2018年(平成30年)6月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1138 三面
神奈川脳卒中カンファレンス
診療レベルアップへ
湘南鎌倉総合病院で開催
第34回神奈川脳卒中カンファレンスが湘南鎌倉総合病院(神奈川県)で開催された。同院の森貴久・脳卒中センター長兼脳卒中診療科部長が当番世話人を務めた。同院での開催は4回目。地域の急性期・回復期病院の脳卒中診療のレベルアップを図ると同時に、連携を深めるのが狙い。地域の医療機関から多職種約110人が参集し会場は熱気に包まれていた。
「脳卒中診療で重要なのは急性期と回復期病院が治療方針を共有し共通目標を達成すること」と森センター長
冒頭、森センター長は「脳卒中診療で重要なのは、地域で医療の標準化を進め、急性期病院と回復期病院が一貫した考え方に立ち治療を行うことです。今回は呼吸器疾患と血糖管理の講演もあります。お互いに理解を深め、レベルアップにつなげていただければと思います」と開会挨拶。
カンファレンスでは急性期病院で治療後に回復期病院に転院した症例について、双方の立場から診療方針や治療経過などを発表。各病院の医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、MSW(医療ソーシャルワーカー)などが担当分野ごとに説明した。
1症例目は湘南鎌倉病院から済生会若草病院に転院した脳梗塞症例。2例目は平塚共済病院から、ふれあい平塚ホスピタルに転院した視床出血症例で、3例目は横浜栄共済病院から鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院に転院した視床出血症例。4例目は西湘病院から鶴巻温泉病院に転院した視床出血症例。5例目は藤沢市民病院から藤沢湘南台病院に転院した心原性脳梗塞栓症例。6例目は湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)から茅ヶ崎新北陵病院に転院した多発性脳梗塞症例だった。
続いて教育講演を行い、湘南鎌倉病院呼吸器内科の杉本栄康部長(現・大和徳洲会病院呼吸器内科部長)が「脳血管疾患にまつわる呼吸器感染症の治療とリハビリ」をテーマに発表。成人肺炎診療ガイドライン2017によると、意識障害や急性脳血管障害、脳梗塞後遺症は嚥下(えんげ)機能低下を招き、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスク因子となる。
湘南鎌倉病院内外から脳卒中診療にかかわる多職種が約110人参加
杉本部長は「誤嚥性肺炎の治療を開始する際には、抗生剤の選択のみならず、呼吸管理・酸素投与、栄養・水分管理、合併症管理に留意しましょう」と呼びかけた。
特別講演は、東大和病院の犬飼浩一・副院長兼糖尿病センター長が「糖尿病患者の臓器保護を見据えた血糖管理はいかにあるべきか」をテーマに、臓器保護に関するSGLT2阻害薬の意義などを発表した。同薬は、尿細管での糖の再吸収にかかわるSGLT2というタンパク質の働きを抑えることにより、血糖値を下げる効果がある。糖尿病合併心不全や同薬の腎保護メカニズムに加え、糖尿病患者の脳卒中リスク管理・再発予防などを解説した。
森センター長は「新たな患者さんをいつもで受け入れ“断らない医療”を実践するには、急性期も回復期も全身管理(治療)の質を高め、平均在院日数を短くする必要があります。そのために、脳卒中診療にかかわる地域の多職種全体のレベルを上げ続けていきましょう」と抱負を語っている。