2017年(平成29年)10月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1104 三面
第3回ALSO―Japan学術集会
周産期救急の知見共有
徳洲会から6演題発表
周産期救急医療の向上を目指し、第3回ALSO―Japan学術集会が8月26日、千葉県内で開催された。メインテーマは「人を繋ぐ 人を育む」。徳洲会からはシンポジウムや一般演題で6演題の発表があった。概要を紹介する。
離島・へき地の医療職受講し産科医療充実へ
ALSO(Advanced Life Support in Obstetrics)とは、医師など医療職が、周産期救急に対処できる知識や能力を維持・発展させていくための教育コースをいう。臨床現場を模擬的に再現したシミュレーション学習が特徴だ。全国で開催されており、周産期救急が不足しがちな離島・へき地医療に力を入れる徳洲会では、多くのスタッフが受講、産科医療の充実に努めている。
シンポジウム
周産期救急について多様なテーマで発表
名瀬徳洲会病院(鹿児島県)の四位友樹看護師は「BLSOシンポジウム」に登壇した。BLSO(Basic Life Support in Obstetrics)は、ALSOの前段階の産科救急基礎コース。
四位看護師は
「離島の産声を絶やさぬために産科専門外の看護師ができること~BLSOインストラクターへの道のり~」をテーマに講演。「奄美大島は出生率が高いが、分娩(ぶんべん)可能な施設は限られスタッフも十分とは言えません。産科医からの勧めでBLSOを受講し、さらにそこで得た知識を維持・発展させていくためにインストラクターを目指しました」とBLSO受講の経緯を説明。
同院で毎日開催されている新生児蘇生の勉強会への参加や、帝王切開の立ち合いなど経験を重ね、2月にインストラクターの資格を取得した。
一般演題
シンポジウムで講演する四位看護師
名瀬病院の小田切幸平・産婦人科部長は
「離島での周産期医療におけるメンタルモデル共有の確立のために~結いの心を通じて~」をテーマに発表。離島では、島外からの人員支援などのため、スタッフの入れ替わりが多く、また奄美大島への移住者や観光客も増えており、ニーズは多様化している。こうしたことから小田切部長は「ALSOで学んだTeam STEPPS(チームとして医療の質や患者安全を高めるための戦略)、シミュレーション訓練などでメンタルモデル(思考様式)の確立に尽力しています」と取り組みを紹介。たとえば定期的に周産期救急のシミュレーション訓練を開催したり、とくに緊急帝王切開に関しては麻酔科医、外科医、事務スタッフも交えたスタッフ間の意思統一を図ったりしている。
同じく名瀬病院の吉田弥希助産師は
「離島におけるシミュレーション訓練を日常化するための工夫と効果」と題し発表。同院スタッフは積極的にALSOなどの講習会を受講し、そこで得られた手技や知識の低下を招かないために、新生児蘇生など周産期救急のシミュレーション訓練を毎日15分実施。日々の訓練で重視しているのは、「テーマを絞り、毎日、短時間で行う」、「楽しみながら行う」などと説明した。
徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の新納直久・産婦人科部長は
「奄美ドクターヘリ運航前後における島外母体搬送、新生児搬送に要する時間に関する検討」をテーマに発表。奄美ドクターヘリが運航開始したのは昨年12月。これまでに同院で島外搬送となった母体・新生児搬送は4例。母体搬送2例(搬送先は沖縄本島、奄美大島各1例)、新生児搬送2例(搬送先は奄美大島)という内訳だ。
以前は搬送まで3時間弱かかっていたが、奄美ドクターヘリ運航後は1時間弱へと大幅に短縮。「受け入れ医療機関への搬入時間も短くなり、その有用性が明らかになりました」と評価した。
生駒市立病院(奈良県)の今村正敏総長と下村実邦子助産師は
「妊娠18週で破水、32週で分娩した症例」と題し発表。下村助産師は「前期破水(PROM)では破水後、1~2カ月で流産することが多いとされますが、羊水の流出は続いたものの少量であり、分娩は不可能ではないという家族への説明で、妊娠継続を決定しました」と説明。
その後、32週目に帝王切開で元気な赤ちゃんが生まれたことを報告した。これを受けて今村総長は「新生児は感染をともなうと予後が悪くなりますが、この症例は感染兆候がなく、羊水量が保たれていました。前期破水でも健康な新生児を得られる可能性はあります」。
また今村総長は
「子癇(しかん)の診断、治療法についてのレビュー」というテーマでも発表。子癇は、妊娠高血圧腎症の患者に見られる初発のけいれん発作と定義されている。子癇の典型的経過は、てんかんとも似ており鑑別が困難なことも多い。今村総長は「妊娠高血圧が最大のリスクであることは間違いありませんが、それだけで起こるのはめずらしい」と子癇の定義の難しさに言及した。