
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)08月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1557 4面
健康診断などの心電図検査で「ブルガダ型心電図」と指摘され、不安を感じた経験のある方もいるのではないでしょうか。ブルガダ症候群は、心臓に顕著な病変(構造的異常)がないにもかかわらず、致死的な不整脈を引き起こして突然死につながる恐れのある疾患です。今回は大和徳洲会病院(神奈川県)の横山泰廣・循環器内科部長が、ブルガダ症候群の基礎知識から最新のリスク評価、適切な対処法まで詳しく解説します。
大和徳洲会病院(神奈川県) 横山泰廣・循環器内科部長
ブルガダ症候群は、1992年にスペインのブルガダ兄弟らによって報告された疾患概念です。日本で「ポックリ病」と呼ばれていた突然死や、東南アジア諸国で知られる夜間の突然死の一部も、同症候群によるものと考えられています。近年では、心電図のJ点と呼ばれる部分の上昇をともなうJ波症候群(早期再分極症候群など)の主要な疾患のひとつとしても研究が進んでいます。
同症候群は、心臓の細胞にあるナトリウムチャネルなどの機能異常が関与しているとされており、心電図の右側胸部(V1-3)誘導で特徴的な波形(右脚ブロック様のST上昇)を示します。男性ホルモンの関与も指摘されており、40〜50代の壮年男性に多く発症するのが特徴です。また、自律神経の影響を受けやすく、交感神経が低下し副交感神経が優位になる夜間・睡眠時や、食後・リラックス時に致死的な不整脈(心室細動など)を起こしやすいという、不気味な性質をもっています。
ブルガダ型心電図
健康診断の心電図検査で、この波形が検出されるケースもあります。しかし、波形が確認されたからといって、すべての方がすぐに危険な状態になるわけではなく、年間のイベント発症率は0.3%程度(1,000人に数人)と低く、過度に恐れる必要はありません。
リスクを評価するうえで最も重要なのは「過去の症状」と「家族歴」です。これまでに原因不明の失神を起こしたことがある方や、心肺停止から救命された経験のある方はリスクが高いため、再発・突然死の予防として、植え込み型除細動器(ICD)の治療適応となります。
最近では、心臓のなかに直接リード線を入れない皮下植え込み型除細動器(S-ICD)などもあり、医療機器の進歩により、若い患者さんでも、より安全に治療を受けられる環境が整ってきました。不整脈が頻発する場合には、カテーテルアブレーション治療が行われることもあります。
また、血縁者に若い年齢(40歳以下)での突然死や心室細動の既往(濃い家族歴)がある場合も、注意深い検査や対応が必要です。
日常生活での注意点として、とくに気を付けたいのが「発熱」です。体温が上昇すると不整脈が誘発されやすくなるため、ブルガダ型心電図を指摘されている方は、熱が出た際に市販薬などで速やかに熱を下げる処置を行うことが重要です。また、精神科薬や一部の循環器用薬など、ナトリウムチャネルに影響を与える薬のなかには、心電図の異常を悪化させるものがあります。新しく常用薬を開始する際は、必ず主治医や専門医に相談してください。
ブルガダ症候群の心電図波形は日内変動や日差変動があり、時に正常化したり再び出現したりと変化します。何も症状やリスクがない「無症候」の方であっても、油断せずに半年に1回から1年に1回程度、定期的に循環器内科・不整脈専門医を受診し、心電図の経過観察を行うことが大切です。正しい知識をもち、適切な管理を行うことで、安心して過ごしていきましょう。