2020年(令和2年)1月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1218 一面
町の医介連携システム構築へ
帯広病院 SNS活用し情報共有
帯広徳洲会病院(北海道)の棟方隆院長は、地元の音更町や地域の医療・介護職と協力し、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して高齢の患者さんや利用者さんの情報共有システムの構築を進めている。町内の医療・介護の円滑な連携が目的で、棟方院長が会長を務める音更町医療・介護連携推進会議で協議。地域の方への啓発活動などをふまえ、今春のスタートを目指す。町内にある約100の事業所すべてがシステムに加入する意向で、地域包括ケアシステム確立の一助にしたい考えだ。
行政や医療・介護職と協力
「地域のためにもシステムをうまく活用したい」と棟方院長
棟方院長らが導入を検討しているシステムは、医療・介護の専門職が患者さんや利用者さんの情報をリアルタイムで共有するためのツール。SNSを活用し、病院や介護施設、在宅など、それぞれの場所で対応した医療・介護職がスマートフォンやタブレット端末などに患者さんや利用者さんの情報を入力すると、かかわっている各職種が端末上で閲覧できる。
機能などシステムの詳細は確定していないが、棟方院長は「無料通信アプリ『LINE』のようなイメージを描いています」と説明する。「文字で会話をしていくような形で情報共有がリアルタイムに図れるようにしたいと考えています。また、閲覧した人がわかりやすいように画像や文書データの添付、脈拍や体温などバイタルサインの経時的な表示機能などもあると良いですね」。
地域の方に向けた説明会。次回は2月を予定
情報管理にも万全を期す。システムそのもののセキュリティー強化はもちろん、情報のやり取りができるメンバーを限定。患者さんや利用者さんごとにネットワークを築き、かかわりのない専門職は情報の入力・閲覧ができない。一般的な予防ではなく、急変への備えを重視していることなどから、対象は高齢者。事前に対象者もしくはその家族の同意を得たうえで同システムでの情報共有を行う。
費用は北海道の補助金を活用。昨年12月下旬に北海道への事業申請が採択され、今後、システムの内容や運用のルールを決定し今春からの稼働を目指す。地域の方への啓発活動は始めており、昨年10月に音更町医療・介護連携推進会議主催で1回目の説明会を開催。棟方院長がシステム導入の構想を示すとともに、「在宅サービスが浸透していない」(棟方院長)ことから、地域で訪問診療や訪問看護を実践している医師・看護師を招き、講演を行った。
在宅は多職種連携不可欠
“連携の円滑化と業務の効率化”に期待を寄せる堀田課長
棟方院長が同システムの導入を進めた理由は、地域に対する危機感。高齢化が進むなか、介護施設の増加は見込めず、急性期病院は自院のみ。地域の方が最期まで地元で安心して暮らすには在宅生活が欠かせず、「そのためには多職種が連携し、患者さんや利用者さんの意思を尊重しながら、最適な医療・介護サービスを切れ目なく提供する仕組みづくり、まさに国が進める地域包括ケアシステムの構築が急務と考えました」と振り返る。
なかでも医療職と介護職の連携が最重要課題と考えた棟方院長は、音更町保健福祉部を訪問。相談した結果、一昨年6月に100人を超える町内の医療・介護専門職が集まり、音更町医療・介護連携推進会議が発足、円滑な医介連携に向け協議を開始した。
「地域包括ケアシステムは、時に植木鉢に例えられ、今後、重要な医療・看護、介護・リハビリ、保健・福祉を“葉”とし、育てるには“土”である介護予防や生活支援、“鉢”である住まいと住まい方、“皿”である本人の意思や家族も含めた心構えが重要としています。その育った葉同士の連携が大切だと思っています」(棟方院長)
音更町と同じ十勝管内の更別村が、多職種連携システムを運用していたことを知り、棟方院長は音更町でのシステム活用を同会議で議論。賛同が得られたことから導入を決定した。すでに町内にある約100の事業所すべてが、システムに加入する意向を示しており、関係者が寄せる期待は大きい。音更町保健福祉部地域包括支援センター高齢者福祉課の堀田昇課長も「今までは各専門職に逐一、電話などで相談・報告していました。今後はネットワークで連携の円滑化、業務の効率化が進めば良いと思います」と胸をふくらませる。
堀田課長は、さらに北海道が描いている地域医療構想に言及。団塊の世代が75歳になる25年に北海道は「病院以外」で亡くなる方の割合を15%に設定しているとし、「直近のデータ(17年)では12・2%。介護の利用者さんの半数以上が病院以外での最期を希望しているデータもあり、導入するシステムを駆使して、できるだけ沿えるように努めていきます」。
ただし、棟方院長は「システムはツールのひとつ」と強調。「基本は顔の見える関係」と、今後も対面して信頼関係を築く大切さを訴えていた。