2018年(平成30年)7月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1140 一面
徳洲会グループの社会福祉法人
地域で公益的な取り組み実践
改正社福法により責任明確化
社会福祉法人制度の大幅な見直しが約60年ぶりに行われ、昨年4月から社会福祉法人(社福)の責務として「地域における公益的な取り組み」が盛り込まれた。これは要介護の方や障がいをもつ方などに従来から提供しているサービスとは別に、日常生活や社会生活上の支援を必要とする人に無料もしくは低額な料金で福祉サービスの提供を求めるもの。地域住民が参加するような取り組みでも良く、地域貢献を通じ公益性の高い法人としての役割を明確にするのが目的だ。徳洲会グループの社福でも取り組む法人が増えており、その一部を紹介する。
問われる社福のあり方
徳洲会グループの社会福祉法人 |
社会福祉法人函館共愛会(近江茂樹理事長、北海道) |
社会福祉法人彩世会(江端英隆理事長、北海道) |
社会福祉法人湘南愛心会(塩野正喜理事長、神奈川県) |
社会福祉法人茅徳会(塚本玲三理事長、神奈川県) |
社会福祉法人恵心会(相澤信行理事長、静岡県) |
社会福祉法人京都愛心会(増田道彦理事長、京都府) |
社会福祉法人大阪愛心会(酒井敬理事長、大阪府) |
社会福祉法人徳和会(佐藤耕造理事長、福岡県) |
社会福祉法人おきなか福祉会(安富祖久明理事長、沖縄県) |
地域での公益的な取り組みは、2016年3月に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」による。背景には社福を取り巻く環境の変化がある。
社福は社会福祉法人制度が制定された1951年以降、地域の福祉を担う公的な法人として発展してきたが、2000年に介護保険制度がスタートし、介護サービスの利用が措置から選択・契約に転換。
ライフレスキュー事業で相談者に対応する小山田次長(左)
民間企業やNPO法人の参入でサービスの提供事業者や種類も増えるなど、日本の介護サービス全体が発展していくなか、非営利組織ながら一部の社福で多額の内部留保が判明したり、介護サービスを提供する民間企業より税制面で優遇されていたりすることなどから、制度の見直しを求める声が次第に高まり、一昨年、法律の大幅な改正に至った。
同改正は社会福祉法人制度改革と福祉人材の確保の二本柱。このうち「地域における公益的な取り組み」は、社会福祉法人制度改革のひとつとして盛り込まれた。近年、地域の福祉サービスは人口構造の変化などで多様化・複雑化し、きめ細かい対応が求められている。こうしたなか、従来の制度や民間企業では対応できないケースに、社福が応えることが期待されている。
「受診者の増加に貢献できたことは素直に嬉しい」と木口施設長
改正社会福祉法による
社会福祉法人制度改革
- 経営組織のガバナンスの強化
- 事業運営の透明性の向上
- 財務規律の強化(適正かつ公正な支出管理・いわゆる内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業等への計画的な再投資)
- 地域における公益的な取組を実施する責務
社会福祉事業および公益事業を行うにあたり、無料または低額な料金で福祉サービスを提供することを責務として規定
- 行政の関与のあり方
地域における公益的な取り組みは、従前から行っている介護保険事業などは含まれない。地域ニーズを把握し、関係機関と連携しながら創意工夫で行うべきとされているが、①社会福祉事業または公益事業を行うにあたって提供される福祉サービス、②対象者が日常生活または社会生活上の支援を必要とする者、③無料または低額な料金で提供――の3項目をすべて満たさなければならない。
直接的なサービスだけでなく、地域住民が参加するような取り組みも可能だ。社会福祉充実残額(純資産の額から事業の継続に必要な財産額を除いた額)の有無にかかわらず、すべての社福に求められているが、とくに実践しない場合への罰則はない。
経済的支援や教育など
健康相談に対応する澤田法子保健師
徳洲会グループでも公益的な取り組みを実践している社福が少しずつ増えている。徳和会は今年度から「ふくおかライフレスキュー事業」に参加。同事業は福岡県社会福祉法人経営者協議会が取り組んでいる生計困難者への相談支援で、県内を7地区に分け、賛同した社福が連携を図りながら行っている。
具体的にはソーシャルワーカーなどの専門職を相談支援の担い手(サポーター)として各施設に配置し、ネットワークを生かしながら制度のはざまで困っている方や生活困窮者などを支援。対象は子どもから高齢者までと広く、相談内容によっては経済的援助にも対応する。
徳和会の特別養護老人ホーム(特養)花の季苑の小山田望・地域貢献事業部次長は「話し合うだけでなく、実際に自宅を訪問し、アセスメント(評価)することもあります。経済的援助は10万円までで、生活を軌道に乗せるためのもの。もちろん既存の制度との整合性なども考慮します。当法人に3人のサポーターがおり、昨年は5件行いました」と説明する。
鎌倉市が作成した冊子には、地域住民が参加可能なイベントや地域活動・事業などを、どの施設で行っているかがわかりやすく記されている
昨年度は県全体で75件の実績を重ね、DV(家庭内暴力)被害者の救済や経済的に困っている外国籍の方を支援した。このほか、同施設は地域の行事の際に送迎バスを出したり、訪問介護で低額の自費サービス(草むしりや窓拭きなど)などを行ったりしている。
大阪愛心会は地元・八尾市の健診事業に協力。6月24日、特養久宝寺愛の郷の駐車場に検診バス4台分のスペースと、各種相談・検査スペースとして玄関先や施設内のデイサービスルームを提供した。木口良章施設長と山本英代・看護師長、澤田法子保健師もスタッフとして受診者に対応した。「今年はより地域の中心に近い当施設を利用いただいたことで受診者数が増えたようです。地域の役に立てて良かった」と木口施設長。
湘南愛心会は特養逗子杜の郷で社会福祉協議会と連携して地域の中学生に「外から見えない困りごとを抱えた人々について知る」、「自分との相違点・共通点を考える」を目的とした授業を行ったり、特養かまくら愛の郷、介護老人保健施設かまくらでは、施設内の喫茶スペースや講堂を地域に開放したりしている。
また、4月に地元・鎌倉市のなかに「社会貢献委員会」が発足。市内5地区の施設と社会貢献活動の内容をまとめた冊子を作成、同法人も協力した。委員のひとりでもある老健かまくらの横山昭宏事務長は「地域貢献活動は社福の使命。他施設からも学び、実践していくうえで参考にしています」。おきなか福祉会は環境美化活動として、近くを流れる「いひちゃー川」の清掃や、那覇市地域包括支援センターと連携し同市主催の介護予防教室で多目的ホールの提供などを行っている。