2018年(平成30年)4月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1127 三面
3月度の徳洲会グループ医療経営戦略セミナーの初日、佐賀県政策部企画課の円城寺雄介・企画担当係長は「最新技術で変える救急医療の未来―救急車iPad からドクターヘリ、ドローン・IoT(モノのインターネット)活用まで―」をテーマに講演を行った。円城寺係長は同県で全国に先駆けて救急車へのタブレット端末(iPad)配備を推進、救急医療の効率化に大きく貢献。また一般社団法人日本血液製剤機構事業戦略部の谷澤正明参事は「平成30年度診療報酬改定の概要~徳洲会病院はいかに対応するか~」と題し講演した。日本の現状などをふまえた俯瞰(ふかん)的な解説から、診療報酬の各項目への対応と具体的な解説までポイントをわかりやすく示した。
円城寺・佐賀県政策部企画課係長
救急医療へ最新技術
ⅰPadからドローンまで
「最新技術をより良い未来のために生かしたい」と円城寺係長
「佐賀県は2011年4月から県内の全救急車にiPad を配備し、“99さがネット”を立ち上げました。救急患者さんの搬送先を円滑に選定するための全国初の取り組みです。専用サイトにアクセスすると、各医療機関の救急受け入れ可能科目や搬送実績がリアルタイムでわかるようになっています」(円城寺係長)
全国平均の救急搬送時間(出動から搬送先への収容に要した時間)が前年から0.7分増の38.1分に延びたのに対し、佐賀県では平均1分短縮(34.3分→33.3分)するなど成果を上げた(11年度データ)。
円城寺係長が健康福祉部医務課に配属となり、政策面で救急医療にかかわるようになったのは10年4月。まず取り組んだのが救急車への同乗だった。現場の課題を知るためだ。救急隊にひと晩同行し救急搬送の現場を体験してわかったのは「医療機関の情報がない」ということ。救急隊は何度も電話をかけて受け入れ病院を探す必要があった。
こうした課題の解決策としてたどり着いたのが“99さがネット”だった。救急車へのタブレット配備は、その後、他都道府県にも広がりを見せ、救急車の“たらい回し”の減少につながっている。
同ネットを通じて得た救急データをもとに、佐賀県は14年にドクターヘリを導入。円城寺係長は「データを分析したところ、ドクターヘリ搬送の適応がある事案が年間300件ほどあることがわかりました。そこから、当県では250~300件の潜在需要があると判断し、ドクターヘリ導入を実現。初年度は約370回の出動がありました」と説明する。
救急車へのiPad配備で搬送先の選定が円滑に
また、救急現場では外国人患者さんとのコミュニケーションが課題となっていたことから、iPadに翻訳アプリを入れ、業務改善にひと役買った。
その後も最新技術を活用した医療環境の改善を目指している。たとえば地域の民生委員にタブレット端末を配布し、関係各所から集約した情報に基づき、見守り対象世帯を訪問、認知症の早期発見などに役立てたり、ウェアラブルデバイス(身に着ける電子機器)で健康状態を常時モニタリング・記録し、救急搬送時にデータを活用したりすることを構想。
さらに患者さんの診療情報(PHR= Personal Health Record)の解析を通じて、「急病による救急搬送をゼロにする」大病予測モデルなど、さまざまなアイデアを打ち出している。
現在、実証実験に取り組んでいるのがドローンの救急・災害医療への活用だ。「消防機関と、大型ドローンを持つ建設会社が連携し、地元薬局の協力を得て、中山間地域や災害時に医薬品などを輸送する実験などを行っています」。2016年4月に発災した熊本地震で得た「平時にやっていないことは非常時にはもっとできない」という教訓をふまえ、平時からのドローン活用策としてマラソン会場での要救助者の発見にも役立てている。
最後に、ドローンの活用やデータを使った病気の予測など救急医療・地域医療の分野に関し、徳洲会グループに協働を呼びかけた。
谷澤・日本血液製剤機構参事
立ち位置見極め対応
4月の診療報酬改定を解説
多岐にわたる改定の内容を丁寧に解説する谷澤参事
谷澤参事は冒頭、「前提条件」として日本の現状について解説。平均的なライフサイクルの変化を指摘し、以前と比べ平均寿命の延伸により定年後の人生が長くなるなか、介護に関する環境整備を「最重要課題」に挙げた。疾病構造の変化にも言及し、今後は肺炎(誤嚥(ごえん)性含む)、心疾患、脳血管疾患、骨折など高齢者に多く見られる疾患が増えていく可能性を示唆。
人口・疾病構造が変わるなかで、7対1病床だけでなく、在宅や療養、さらにそれらを結ぶ地域包括ケア病床の重要性を強調した。
そのうえで今回の改定について解説。「前回に比べると目玉が少ない」としながらも、「細かく変わっている項目が多く、積み重なると経営に大きく影響する」と指摘した。具体的に、外来医療では“専門外来と主治医・かかりつけ機能の評価“という従来の方向性に変わりはないとしながらも、選定療養費の徴収を義務付ける対象医療機関の拡大、長期処方による減算率アップなどを挙げ、地域の拠点となる医療機関(特定機能病院や一定規模以上の病院など)の機能強化とともに、地域レベルでの医療連携強化も図る内容になっていることを示した。
入院医療では医療機能に応じた評価として、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の内容が見直されたことを解説。とくに7対1病棟では手術や救急、がんの患者さんなど真に重症の方を診ていることが求められているとし、背景には国の政策があるとした(図)。
該当する患者さんの割合を診療科別に見ると、呼吸器外科、救急医学科、心臓血管外科の順に多いことから、「外科系の患者さんの多寡が7対1に大きく影響します」と説明した。
また、より体制を充実させたスーパーICU(特定集中治療室)の評価が変わった点にも触れ、新たに集中ケア認定看護師の配置が求められることを示唆。前回(16年)の診療報酬改定のなかで、認知症看護認定看護師が評価されたことを振り返り、今後も認定看護師が評価される可能性を指摘した。
このほか、DPC(診断群分類別包括評価)やPCI(経皮的冠動脈形成術)、地域包括ケア病床、医師・看護師の勤務改善、医療安全などを説明した。
これらをふまえ、谷澤参事は急性期医療を提供する医療機関とは、①重症患者さん(救急、がん、難病など)を受け入れ、②高度な集中治療(手術、ICU、新規技術、7対1など)を行い、③安全な療養環境(医療安全、AST=抗菌薬適正使用支援チームなど)で、④早期離床・復帰(リハビリ、入退院支援など)―を目指す医療機関と指摘。
ただし、該当する患者さんは減少することから、「何がしたいかではなく、何が求められているかの視点が重要」と強調。「地域で自院の役割や機能、人口動態、疾病構造の変化、自院と他院との立ち位置をよく見極め、医師、看護師、薬剤師、リハビリセラピスト、管理栄養士、MSW(医療相談員)、事務職員と総力戦で臨むことが大切です」。