徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

直言

Chokugen

橋爪 慶人(はしづめけいと)(東大阪徳洲会病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

橋爪 慶人(はしづめけいと)

東大阪徳洲会病院院長

2018年(平成30年)4月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1127

昨年の虐待疑い児童は6万人超え
医療従事者はもっと通告に協力を
身体的虐待に比べて心理的虐待が急増

3月8日、「全国の警察が2017年に虐待の疑いがあるとして、子ども家庭センター(児童相談所)に通告した18歳未満の子どもは、前年比約20%増の6万5431人に上る」と警察庁から発表されました。

通告件数の増加は、警察庁から全国の警察に対し、子ども家庭センターなど関係機関への通告を徹底するよう通達したことが大きく関与しています。通告内容は、暴言を浴びせられるなど「心理的虐待」が全体の約7割を占め最も多く、うち保護者が子どもの面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV(家庭内暴力)」が6割以上を占めています。

子ども家庭センターの統計でも、16年度の相談対応件数は前年比20%増の12万2578件と急増しています。内訳はこの10年間で大きく変化し、身体的虐待が06年度は41.2%だったのに対し、26.0%に低下、心理的虐待が17.2%から51.5%と増加しています。

これは、近年、面前DVが心理的虐待にあたると明確化され、警察のDVへの介入が強化されたことで、心理的虐待を中心に警察から子ども家庭センターへの通告が増加していることが大きいと思われます。

児童虐待を疑う目をもち 院内での通告体制を整備

03年、私は外陰部に重度の損傷を負った虐待事案を経験しました。当初、犬が原因と説明されていましたが、明らかに創部形状と犬の咬合(こうごう)とでは整合性が取れないことが虐待を強く疑う要因となりました。その後、04年に大阪府児童虐待等危機介入援助チーム委員を引き受けましたが、同様の受傷説明と創部の状況が類似する事例について、子ども家庭センターから鑑定依頼を受けました。そして、通告があった医療機関に医療情報を求めましたが、その時の主治医に頑(かたく)なに拒否され、結果、介入できませんでした。

このように医療従事者から協力を得られないことは、今でも少なくないと思われます。これは通告件数にも現れています。全体の事案に対する警察からの通告件数の割合が、12年度には24%と初めて20%を超え、14年度には33%、16年度には45%になりました。件数は17年度には5万4813件と、11年度に比べ約5倍になっています。一方、医療機関からの17年度の通告件数は3109件で、11年度から1.3倍しか増加していません。

私はこれまで2度、この「直言」で児童虐待について書かせていただきました。医療機関の取り組みについては『徳洲新聞』1054号で、医師や看護師など医療従事者は、児童虐待を疑う目をもち、疑いがあれば、通告できるよう院内の体制を整備することをお願いしてきました。

また毎年5月、新入研修医合同オリエンテーションで、虐待を疑うポイントについて講義をしています。それでも、病院の現場の医師や看護師らからは「虐待を疑う目」について、戸惑(とまど)いや困惑を聞くことが少なくありません。呼んでいただければ、どこにでも行きますので、ぜひとも虐待を疑うポイントについて、悩める多くのスタッフに話をさせてください。

法医学医だけでなく虐待事案 臨床医ももっとかかわるべき

私は大阪府から児童虐待等危機介入援助チーム委員を委嘱され14年目になります。その間、大阪府下6カ所の子ども家庭センターの事案について対応してきましたが、今年から政令指定都市である堺市からも委嘱を受けました。

虐待を疑う創傷の鑑定は法医学医によるものも、多くなっています。しかし、変死・異状死体に対する法医学的な検査を実施するための人員・設備が、圧倒的に不足している日本では、虐待事案に対する十分な体制を法医学界だけに求めるのは困難であると言わざるを得ません。もっと臨床医がかかわるべき分野です。

小児科医はネグレクト(育児放棄)や心理的虐待に、また、軽症から重症の外傷を経験している外科系医師は、身体的虐待に対して協力することができます。もっと多くの医師が、子ども家庭センターに協力いただくことを切に願っています。そしてこれは〝生命だけは平等だ〟の理念を掲げ、「弱者の味方」である徳洲会グループがやるべきことではないでしょうか。この「直言」を機に、医師や看護師だけでなく、多くの徳洲会スタッフに少しでも協力いただけるよう働きかけます。ぜひとも、ご協力をお願いいたします。

皆で頑張りましょう。

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