徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)6月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1138 四面

読み解く・読み得“
紙上医療講演”⑮
人生の最期を“デザイン”

少し前に「終活」という言葉が注目を集めたように、最近は人生の最期を自ら考える方が増えています。生活そのものをはじめ、葬儀のあり方、相続など、思いを巡らせることは多岐にわたりますが、そのひとつとして医療や介護も重要です。どのタイミングで、どんなことを考えるべきか。3月に厚生労働省が改訂した終末期医療に関する指針などを交え、ポイントを解説します。

四十坊克也・札幌南徳洲会病院院長 四十坊克也・札幌南徳洲会病院院長

かつて日本では、自宅で家族に見守られながら亡くなるケースがほとんどでした。ところが医療機関の増加などを理由に、年々、自宅で亡くなる方の割合が減少。1976年に医療機関で亡くなる方の割合が自宅で亡くなる方の割合を上回り、今や医療機関で亡くなる方は、じつに8割に上ります。

家で家族が代々看取る“死が身近に感じられる時代”から、看取りの場が生活から離れ、寿命の伸長や核家族化の進行なども相まって、現在は都市部をはじめ“死がイメージしづらい時代”に変わったように思います。

確かに医療の進歩などで健康寿命が伸び、人工呼吸器や経管栄養によって延命が可能になりました。しかし、人はいつか死を迎えます。最後まで自分らしい人生を送るためにも最期を意識しておくことは大切です。葬儀や相続なども大事ですが、生活を送るうえで欠かせない医療・介護についても考えておくことをお勧めします。

自分の考えを示すツールには、日本尊厳死協会の「リビング・ウィル」(終末期医療での事前指示書)や、市販されている「エンディングノート」などがあります。

3月にガイドライン改訂

自分の考えを明確にするとともに、周囲の方と話し合い、考えを共有することも大切です。厚生労働省は3月、2007年に取りまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を初めて改訂しました。これは終末期医療の決定プロセスの指針で、病院での延命治療を想定した内容から、新たに在宅医療・介護の現場で活用できるように見直されました。

また、英米諸国を中心に取り組みが進んでいるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の概念が取り入れられました。これは①本人の意思が心身の状態などで変わることを考え、家族など信頼できる人を事前に決め、医療・ケアの方針や生き方などについて日頃から繰り返し話し合うこと、②話し合った内容を文書にまとめておき、本人や家族、医療・ケアチームで共有すること―などプロセスが重要視されています。

家族をはじめ周囲の方は対応に迷ったり、後悔したりします。考えを明確にしておくことは、本人のみならず周囲の方のためにもなります。

周囲と繰り返し話し合う

医療の観点から、話し合ってほしいのは「口から食べられなくなった時」。胃ろうにすれば細胞は元気になり延命はできるものの、食べる楽しみが失われます。もうひとつは「認知症になった時」。理解力や判断力が低下するなかで、どのような生活を送るか。私の経験から、いずれも人生の最期でとても重要なポイントになると感じています。本人の人生観などを含め、元気な時から周囲の人や専門家と繰り返し話し合っておくと良いでしょう。

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