2018年(平成30年)3月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1126 四面
名古屋徳洲会総合病院
インペラを用い治療スタート
緊急の循環不全に使う新デバイス
名古屋徳洲会総合病院はインペラ(IMPELLA=補助循環用ポンプカテーテル)を用い、1例目の患者さんを治療した。同機器は左心室負荷を直接軽減する補助人工心臓のひとつ。主に心原性ショックの患者さんが適応になり、具体的には重症心不全が悪化した場合や、急性心筋梗塞などで搬送される緊急ショック症例に有効とされる。カテーテルで挿入できるため、対応が迅速で、低侵襲で行えるのが特徴だ。昨年9月に保険適用され、同院は全国で8番目に施設認定を取得(徳洲会グループでは初)。同院の1例目は全国で4施設目の実施で、3月20日時点では累計8例となっている。
ショック症例へ迅速・低侵襲対応
「新しい医療機器を使いこなし、地域の方々に世界水準の医療を提供します」と青山部長
1例目は60歳代女性、重症大動脈弁狭窄(きょうさく)症と陳旧(ちんきゅう)性心筋梗塞が原因で重症心不全を起こし、他院から転送されてきた。AVR(大動脈弁置換術)と冠動脈バイパス術が必要だったが、薬剤抵抗性のショック状態にあり、手術に耐えられる状態ではなかった。そこでまず、PCPS(経皮的心肺補助法)を行ったうえで、PTAV(経皮的大動脈弁形成術)を実施。狭窄した大動脈弁を治療し、急性期を乗り越えた。昨年12月20日に施行。
PCPSは経皮的に人工心肺装置を用い血液循環を代行し、生命を維持しながら心肺機能の改善を図る方法。ただし、この方法は血行動態(血管や心臓を含めた循環系を流れる血液の状態)は良くなるが、心負荷軽減効果がほとんどなく、むしろ左心室に負荷を増大させるリスクがある。そこで治療を担当した青山英和・循環器内科部長は、インペラの使用を決断。「インペラを初めて使用する症例としては重症すぎるとも思いましたが、本症例には一番効果的だと考えました」と当時を振り返る。
モニターを確認しながらカテーテルでインペラを挿入していく
インペラは心負荷軽減効果と心筋循環の改善による心機能改善効果が同時に期待される。同様の装置にVAD(補助循環装置)があるが、これは胸を開く大がかりな手術が必要。一方、インペラはカテーテルで行えるため、緊急時でも迅速かつ低侵襲に装着可能だ。同症例にインペラを使用した結果、劇的に心負荷が軽減。5日後には離脱し、AVRとバイパス術を行い、患者さんは症状が軽快していった。
青山部長は「インペラがなかったらIABP(大動脈内バルーンパンピング術)をしていましたが、これも心負荷軽減効果が期待できないため、この場合は経過観察をしていたと思います」と明かす。IABPはバルーンの付いたカテーテルを心臓に近い大動脈に留置し、心臓の動きに合わせてバルーンを拡張・縮小させ、血圧を補助する方法だ。
「インペラにより心負荷が軽減したので、早期に手術にもち込めました。心負荷が軽減しているほうが、術後合併症のリスクが低く、回復も早くなります」と強調。
インペラは迅速かつ低侵襲に心原性ショックの対応ができる
続いて今年1月2日に2例目を実施。70歳代男性で、冠動脈の重症三枝疾患による不安定狭心症が原因で急性心不全を起こした。重度の低酸素血症があり、人工呼吸器を装着しても酸素化されなかったため、まずはPCPSで酸素化を管理。バイパス術を行う必要があったが、それまでどのようにつなげるか考えていたところ、インペラの使用を思い立った。
青山部長は「1例目でインペラの心負荷軽減効果を経験していたので、使うことに迷いはありませんでした。もしインペラがなかったら、PCPSの後は薬剤管理で様子を見ていたと思います」。インペラには酸素化を管理する機能がないため、同症例ではPCPSとの併用が効果を発揮した。インペラにより心負荷を軽減し5日後に離脱、バイパス術を行い、患者さんは症状が軽快した。
同院で経験した2例ともに、PCPS(別名エクモ)とインペラを併用した通称「エクペラ=ECPELLA」と言われる治療法で、これは日本で初の試みとなる。手術が必要な疾患を抱えた重症心不全の心負荷を軽減させ、手術までつなげるのに有効な手法だ。
インペラのコンソールを操作する臨床工学技士
通常、インペラは心原性ショックの緊急時に使用し、VADで長期的管理をするまでのつなぎに使われるのが一般的。青山部長は「当院でも今後、一般的な使い方をしていくのはもちろん、さらに重症冠動脈疾患に対するPCI(経皮的冠動脈形成術)の補助にインペラが使えるようになると良いと思います」と展望している。
今後の課題として青山部長は、インペラ使用時のマニュアルを整備し、緊急時に若い医師でも使えるようにすることを挙げる。同時にインペラ使用中のICU(集中治療室)管理方法も確立する。
また、インペラにはVADと同等の機能をもつタイプと、小さくて緊急時に使いやすいが機能を絞ったタイプの2種類あり、同院が最初の2例で使用したのは後者。今後は前者のインペラの使用も視野に入れ、多様な症例に対応していく。
青山部長は「当院は地域のなかで心臓血管外科の評価が高いため、重症患者さんが集まってきます。新しい医療機器を使いこなし、世界水準の治療を地域の方々に還元していきたいです」と意気込みを見せている。