徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)11月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1109 一面

沖永良部徳洲会病院
12月1日に新築移転オープン
療養環境の大幅改善を実現

沖永良部徳洲会病院(鹿児島県、132床)は12月1日、隣接地に新築移転オープンする。1990年5月の開設以来、沖永良部島で唯一の病院として地域医療の充実に努めてきたが、建築後約28年が経ち建物の老朽化が目立ってきたことから建て替えを実施。離島病院の建て替えは徳洲会グループで初めて。患者さんの療養環境が大幅に改善、高性能な医療機器も新規導入するなど機能向上を図った。

離島では徳洲会初の建て替え

沖永良部病院の新建屋。耐風圧、耐衝撃性能の高いガラスなど採用 沖永良部病院の新建屋。耐風圧、耐衝撃性能の高いガラスなど採用

沖永良部島は奄美大島の南端から約100㎞、沖縄本島の北端から約60㎞に位置し、鹿児島本土からは飛行機で約1時間10分の距離だ。

知名町と和泊町の2町からなり、島の総人口は1万2699人(2017年11月時点)。

島内の医療機関としては沖永良部病院のほか、5つの診療所があり、連携を取りながら地域の医療を支えている。

新たに導入する1.5 テスラMRI 新たに導入する1.5 テスラMRI

新病院は5階建てで、1、2階に外来や救急処置室、薬局、リハビリテーション室、手術室、透析室などを配置。3階が一般病棟、4階は療養病棟だ。5階は塔屋階で、自家発電機や電気室がある。8712.76㎡の敷地に、延床面積6887.23㎡の建屋を建設した。設計は梓設計、施工は佐藤工業。現病院の跡地は駐車場にする計画だ。

海岸沿いに建つ同院はつねに潮風にさらされ、塩害により築年数以上に老朽化が進み、台風時には雨漏り対策が欠かせなかった。加えて病棟の多床室は8床室と6床室で、時代にそぐわなくなってきていた。こうした状況をふまえ徳洲会グループは、島の人口減少や建築費高騰など厳しい経営環境が続いているものの、建て替えを決断。離島医療を守るため、ぎりぎりまで設計の見直しなどを行い、関係者が知恵を出し合って建設コストの抑制を実現した。

新病院は「島民のための病院を創る」を合言葉に、療養環境の改善をコンセプトの中心に掲げた。一般病棟、療養病棟ともに4床室と個室で構成。一般病床のうち従来どおり6床をHCU(高度治療室)として運用する。

安心・安全に過ごせる施設にするため、耐風圧、耐衝撃性能の高い特別なガラスや、防水性の高い窓サッシを採用。設備はできるだけ島内の企業が修繕可能な機器を採用した。台風に備え自家発電は通常使用電力の50%以上を確保し、燃料は1週間分を備蓄する。

沖永良部島はサンゴ礁が隆起してできた島であるため、石灰成分が多く水道水の硬度が高い。このため配管内に石灰の成分が付着して固まり、詰まりや破損を起こすことがある。病院など水をたくさん使う施設では軟水化する設備の導入が重要だ。同院は以前から軟水化設備を導入。現病院の敷地内にあった同設備を新病院の敷地内に移設済みで、新病院のオープンに合わせ給水先を切り替えて継続使用する。

「これからも島内の診療所と連携しながら島の医療を支えていきたい」と西事務長 「これからも島内の診療所と連携しながら島の医療を支えていきたい」と西事務長

外来化学療法はこれまで専用室がなく、救急外来の一角を仕切って設けた点滴室で実施していたが、新病院では専用室(3床)を設置。救急外来の処置室は従来、1人の患者さんへの対応だったが、新病院では2人まで対応できるスペースを確保。手術室(1室)や透析室(16床)は現状を維持した。

