2017年(平成29年)12月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1111 一面
徳洲会グループ
初の事務長研修を実施
多様なプログラムで研鑽
一般社団法人徳洲会(社徳)は11月24、25日に事務長研修を行った。事務長を対象にした研修は徳洲会グループ初。グループの病院を中心に全国から60人以上が参加した。グループ内外から講師を立て、施設をマネジメントするうえで柱とも言うべき法務、労務、財務に関する多様なプログラムを実施。なかには小テストを行う講義も見られた。終了後は多くの参加者から好意的な感想が寄せられるとともに、継続的な実施を望む声が聞かれた。今後は事務長だけでなく、次長や課長など次世代を担う事務職員向けの研修も検討していく。
今後は次世代の事務職研修も
福島・副理事長はコミュニケーションの重要性を強調
研修は大阪本部の加藤俊昭・事務局長の講義でスタート。損益管理表や貸借対照表をテーマに、決算書と経理資料との差異などについて説明した。講義のなかで加藤・事務局長はあらためて「業績・人事・事務の管理は事務長の仕事」と強調し、担当者任せにせず正確な報告に努めるよう注意を促した。
続いて新日本有限責任監査法人の武藤太一パートナーが会計監査をテーマに講義。来年度から負債または事業収益が一定規模の医療法人に財産目録や貸借対照表、損益計算書の法定監査が求められることをふまえ、監査の意義や仕組みを理解するとともに、携わる部署へのサポートを出席者に呼びかけた。
監査の意義や仕組みを解説する武藤パートナー
「ゴールは部下のリーダーシップ」と米田氏
監査の意義では、正しい決算を行うことで、施設の財政状態・経営成績が明らかになり、経営の透明性の確保や、内部統制の有効性を確認することで、病院運営の効率化・病院管理のレベルアップにつながる。ケーススタディで仕訳や資産管理、棚卸など具体的に注意すべきポイントも示した。「事務長は病院のあらゆることにかかわる役職者であり、病院運営にとって最重要人物の一人」と強調し、監査に関心をもつよう呼びかけた。
山崎氏は説明義務などのポイントを解説
来年4月の診療報酬・介護報酬改定に関する講義も実施。まず大阪本部の奈良原啓司・事務次長が介護報酬や介護保険制度、岸良洋一・事務部長が診療報酬や医療制度について解説した。岸良・事務部長の講義では冒頭、小テストを実施。出席者は仮想の病院の状況をもとに平均在院日数の算出などを行った。抜き打ちでの実施に、出席者からとまどいの声が上がる場面も見られた。
初日最後は医療機関や調剤薬局グループの相談役などを務め、人材開発セミナーの開催実績などをもつ米田直氏が「リーダーシップ論」をテーマに講義。周囲のメンバーやビジネス環境など、リーダーを取り巻く環境によって、リーダーシップ行動を変化させるべきとする「状況適応型リーダーシップ」について解説した。
小テストに臨む参加者。スマートフォンの電卓アプリを駆使し平均在院日数などを算出
人間の開発レベルは4つ(意欲満々な初心者、期待はずれに遭遇した学習者、技能がありながら自信を欠く貢献者、自立した達成者)に分けられ、それぞれのレベルに応じてリーダーの取るべき4つの行動タイプ(①指示型、②コーチ型、③支援型、④委任型)を組み合わせることが重要と指摘。
さらに、この理論を前提に組織に目を転じた場合、ビジネス環境や組織・メンバーの状況に応じて、①カリスマ型、②変革型、③EQ(心の知能指数)型、④ファシリテーション型、⑤サーバント型――と、さまざまなパターンのリーダーシップを使い分ける必要性を示した。その先に部下にリーダーシップをもたせる大切さも強調した。
“要注意リーダー”にも触れ、①忙しいアピールが多い、②成果物を出さない、③馴れ馴れしい、④無駄なプレッシャーをかける、⑤過去の業績を誇る――の5項目をチェックポイントに掲げた。
最後に米田氏は「リーダーシップは誰でも体得でき、発揮できるもの」とアピール。「明確な目標(あるべき姿)をもち、状況適応型のなかで効果的なリーダーシップを取る。そして最終目的には、部下のリーダーシップがゴール。組織の全員がリーダーシップをもつ必要があります」と締めくくった。
一堂に会しマネジメントの要諦を学んだ
参加者からは継続望む声
出席者を代表し加藤・事務局長(左)から修了証を受け取る松原徳洲会病院(大阪府)の泊谷壽也・事務部長
2日目は東京本部の野口幸洋・法務部係長と奥下治・人事部長が労務管理をテーマに講義。その後、福島安義・社徳副理事長が「病院幹部が知っておくべきコンプライアンスに関する注意事項」と題し、労務管理やハラスメント、病院ホームページの掲載内容などについて解説。医療機器・設備工事などの導入、医療事故発生時の報告フローも示した。このほか、徳洲会インフォメーションシステムの尾﨑勝彦社長が情報管理システム、東京海上日動火災保険の山崎健太郎氏が医療事故の初期対応など説明した。
最後に修了証の授与式を行い研修が終了。「有意義な勉強会だった」、「また参加したい」といった声が聞かれるなど、いずれも参加者から高評価。大阪本部の森岡直哉・事務部長は「今後、事務長研修の継続はもちろん、次長や課長など次世代を担う事務職員向けの研修も検討していきます」としている。