2017年(平成29年)12月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1111 三面
働き方改革
応召義務が足かせ
川渕・東京医科歯科大大学院教授
徳洲会グループ11月度医療経営戦略セミナーが11月25日から2日間開かれ、初日の全体会合で東京医科歯科大学大学院の川渕孝一・医歯学総合研究科医療経済学分野教授が「21世紀の医療~医療事業の組織改革と人材育成」と題し講演した。川渕教授は医療界の働き方改革、医療を取り巻く現状と課題など解説した。
医療界の働き方改革は大きなインパクトになると川渕教授
川渕教授は今後の医療に影響する制度変化の推移を説明したうえで、現時点での医療界の「働き方改革」にまつわるトピックを列挙。このなかで「応召義務」の解釈が「働き方改革」の足かせになると指摘した。
応召義務とは医師法第十九条に規定されており、「診療に従事する医師は診察治療の求めがあった場合、正当な事由なくして、これを拒んではならない」という内容だ。応召義務に関する歴史的経緯や現在の事例を示し、「(応召された場合)過重労働でなかったとしても、過度な責任、診療ストレス、訴訟リスクなどがあります」と強調した。
また、医療界で「働き方改革」を実行すると、約25%(4万人)の病院勤務医が消失するほどインパクトがあることも示唆。医療供給体制(とくに地方・へき地)が崩壊し、病院経営の維持が困難になると推測した。
続いて、医療を取り巻く現状と課題について①〝日本型少子高齢社会〟の到来、②ケアニーズの変化と多様性、③技術革新と保険制度の調和―という「3つの視点」を示した。
①では都道府県別の人口10万人当たりの医師数、人口10万人当たりの看護師数などデータを示し、地方偏重傾向について解説、②では内因性疾患(生活習慣病など)のウエイトが高まるなか、予防・進行抑制型の新たな健康・医療システムを確立することが求められると指摘、③ではスマートフォンアプリや介護ロボットなどの事例を紹介した。
とくに健康・医療システムについて詳説。これまでの主流である感染症など単一標的型疾患では、治療方針は根治であり、奏効率の高い医薬品を早期に患者さんに届けるシステムがあればよかった。今後は老化にともなう疾患、生活習慣にかかわる疾患など内因性疾患が増加。治療方針は進行抑制や行動変容になり、潜在的な患者さんを早期に発見するシステムが求められると説明した。
来年度の診療報酬改定の背景にも言及。ポイントとして①地域差をともない急速に進展する高齢化・人口減少、②変化し多様化するケアニーズ、③技術革新と医療保険制度との調和―をふまえた対応が求められていると解説した。
対応の基本的な構図は既存資源も生かした体制の転換と生産性の向上、生活の視点と地域力の導入(医療介護連携やセルフケアなどの推進)、費用対効果をふまえたイノベーションの活用であると説明。さらに、短期(当面)、中期(2025年~40年)、長期(それ以降)の視点に立ったサービスの需要と供給のミスマッチへの対応として、地域包括ケアシステム構築と地域医療構想の実現の推進が求められると強調した。
最後に、今後は「治す医療」から「治し支える医療」への転換が本格化することを指摘。このため「安心して自宅へ帰すための院内の仕組みづくり、退院後もケアの継続化を図る仕組みづくり、地域と共に支える仕組みづくりが重要です。今後はテレビ電話などICT(情報通信技術)の利用も推進されていくでしょう」と締めくくった。