射線技師は「MRgFUSは治療効果がすぐに出ます。治療直後に症状が改善した患者さんが喜んでいる姿を見たのは、初めての経験でした。とても嬉しく、モチベーションも上がりました」と笑顔。

治療は次のステップへ

患者さんの震えの様子を見る伊藤部長(中央)患者さんの震えの様子を見る伊藤部長(中央)
MRI 画像を確認し治療ターゲットを同定するMRI 画像を確認し治療ターゲットを同定する

MRgFUSの臨床研究ではパーキンソン病も対象としていた。同病に関し1月15日、視床を標的とする振戦症状の軽減と、淡蒼球(たんそうきゅう)を標的とする運動症状の軽減に対する治療が薬事承認され、同院は近い将来の保険収載を見据え準備を進めている。また、学会ガイドラインで、本態性振戦の対側治療が条件付き(前回の治療から6カ月以上経過など)で4月1日に解禁され、同院でも5月に1例目を実施した。

同治療が次のステップに進むにあたり、治療チームのメンバーも見直した。振戦優位型のパーキンソン病では、運動緩慢や歩行障害が治療後に一過性に悪化することがあるため理学療法士を、対側治療では、仮性球麻痺(かせいきゅうまひ)による嚥下(えんげ)障害や発声障害が生じる可能性があるため言語聴覚士を、それぞれチームに加えた。

伊藤部長は「有害事象が生じてから、あわてるようではいけません。生じ得る有害事象を念頭に置いて治療前から十分に評価を行い、異常の早期発見・早期対応につなげることが重要です」と説明するとともに、「私たちが経験したことを学会や論文で発表することが、周囲に対する広報活動、また後に続く患者さんと医療関係者に対する知識の提供につながります」と強調。

「今後も一例一例をしっかり振り返りながら、丁寧に対応していきます」と意気軒高だ。

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