徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)9月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1200 一面・二面

国際医療協力特集
社徳 第7回アフリカ開発会議に参加
腎移植プロジェクトなど報告

徳洲会グループの本部機能をもつ一般社団法人徳洲会は8月27日、神奈川県のパシフィコ横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7、8月28〜30日)の公式サイドイベントとして、シンポジウム「徳洲会 アフリカ16カ国の透析センター設立支援とタンザニアでの腎移植プロジェクト」を開いた。会場には200人超が詰めかけ、熱気に包まれていた。日本政府はアフリカに対し今後3年で200億ドル(約2兆1000億円)の民間投資と、日本とアフリカとの橋渡し役となる3000人の人材育成を表明。さらに保健医療サービスの整備推進も打ち出した。

「いつでも・どこでも・誰でもが最善の医療を」

徳洲会グループの国際医療支援地図 徳洲会グループの国際医療支援地図

TICADは1993年に日本が立ち上げたアフリカ開発に関する首脳級の国際会議で、現在は3年ごとに開催。参加者はアフリカ諸国の関係者や国際機関、民間企業、各種団体など多岐にわたり、環境や食料、医療、人材育成、防災など多彩なテーマのサイドイベント(セミナー・シンポジウム)も多数催している。

徳洲会グループはアフリカ諸国への医療支援活動を推進しており、着実に実績を重ねてきたことから、今回、シンポジウムを主催する機会を得た。

「生命だけは平等であってほしいという願いが原動力」と鈴木理事長 「生命だけは平等であってほしいという願いが原動力」と鈴木理事長

シンポジウムの第1部では、一般社団法人徳洲会(社徳)の鈴木隆夫理事長が「徳洲会 海外支援の歴史と方針」と題し講演。徳洲会は2003年以降、世界42カ国と医療協力に関する覚書(MOU)を締結し、透析機器の寄贈や透析センターの開設支援、病院開設支援などに取り組んでいる。

鈴木理事長は「徳洲会グループは、〝生命だけは平等だ〟という理念を掲げ、『いつでも、どこでも、誰でもが、最善の医療を受けられる社会』の実現を目指しています。そして、生命だけは平等であってほしいという願いが、人種や国境を超えた私たちの活動の大きな原動力となっているのです」と力を込めた。

会場には200人超(座席数200席)が来場し大盛況 会場には200人超(座席数200席)が来場し大盛況

次に徳洲会が国際医療支援を行う際の基本方針に触れ、「患者中心の医療を実践」、「魚を与えるのではなく、一緒に釣る方法を協力して研究」、「現地国による経営・運営が基本」、「利益は日本にもち帰らず、現地国内で再投資」などを挙げた。

とりわけ精力的に取り組んできたのが透析センターの開設支援。これまで世界23カ国に計346台の透析機器を寄贈、技術指導や運営ノウハウの提供などを行い、透析センターの開設をサポートした。18年3月には東京女子医科大学と共同し、タンザニアで同国初の現地医療スタッフによる腎移植も支援した。

このほか、ブルガリアやブラジルでの病院開設支援の実績や、現在、ジブチでの病院開設に向け検討を進めていることを紹介。さらに、徳洲会職員を中心に組織するNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)による国内外での災害医療支援活動や、世界水準の医療提供のためJCI(国際的な医療機能評価)取得を推進していること、米国の週刊誌『Newsweek』が選ぶ世界のベストホスピタル2019のひとつとして、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)が選ばれたことなどを紹介した。

「各国事情を理解したうえで、妥協せずに支援しています」と小林理事 「各国事情を理解したうえで、妥協せずに支援しています」と小林理事

続いて、社徳の小林修三理事(湘南鎌倉病院院長代行)が「アフリカにおける透析医療と腎移植治療まで」と題し講演。国際医療支援のスタンスとして「さまざまな国を支援してきましたが、つねにふたつのことを考えています。ひとつはその国の事情、周辺の環境や状況を理解すること。もうひとつは日本の透析医学をもとに支援するからには、妥協せず、レベルを落とさないようにすることです」と明かした。

血液浄化療法指導は08年に開始。日本で海外医療スタッフを指導する場合、医師や看護師などで編成したチームが、1カ月ほど日本に滞在し、現地に即した状況で研修を行う。また現在、アフリカ16カ国に171台の透析機器を寄贈し、現地での支援も実施。最初はモザンビークで、その時の様子や1例目の患者さんへの対応などを詳述した。

