徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)7月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1089 一面

あまぎユイの里医療センター
小児外科手術を島内完結へ

鹿児島県徳之島にある「あまぎユイの里医療センター」の寺倉宏嗣院長(小児外科)は、東京女子医科大学の世川修・第二外科学教室臨床教授と連携し、徳之島に住む小児患者さんの外科手術を島内で完結させる取り組みを開始した。従来、難易度の高い小児外科手術は鹿児島本土の病院に転院し行っていたが、島内で完結することにより、患者さんや家族の負担を減らし、治療に専念してもらうのが狙い。寺倉院長は「ゆくゆくは奄美群島全域に広げていきたい」と構想している。

離島の患者さん・家族の負担減

「患者さんの負担を減らし安心して治療に専念していただきたい」と寺倉院長 「患者さんの負担を減らし安心して治療に専念していただきたい」と寺倉院長

連携は、世川・臨床教授が月に1度の頻度で徳之島を訪れ、寺倉院長とともに徳之島徳洲会病院(鹿児島県)に入院している小児患者さんの診察や手術を行うというもの。小児一般外科が専門の寺倉院長は、昨年4月(あまぎユイの里医療センター開院)から12例の小児外科手術を行ってきた。しかし、医師1人では限界があると感じていたところ、前職で交流のあった小児泌尿生殖器外科が専門の世川・臨床教授に声をかけ、連携が実現。島内で対応可能な手術の範囲が広がった。

徳之島病院には小児科の常勤医がおらず、島外から応援で訪れた医師が診療を行っている。このため寺倉院長が赴任する前は、外科手術が必要な小児患者さんは、すべて鹿児島本土の病院に転院していた。たとえば、鼠径(そけい)ヘルニアの治療であれば、最初の外来で診察、次に2泊3日の入院で手術を行い、退院1週間後に再び外来で経過を観察するため、最低3回は鹿児島本土の病院に行かなければならない。

寺倉院長は「患者さんは子どもなので、必ず家族が同伴します。そうすると2人分の交通費や宿泊費などがかかり、大きな負担になります。安心して治療に専念するためにも、島内で手術を完結すべきだと考えました」と狙いを説明する。

白衣ではなく同センターオリジナルの服で診察 白衣ではなく同センターオリジナルの服で診察

最初の世川・臨床教授の訪島は5月28日から3日間で、2件の手術と専門診察を実施。手術は3歳男児の左停留精巣(陰嚢(いんのう)内に精巣が触れない状態)と6歳男児の毛巣洞(もうそうどう)(お尻の割れ目の直上に認める陥凹)の症例。それぞれの専門を考え、前者は世川・臨床教授が執刀医で寺倉院長が助手、後者は寺倉院長が執刀医で世川・臨床教授が助手を務めた。これまで何度も一緒に手術をしてきた2人だけに、久しぶりの手術でも阿吽の呼吸を発揮した。

泌尿生殖分野の最新知識が得られるのもメリット。これまでも寺倉院長は島内で停留精巣の手術を行ったことはあったが、世川・臨床教授と一緒に手術をすることで、内視鏡を使った新しい手技などを学んだ。「島にいても最先端の医療を提供しなければいけません。そのための勉強は必要です」(寺倉院長)。

専門診察では、膀胱(ぼうこう)尿管逆流症(VUR)の患者さんの治療方針を検討した。これは尿管口の異常で膀胱の尿が腎臓へ逆流する病気であり、100人に1人くらいの頻度で認められる。

島ならではの釣りも楽しむ寺倉院長(右)と世川・臨床教授 島ならではの釣りも楽しむ寺倉院長(右)と世川・臨床教授

通常なら島内では対応できない難易度の高い手術になるが、7月末に徳之島病院で手術を実施することを決めた。手術には小児用の膀胱鏡が必要になるため、メーカーからレンタルする予定。手術前に同院で使用可能か実験し、もし不備がある場合は世川・臨床教授が自院の膀胱鏡を事前に配送することにした。

膀胱鏡を使った侵襲性の低い手術だからこそ、島内で実施することができると寺倉院長は強調。「侵襲性の高い手術では術後管理も大変になり、対応するスタッフの問題も出てきます。今回は、何かあれば私がセンター勤務後に徳之島病院に行って、患者さんを診察します」と説明する。

7月、8月は学校が夏休みの期間にあたるため、同手術だけでなく、ほかにも多くの手術が入る予定。患者さんの情報は電話やメールを通じてつねに共有する。

徳之島の患者さんだけなら月1回の訪島で対応可能だが、今後、奄美群島の徳洲会グループ病院はもちろん、ほかの医療機関からも要請があれば対応していく予定だ。「奄美群島内で完結できたほうが、より多くの患者さんと家族の負担軽減につながります。とはいえ、まだ始めたばかりの取り組みなので、まずは一例一例を確実にやっていきます」と寺倉院長は意欲を見せる。

「子宝の島」徳之島

同センターの敷地内には防災・健康センターもある 同センターの敷地内には防災・健康センターもある

寺倉院長は外科手術だけでなく、通常の小児医療にも力を入れている。あまぎユイの里医療センターは昨年4月に開院した無床診療所(内科・外科・小児科・小児外科)。天城町総合防災拠点整備事業で整備中の3施設(防災・医療・保健センター)のひとつで、町指定管理者条例に基づき医療法人徳洲会が管理者として運営している。

表 市区町村の合計特殊出生率ランキング

1 鹿児島県伊仙町 2.81
2 沖縄県久米島町 2.31
3 沖縄県宮古島市 2.27
4 沖縄県宜野座村 2.20
5 鹿児島県徳之島町 2.18
5 長崎県対馬市 2.18
7 沖縄県金武町 2.17
8 沖縄県石垣市 2.16
9 長崎県壱岐市 2.14
10 鹿児島県天城町 2.12
同センターがある徳之島は伊仙町、徳之島町、天城町の3町からなる。同島は「子宝の島」として有名で、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子どもの数)が全国トップクラス(表)。

同センターは開院して1年が経ち、寺倉院長は地域のなかで身近な存在になってきたことを実感している。「徳之島病院の外来が、もうひとつ天城町にもあるようなもの。当センターでできない検査や治療を徳之島病院で行うなど強固に連携しています」と話し、「安心して生んで育てられる、安心して生活できるためのホームドクターでありたい」と決意を新たにしている。

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