
臨床研究
Clinical research

Clinical research
東京西徳洲会病院の臨床研究支援センターは、病院から独立した形ではなく、文部科学省からの科研費を積極的に活用し、医師たちが主体的に研究を行える環境を整備しています。
単に患者さんを治療するだけでなく、医療技術の向上や学術的な貢献を目指す研究者を、組織としてサポートしています。
「市中病院でもしっかりと研究ができる体制を整えよう」と考えたのが始まりです。そのためには、病院の資金だけに頼るのではなく、公的な研究費を獲得して研究を行うことが重要になります。そして、「治療だけでなく、真摯に研究にも取り組む組織である」という姿勢を明確にすることも重要だと考えました。
当院のような市中病院は「患者さんを診て、治して返す」という臨床が最優先されるため、そもそも「研究をする」、「論文を書く」、「科研費を申請する」という文化や馴染みが薄かった点が挙げられます。例えば、科研費を運用するためには、組織として研究費の予算枠をどのように組み、どう管理するのかという体制づくりが必要になります。また、論文を閲覧するための図書室など教育設備の整備や、他部署との連携など「研究支援の仕組み」を、市中病院の規模に合わせて一から構築していくことには非常に苦労しました。
主な研究テーマは「胆膵Interventional EUSにおける空間コンピューティング画像支援システムの開発」です。一言で言うと、XR(Extended reality)技術を応用した医療支援の研究になります。消化器内科で行う胆膵内視鏡治療(内視鏡的逆行性胆道膵管造影など)では、X線画像を見ながらカテーテルやガイドワイヤーを胆管や膵管へ挿入して治療を行います。この治療には医師だけでなく、看護師や臨床工学技士など多くの医療従事者が関わっています。
しかし、X線画像だけでは体内の立体的な解剖を把握することが難しく、今どこにガイドワイヤーが進んでいるのかを直感的に理解しにくい場合があります。特に、本来は胆管へ挿入すべき場面で、気づかないうちに膵管へ繰り返し挿入されてしまうと、治療後に重篤な偶発症である「急性膵炎」を引き起こすリスクが高まります。
そこで本研究では、治療前に撮影したCTやMRCPなどの画像データから、患者さんごとの胆管・膵管の立体構造を可視化した3D画像を構築し、それをVRゴーグルで確認できるシステムを導入しました。これを治療前のシミュレーションや術中ナビゲーションに活用することで、体内構造をより直感的に理解できるようになり、安全で確実な治療につながることが期待されます。現在は、XRを活用した3D画像の手技理解や教育効果への影響、運用上の課題についてアンケート調査を行い、その有用性を検証しています。
大きく2つの意義があると感じています。1つ目は、「若手の教育」と「モチベーションの向上」です。市中病院でも公的な資金を得て最先端の研究に取り組める環境があることは、若い医師や看護師、臨床工学技士にとって大きな刺激になります。実際に当院のコメディカルスタッフは非常に意欲的で、今回の研究成果についても、主体的に学会発表の準備を進めています。
2つ目は、「豊富な臨床経験を学術的価値へとつなげられること」です。徳洲会グループ病院には、多くの患者さんを診療しているという大きな強みがあります。こうした豊富な症例や日々の診療現場で生まれる工夫や課題を、研究として体系的に検証し、学会発表や論文として発信することで、より良い診療につながる知見を共有することができます。
国には研究を支援する優れた制度が数多くあります。市中病院であっても、それらを活用しながら研究体制を整えることで、大学病院とは異なる視点から、実臨床に根ざした研究成果を発信することが可能です。そのような取り組みを通じて、実臨床の現場から新たな知見を発信していくことに大きな意義があると考えています。