徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)7月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1140 四面

リハビリ
ロボットスーツ「HAL」導入
湘南藤沢徳洲会病院
神経難病8疾患が対象

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)はロボットスーツ「HAL(ハル) (Hybrid Assistive Limb)医療用下肢タイプ」を導入、4月に1例目の患者さんに対しHALを用いたリハビリテーション入院を実施した。HALは体に取り付けたセンサーが装着者の動こうとする「意思」を皮膚表面に流れる微弱な生体電位信号として感知し、装着者の動作をアシストする。徳洲会では同院のほかに和泉市立総合医療センター(大阪府)と南部徳洲会病院(沖縄県)でも導入。

専用機器で体を持ち上げHALを装着 専用機器で体を持ち上げHALを装着

ロボットスーツHALは2016年1月に保険適用となり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄(せきずい)性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トゥース病、封入体筋炎、遠位型ミオパチー、筋ジストロフィー、先天性ミオパチーの8疾患が対象。

人が身体を動かそうとする時、脳は神経をとおして動作に関する信号を筋肉に送り出す。健常者の体では、この信号を受け取ることにより、動作に必要な分の力で筋肉を動かすことができる。HALは独自に開発したセンサーを皮膚に貼り付けるだけで、皮膚表面から漏れ出る微弱な信号(生体電位信号)を読み取ることが可能。これにより装着者がどのような動作をしたいと考えているのか認識する。

HALを用いたリハビリは理学療法士が2人体制で実施 HALを用いたリハビリは理学療法士が2人体制で実施

さらにHALは、認識した動作に合わせてパワーユニットをコントロール。これにより装着者の意思に沿った動きをアシストしたり、ふだんより大きな力を出したりすることが可能になる。このコントロールには、生体電位信号を検出して装着者の思いどおりに動作する「サイバニック随意制御システム」と、生体電位信号を検出できなくても動作を実現する「サイバニック自律制御システム」のふたつを混在させることで、装着者の動きをアシストする先進技術を使用している。

また、人の体が動いた時、脳は実際に体がどういう信号でどのように動作したか確認を行う。たとえばHALを用いて「歩く」動作をアシストした時、「歩けた」という感覚のフィードバックが脳に送られる。これにより脳は「歩く」ために必要な信号の出し方を少しずつ学習していく。こうしたメカニズムも、足の不自由な方がHALを装着しなくても歩くことができるようになるための一歩につながる。

患者さんの動作に合わせてHALがサポート 患者さんの動作に合わせてHALがサポート

湘南藤沢病院の亀井徹正総長は昨年1月、都内でHAL研究会に出席。そこで開発元から全国の徳洲会病院での導入に関する提案があり、亀井総長は、その可能性を探った。そこで神経内科常勤医師がいるなど条件を挙げて複数の病院をピックアップ、まずは湘南藤沢病院と南部病院が導入することになった。同時期、新築移転したばかりの和泉市立総合医療センターでも近畿大学医学部との連携によりHALの導入を決めた。

導入にあたり亀井総長はHALを使用している民間病院を見学。また、湘南藤沢病院の福武滋・後期研修医と堀越一孝・理学療法士、角田賢史・理学療法士は、メーカー提携の研修病院で3日間の技術講習を受けた。

亀井総長は「HALもそうですが、今後はAI(人工知能)など従来と違う枠組みの技術が、どんどん医療に導入されてくると思います。まさに時代が変わる入口に立っている期待感があります」と関心を寄せる一方、「HALは、まだ新しい技術ですから導入には慎重を期す必要があります。ただし、保険適用されている8疾患以外にも、脳卒中や脊髄損傷の患者さんへの使用に関する臨床研究も進んでいると聞いていますので、その結果も参考にしていきたいと思います」。

運動量が大幅にアップ 生活改善にもつながる

リハビリ終了後に患者さんに具合を尋ねる堀越・理学療法士 リハビリ終了後に患者さんに具合を尋ねる堀越・理学療法士

「自分の力では歩けなくなっていたのに、こんなにたくさん歩けるなんて嬉しいです」

取材当日、ALSが進行し歩行が困難になっていた患者さんが、驚きの声を上げた。これまではリハビリ平行棒を使い1往復するのがやっとだったのが、HALのアシストによりリハビリ室内を2周できるまでに運動量が増えた。

ALSは脳や脊髄からの命令を筋肉に伝える運動神経が侵され、筋肉が萎縮していく進行性の難病。治療の主な目的は、使わないために落ちる筋力を維持することだ。患者さんは、これまで外来でリハビリを続けていたが、今回、HALを用いたリハビリ入院を行った。

入院期間は約2週間で、毎日1時間から1時間半ほどの時間をかけHALを用いた歩行訓練を行う。患者さんは病室で生体電位信号を感知するセンサーを皮膚表面(大腿(だいたい)部前面・後面、鼠径(そけい)部、臀(でん)部)に貼り付けたうえで、リハビリ室に入室する。ベッドに腰かけ、専用機器で体を持ち上げHALを装着後、歩行訓練を実施。この間、理学療法士2人が付きっきりで対応する。同院では月に2人ほどの患者さんを受け入れる予定だ。

堀越・理学療法士は「患者さんには、歩行が可能になることでリハビリを頑張る気力が湧いてくると言っていただきました。また、体幹が鍛えられ、車いすに座る姿勢が楽になり、ご飯も食べやすくなったそうです」と効果を実感。「難病の患者さんですが、生活の改善につながるのであれば、積極的に使っていけたら良いと思います」と意欲を見せる。

亀井総長は「まだ症例数は少ないですが、患者さんには心理的な面も含め良い影響を与えているようです。また、新しい技術だからこそ、当初は想定していないような効果が得られることもあります。これは症例を重ねないとわからないことです」と課題を提示。さらに、「難病の患者さんには、希望をつなぐ、ひとつの手段になると思いますので、慎重に検討していきたいです」と期待を寄せている。

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