また新築移転を機に、高精度の1.5テスラMRI(磁気共鳴画像診断装置)を新規導入。これまで運用してきた0.5テスラMRIから飛躍的に機能が向上する。放射線科の堤志起主任(診療放射線技師)は「撮影可能な部位がこれまでよりも広がり、画質も大幅に向上します。撮影時間は約半分に短縮、患者さんの負担も軽減します」。

新病院で継続使用する軟水化装置 新病院で継続使用する軟水化装置

同院は15年にもCT(コンピュータ断層撮影装置)を16列から80列型に更新、診療機能の向上に努めている。

西静哉事務長は「療養環境改善のため、たとえば空調システムの切り替えも実施しました。これまで1台の室外機で全館の空調を運転するタイプでしたので、故障すると、すべて止まってしまい患者さんにご迷惑をかけることがありました。新病院では、フロアごとに室外機が分かれ、故障した箇所のみ修理するタイプを採用しました」と説明。

「新しいMRIを診療や人間ドックなどに活用し、疾病の早期発見に役立てていきたいと考えています」とアピールする。

1993年に入職し同院の看護部長や副院長を歴任した福島ミネ顧問は「島に病院がない時代には、つらい思いをした人が少なくありません。28年前、当院ができて本当に良かった。皆さんの善意により、建て替えが実現したことを大変嬉しく思います。先人たちの苦労や気持ちに思いを馳せながら、これからも患者さんのための医療を大事にしていきたい」と思いを語っている。

渡慶次賀博院長
「最後の砦として重責を果たす」

渡慶次賀博院長

私は2016年4月に当院に赴任しました。赴任時に当院の玄関前で、産まれたばかりの赤ちゃんを中心に、ご家族が記念写真を撮影する光景を見て感動したことをよく覚えています。当院は12月1日に新築移転し、再スタートします。建物のみならず最新の医療機器を導入し、診療機能を強化しました。島唯一の病院として24時間・365日、全島民の方々の医療における“最後の砦”としての重責をこれからも果たしてまいります。

当院の新築移転は徳洲会グループの離島病院で初の試みです。他の離島病院からも注目を集めています。今後、徳洲会の他の離島病院の建て替えを計画どおりに進めるためにも、当院の経営を安定させ診療体制を整備し、さらに地域に必要とされる病院を目指します。

徳洲会グループの理念「生命だけは平等だ」を大切にし、島内の診療所との連携も密に行い、これからも地域医療の充実に貢献できるよう職員一丸となって頑張っていく所存です。

吉田弘喜・看護部長
「温かいケアを心がけたい」

吉田弘喜・看護部長

大部屋の8床室では居住空間が狭く、ポータブルトイレを片付けた同じ場所で食事を摂っていただかなくてはならず、療養環境に関してはいつも申し訳ないと思っていました。また台風が来ると、窓枠の隙間に新聞紙や段ボールを詰めたり、雨漏りに対処したりと対応に追われ、病室にいる患者さんをベッドごと窓側から廊下側に移すこともありました。

「どうしようもないこと」と思っていましたが、建て替えで問題は解消されます。ポータブルトイレと食事の件も、4床室になるので改善できます。

当院はグループの他施設から応援をいただきながら運営しています。応援経験者からは「患者さんとスタッフの距離が近い」という感想をよく聞きます。徳洲会看護部の理念である「心に届く看護」を目標にしながら、患者さんとの距離の近さを大切に親身な看護を提供していき、これまで地域に育ててもらったことへの感謝の気持ちを伝えられるよう、温かいケアを心がけていきたいと考えています。

28年間の歴史に思いを
「階段上り下り」イベント

参加者で記念撮影 参加者で記念撮影

沖永良部病院は10月15日、地域住民の提案により、思い出の多い現病院で、参加自由の「階段上り下り」のイベントを開催した。当日は70人超が参加。6階までの往復の最高記録は、男子小学生の18往復。参加者たちは汗だくになりながら足を動かし、屋上で記念撮影する人もいて、それぞれ28年間の病院の歴史に思いを馳せていた。

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