徳洲会によるアフリカでの透析センター開設支援 徳洲会によるアフリカでの透析センター開設支援

課題として、動脈と静脈をつなぎ合わせるシャント手術ができる施設や医師が少ないなどバスキュラーアクセス(血液透析を行う際の患者さん側のアクセスルート)関連の問題、水温や水質、水量など水の問題などを挙げ、インフラ整備の重要性を強調した。

次にタンザニアでの現地医療スタッフによる腎移植支援プロジェクトを報告。小林理事は「実施には〝3つの決断〟が必要でした」と述懐。ひとつ目は16年8月に国立ドドマ大学付属ベンジャミン・ムカパ病院を訪問し状況を知った時、ふたつ目は18年1月に実行の最終判断をした時、さらに3つ目は手術日に先行して現地を訪れたスタッフからの報告を受けた時だ。

さまざまな困難を乗り越え、18年3月22日に1例目の腎移植を実施。その後も同年8月に3例、19年3月に3例を実施し、計7例の腎移植が無事終了したことを報告した。

最後に小林理事は「一つひとつ、やるべきことを確実に実施してほしい。『報・連・相(報告・連絡・相談)』を忘れないでほしい。次の段取りを考えながら行動してほしい。この3つを言い続け、彼らは応えてくれました。これからも〝生命だけは平等だ〟の理念に基づいて、医療を継続していただきたいと思います」と願いを込めた。

パネルディスカッション アフリカ支援への思い

(左から)小林理事、鈴木理事長、ムワナタンブウェ担当、二階堂部長、田邉院長、チャンディカ・エグゼクティブディレクター (左から)小林理事、鈴木理事長、ムワナタンブウェ担当、二階堂部長、田邉院長、チャンディカ・エグゼクティブディレクター

第2部はパネルティスカッションを行った。小林理事が座長として進行役を務め、鈴木理事長、ベンジャミン・ムカパ病院(タンザニア)のアルフォンス・チャンディカ・エグゼクティブディレクター、東京女子医科大学病院の田邉一成院長(泌尿器科教授)、ニプロ企画開発技術事業部の二階堂拓部長、社徳のミランガ・ムワナタンブウェ・アフリカ担当がパネラーを務めた。

はじめに小林理事は「一民間団体がアフリカ諸国に対し、多くの支援を行うのは大変な努力が必要だったと思いますが、どのような思いで進めてきたのですか」と鈴木理事長に質問。これに鈴木理事長は「『患者さん』という言葉には国境はありません。小さくても、きっかけをつくることによって、その国が自分たちの力で医療を発展させていく手助けになればという気持ちで取り組んできました」と答えた。

続いて、ムワナタンブウェ・アフリカ担当に意見を求めると、ムワナタンブウェ担当は「簡単なプロジェクトはひとつもありませんでした。しかし、徳洲会の徳田虎雄・前理事長も、鈴木理事長も、困難ななかでも実現を目指す強い姿勢を示していただき、ここまで来ることができました」と胸の内を吐露。

また、小林理事はニプロが海外展開として16カ国、25カ所に透析研修施設をつくっていることを紹介。二階堂部長は「徳洲会の理念に共鳴し、海外に研修施設を整備しています。透析機器を安定して運用していくために、医療技術者の支援を積極的に展開していきます」と説明。ニプロの経営戦略を問われると、「まずは顧客目線があり、その後に利益が付いてくるという考えの下、現場は動いています」と明かした。

田邉院長は、小林理事からのタンザニア腎移植支援プロジェクト協力の謝意を受け、「タンザニアでの手術とはいえ、日本の最高レベルを目指さなければいけないと考えました。私は国内でも、さまざまな病院で指導していますが、今回の経験で多くを学びましたので、今後に生かしていきたいです」。さらに、同プロジェクトが最終段階に入ったことを受け、「もう一度、タンザニアに行く機会があると思いますので、その際に、より集中して指導し、その後もサポートを繰り返しできます」と誓った。

チャンディカ・エグゼクティブディレクターは、同プロジェクトが始まった頃のことを問われ、「私たちの国にとっては新しい技術で、わからないことばかりでしたが、徳洲会の丁寧なサポートにより、腎移植を成功させることができました」と謝辞。「今でも継続的に『魚の釣り方』を教えてもらっています。私たちが日本で訓練を受け、さらにその知識をタンザニアで広められたら良いと思います」と意欲を見せた。

最後に小林理事は「アフリカへの支援は、徳洲会のみならず、日本として何ができるか、何をすべきか考えなければいけません。アフリカは〝巨大市場〟と言いますが、それを担うのは人であり、人の健康を支える医療支援が大きな意味をもつでしょう」とまとめ、会場は大きな拍手に包まれた。

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